「期待外れ」という事で婚約破棄した私に何の用ですか? 「理想の妻(私の妹)」を愛でてくださいな。

百谷シカ

文字の大きさ
13 / 15

13 素晴らしきマイ・ライフ(※ユリアーナ視点)

しおりを挟む
 エルミーラがとってもお似合いの童顔伯爵と素敵な結婚式を挙げたその頃、私は吐いてた。悪阻で。

 元アルビン伯爵夫人のおバカなコウノトリ作戦のおかげで、これを機に二人は離婚。芋づる式に私とベリエスの結婚も無効になった。

 そして私は正真正銘のアルビン伯爵夫人になるぅ~♪
 産んでから赤ちゃん抱いての結婚式になるけど、別にいいわよ!
 元から白い目を浴びるような珍事だもの!
 誰になんと言われようと知ったこっちゃないわ!!


「ホゲエェェェェェッ!」


 こんだけ苦労して産むのよ。
 早く会いたいわ。私の赤ちゃん♪


「お嬢様? さあ、気を確かに。深呼吸ですよ」

「私はいいから……あのクソババアを見張ってて……っ」

「大丈夫。もう娘を殺そうなんて元気ありませんよ」


 初産なので、実家で。
 それを許してくれる可愛い髭チョビンが、愛しくてたまらない。

 反対に、私は母が憎くて仕方ない。
 双子は呪い? 自分の子が恐い?
 エルミーラはどのくらい覚えているかわからないけど、あの女は私たちを椅子に縛り付けて交互に首を絞めていた。

 だけど、もう忘れる事にした。
 正しくは、そう心がけようと決意した。

 だって私には、先に死んじゃう可愛い髭夫と、美しい領地と、愛するエルミーラと、愛してくれる母親代わりのビルギッタがいる。
 そこに赤ちゃんが加わる。

 私は幸せなのだ!
 あははぁ~ん♪


「ゲホ……ごめんなさいね、あなたを引き留めて……」

「いぃえぇ。お嬢様のお世話ができて、赤ちゃんにもいっちばんに会えるんですよ? 私は感謝感激していますとも。二度と謝らないでくださいましッ」


 ビルギッタが私よりエルミーラをより深く愛しているは、知っている。じゃなきゃ、他人なのにあの顔を見て気持ちがわかるはずがない。

 私は怠さに抗い、ビルギッタの手をポンポン叩いた。


「いい練習になるでしょう……? お姉様のお産の前に、私で、オエッ」

「行ったり来たりになりますよ。お二人とも深ぁ~く愛されていますものッ。合わせて20人くらい産むんじゃないですか?」

「殺す気?」


 新婚のエルミーラを邪魔したくなかったから、産むまで誰にも会いたくないと嘘をついた。エルミーラはかなり頻繁に手紙をくれた。顔と声より、文字のほうがよほど活き活きしている事を、改めて知った。

 可愛い髭チョビンは前妻の相手──つまり相続から外し他人になったベリエスというただの男の、本当の父親を探してやっていて忙しく、10日以上顔も見せないなんてザラよ。だけど相手が貴族か豪商なら慰謝料が取れるし、燃えるのもわかる。
 別れたくないと号泣してごねる元妻に笑って離婚を言い渡したあの顔を見たら、野放しにしてこそ楽しい人だと確信するわよ。

 そんな事はどうでもいいわ。

 ビルギッタと過ごすマタニティライフはとても楽しいものだった。
 そしてついに、人生でいちばん素晴らしい日がやってきた。


「ビルッ、ギッ、タンッ! ぃぃぃいいい痛いッ!!」

「私のせいじゃありませんって! いいから手を離してください! 折れるッ!! でもそのままいきんでッ!!」

「おぎゃぁ☆彡」


 可愛い男の子。
 勝ったと、まあ、思ったわよね。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

犠牲になるのは、妹である私

木山楽斗
恋愛
男爵家の令嬢であるソフィーナは、父親から冷遇されていた。彼女は溺愛されている双子の姉の陰とみなされており、個人として認められていなかったのだ。 ソフィーナはある時、姉に代わって悪名高きボルガン公爵の元に嫁ぐことになった。 好色家として有名な彼は、離婚を繰り返しており隠し子もいる。そんな彼の元に嫁げば幸せなどないとわかっていつつも、彼女は家のために犠牲になると決めたのだった。 婚約者となってボルガン公爵家の屋敷に赴いたソフィーナだったが、彼女はそこでとある騒ぎに巻き込まれることになった。 ボルガン公爵の子供達は、彼の横暴な振る舞いに耐えかねて、公爵家の改革に取り掛かっていたのである。 結果として、ボルガン公爵はその力を失った。ソフィーナは彼に弄ばれることなく、彼の子供達と良好な関係を築くことに成功したのである。 さらにソフィーナの実家でも、同じように改革が起こっていた。彼女を冷遇する父親が、その力を失っていたのである。

出来損ないと言われて、国を追い出されました。魔物避けの効果も失われるので、魔物が押し寄せてきますが、頑張って倒してくださいね

猿喰 森繁
恋愛
「婚約破棄だ!」 広間に高らかに響く声。 私の婚約者であり、この国の王子である。 「そうですか」 「貴様は、魔法の一つもろくに使えないと聞く。そんな出来損ないは、俺にふさわしくない」 「… … …」 「よって、婚約は破棄だ!」 私は、周りを見渡す。 私を見下し、気持ち悪そうに見ているもの、冷ややかな笑いを浮かべているもの、私を守ってくれそうな人は、いないようだ。 「王様も同じ意見ということで、よろしいでしょうか?」 私のその言葉に王は言葉を返すでもなく、ただ一つ頷いた。それを確認して、私はため息をついた。たしかに私は魔法を使えない。魔力というものを持っていないからだ。 なにやら勘違いしているようだが、聖女は魔法なんて使えませんよ。

不憫な妹が可哀想だからと婚約破棄されましたが、私のことは可哀想だと思われなかったのですか?

木山楽斗
恋愛
子爵令嬢であるイルリアは、婚約者から婚約破棄された。 彼は、イルリアの妹が婚約破棄されたことに対してひどく心を痛めており、そんな彼女を救いたいと言っているのだ。 混乱するイルリアだったが、婚約者は妹と仲良くしている。 そんな二人に押し切られて、イルリアは引き下がらざるを得なかった。 当然イルリアは、婚約者と妹に対して腹を立てていた。 そんな彼女に声をかけてきたのは、公爵令息であるマグナードだった。 彼の助力を得ながら、イルリアは婚約者と妹に対する抗議を始めるのだった。 ※誤字脱字などの報告、本当にありがとうございます。いつも助かっています。

婚約破棄されたので、聖女になりました。けど、こんな国の為には働けません。自分の王国を建設します。

ぽっちゃりおっさん
恋愛
 公爵であるアルフォンス家一人息子ボクリアと婚約していた貴族の娘サラ。  しかし公爵から一方的に婚約破棄を告げられる。  屈辱の日々を送っていたサラは、15歳の洗礼を受ける日に【聖女】としての啓示を受けた。  【聖女】としてのスタートを切るが、幸運を祈る相手が、あの憎っくきアルフォンス家であった。  差別主義者のアルフォンス家の為には、祈る気にはなれず、サラは国を飛び出してしまう。  そこでサラが取った決断は?

お姉さまに婚約者を奪われたけど、私は辺境伯と結ばれた~無知なお姉さまは辺境伯の地位の高さを知らない~

マルローネ
恋愛
サイドル王国の子爵家の次女であるテレーズは、長女のマリアに婚約者のラゴウ伯爵を奪われた。 その後、テレーズは辺境伯カインとの婚約が成立するが、マリアやラゴウは所詮は地方領主だとしてバカにし続ける。 しかし、無知な彼らは知らなかったのだ。西の国境線を領地としている辺境伯カインの地位の高さを……。 貴族としての基本的な知識が不足している二人にテレーズは失笑するのだった。 そしてその無知さは取り返しのつかない事態を招くことになる──。

【完結】姉に婚約者を奪われ、役立たずと言われ家からも追放されたので、隣国で幸せに生きます

よどら文鳥
恋愛
「リリーナ、俺はお前の姉と結婚することにした。だからお前との婚約は取り消しにさせろ」  婚約者だったザグローム様は婚約破棄が当然のように言ってきました。 「ようやくお前でも家のために役立つ日がきたかと思ったが、所詮は役立たずだったか……」 「リリーナは伯爵家にとって必要ない子なの」  両親からもゴミのように扱われています。そして役に立たないと、家から追放されることが決まりました。  お姉様からは用が済んだからと捨てられます。 「あなたの手柄は全部私が貰ってきたから、今回の婚約も私のもの。当然の流れよね。だから謝罪するつもりはないわよ」 「平民になっても公爵婦人になる私からは何の援助もしないけど、立派に生きて頂戴ね」  ですが、これでようやく理不尽な家からも解放されて自由になれました。  唯一の味方になってくれた執事の助言と支援によって、隣国の公爵家へ向かうことになりました。  ここから私の人生が大きく変わっていきます。

双子の妹を選んだ婚約者様、貴方に選ばれなかった事に感謝の言葉を送ります

すもも
恋愛
学園の卒業パーティ 人々の中心にいる婚約者ユーリは私を見つけて微笑んだ。 傍らに、私とよく似た顔、背丈、スタイルをした双子の妹エリスを抱き寄せながら。 「セレナ、お前の婚約者と言う立場は今、この瞬間、終わりを迎える」 私セレナが、ユーリの婚約者として過ごした7年間が否定された瞬間だった。

王子に買われた妹と隣国に売られた私

京月
恋愛
スペード王国の公爵家の娘であるリリア・ジョーカーは三歳下の妹ユリ・ジョーカーと私の婚約者であり幼馴染でもあるサリウス・スペードといつも一緒に遊んでいた。 サリウスはリリアに好意があり大きくなったらリリアと結婚すると言っており、ユリもいつも姉さま大好きとリリアを慕っていた。 リリアが十八歳になったある日スペード王国で反乱がおきその首謀者として父と母が処刑されてしまう。姉妹は王様のいる玉座の間で手を後ろに縛られたまま床に頭をつけ王様からそして処刑を言い渡された。 それに異議を唱えながら玉座の間に入って来たのはサリウスだった。 サリウスは王様に向かい上奏する。 「父上、どうか"ユリ・ジョーカー"の処刑を取りやめにし俺に身柄をくださいませんか」 リリアはユリが不敵に笑っているのが見えた。

処理中です...