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二年目の夏(1)
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寒い冬が終わり、ブルノス共和国にもうららかな春が訪れる。一年前と変わらない光景に、半年も離れてもいないのに、今起きているかも分からない友人を思うと、オスカーは恋しさが増す。海風と木材の香りを運ぶ船から、石畳の地面へと降り立つ。
「相変わらず賑やかなもんだな」
眩しそうに日差しに目を細めて、神聖なる山を見つめる。エルピスは元気だろうかと、心配になるが国が平和なのを見れば大丈夫だろう。
人通りの多い整理された道から整理されていない土の道へと歩いていく。見渡す限り春の香りを漂わさせた花や若葉が生い茂る木々が視界に映っていく。相変わらず変わらない森の光景に懐かしさも感じながらも、新鮮な気持ちになるオスカーは段々と駆け足になっていく。そして、見覚えのある神殿が見えると、いつの間にか走っていた。大理石の廊下の先にいる友の姿を捉えた。
「ただいまエルピス。おいらだよ。オスカーさ」
瞼を閉じたままのエルピスはゆっくりと開くと、冬に別れた友の姿が映ると大きな身体を起こした。
「遅いぞオスカー。我を待たせるとは無礼だぞ」
「ごめんごめん。早く着くように頑張っただけど、エルピスからしたら遅かったか」
睨みつけるように見るエルピスは、頭を掻き頼りなさげに笑うオスカーを見て鼻で笑った。そこまで怒った様子が見られないことから、茶化しみたいなものだろうとオスカーは感じていた。それからオスカーは、胡坐をかいて旅の話をしようとした時、大理石の廊下が訪問者を伝える。
「貴殿! エルピス様の神殿で何している!」
物が焦げたような濃い茶色をしたウルフカット。ターコイズのように澄んだ水色の瞳に、一重の瞼。優しい雰囲気を持つが何処かうさん臭さを匂わせる。人を思わせる肌に爬虫類の鱗が青く光っている。皺一つなく高級感が漂う服は、位の高さを象徴している。
オスカーはその男がこの国の貴族なのだろうと憶測はついた。そして、ここでは神聖な場所に侵入した不届き者だ。下手したらお縄だろうなと思い、エルピスに助けを求めるように視線を向けた。エルピスはオスカーの助けが分かったのか、やってきた男の方を向く。
「ディアンよ。この者は我の友オスカーだ。我がこの神殿に招いた。伝えずにすまぬかった」
「いっ、いえ! エルピス様がそうおっしゃるならば、このディアン受け入れましょう。ただ今度からお伝えしてくださるとありがたいです」
エルピスの言葉に狼狽えながらも、ディアンは受け入れようとしていた。しかし、オスカーを見る目は怪しむようなもので、心からは信用していないのだろう。オスカーは、根無し草だし仕方がないよなと思いながら、捕まる心配がなくなったので安堵をした。
「エルピス様の友人ならば名乗ろう。私はブルノス共和国の国王ディアン・ヘリオスだ。定期的にエルピス様に国の報告をしたりする。本来ならば、貴殿は法に則ると死刑だがエルピス様の恩恵により、例外的に許可しよう」
「ありがとさん。おいらは旅人のオスカーさ。よろしく頼むぜ?」
へらぁと頼り気がなく、人懐こい笑みをオスカーは浮かべたが、相変わらずディアンは不満げな表情をみせていた。もし、相手の立場ならば自分もそうするかと思い、オスカーは放っておくことにした。
ディアンはオスカーをいない者として、エルピスに報告をし始めた。国の情勢がどうだ。今年は豊作の可能性があるだのと堅苦しい報告にオスカーは欠伸をして待っていた。数十分後報告が終わったのかディアンは、エルピスに深く頭を下げる。そして、立ち去る前にオスカーの方を向く。
「くれぐれもエルピス様にご無礼を働くでないぞ」
冬のように冷たい声でオスカーに釘を刺せば、ディアンは神殿から出ていった。重苦しい空気から解放されたオスカーは深いため息を吐きながら、帽子を被りなおす。
「ははっ、まさかの国王さんに目を付けられるとはなー。おいらってばモッテモテなこった」
「大丈夫かオスカーよ。あやつは真面目故にあのような態度になったのだろう。いつもは気の優しい者なのだがな」
「そりゃ、エルピスは国宝のようなものだからな。おいらみたいなのが誑かしてないかヒヤヒヤものだろうさ」
「そういうものだろうか」
自分が国に与えている影響を自覚していないエルピスに対して、オスカーはきっと王族とかは話しているけど、興味がないんだろうから自分の立場を忘れるんだろうなと感じた。この国で一番自由そうに見えて、不自由なエルピスがいつか自分と一緒に旅に出られたならば、どんな反応をするのだろうかとオスカーは想像する。
海は見たことあるのだろうか。東に昇る国のピンクの儚い花を知っているだろうか。もし、知らないならば、連れて行きたい。世界はこんなにも広く美しんだよと教えたい。
「エルピスが人間型になれたらいいのにな」
オスカーのさりげない一言を聞いたエルピスは目を細めて旅の話を聞き続けた。
「相変わらず賑やかなもんだな」
眩しそうに日差しに目を細めて、神聖なる山を見つめる。エルピスは元気だろうかと、心配になるが国が平和なのを見れば大丈夫だろう。
人通りの多い整理された道から整理されていない土の道へと歩いていく。見渡す限り春の香りを漂わさせた花や若葉が生い茂る木々が視界に映っていく。相変わらず変わらない森の光景に懐かしさも感じながらも、新鮮な気持ちになるオスカーは段々と駆け足になっていく。そして、見覚えのある神殿が見えると、いつの間にか走っていた。大理石の廊下の先にいる友の姿を捉えた。
「ただいまエルピス。おいらだよ。オスカーさ」
瞼を閉じたままのエルピスはゆっくりと開くと、冬に別れた友の姿が映ると大きな身体を起こした。
「遅いぞオスカー。我を待たせるとは無礼だぞ」
「ごめんごめん。早く着くように頑張っただけど、エルピスからしたら遅かったか」
睨みつけるように見るエルピスは、頭を掻き頼りなさげに笑うオスカーを見て鼻で笑った。そこまで怒った様子が見られないことから、茶化しみたいなものだろうとオスカーは感じていた。それからオスカーは、胡坐をかいて旅の話をしようとした時、大理石の廊下が訪問者を伝える。
「貴殿! エルピス様の神殿で何している!」
物が焦げたような濃い茶色をしたウルフカット。ターコイズのように澄んだ水色の瞳に、一重の瞼。優しい雰囲気を持つが何処かうさん臭さを匂わせる。人を思わせる肌に爬虫類の鱗が青く光っている。皺一つなく高級感が漂う服は、位の高さを象徴している。
オスカーはその男がこの国の貴族なのだろうと憶測はついた。そして、ここでは神聖な場所に侵入した不届き者だ。下手したらお縄だろうなと思い、エルピスに助けを求めるように視線を向けた。エルピスはオスカーの助けが分かったのか、やってきた男の方を向く。
「ディアンよ。この者は我の友オスカーだ。我がこの神殿に招いた。伝えずにすまぬかった」
「いっ、いえ! エルピス様がそうおっしゃるならば、このディアン受け入れましょう。ただ今度からお伝えしてくださるとありがたいです」
エルピスの言葉に狼狽えながらも、ディアンは受け入れようとしていた。しかし、オスカーを見る目は怪しむようなもので、心からは信用していないのだろう。オスカーは、根無し草だし仕方がないよなと思いながら、捕まる心配がなくなったので安堵をした。
「エルピス様の友人ならば名乗ろう。私はブルノス共和国の国王ディアン・ヘリオスだ。定期的にエルピス様に国の報告をしたりする。本来ならば、貴殿は法に則ると死刑だがエルピス様の恩恵により、例外的に許可しよう」
「ありがとさん。おいらは旅人のオスカーさ。よろしく頼むぜ?」
へらぁと頼り気がなく、人懐こい笑みをオスカーは浮かべたが、相変わらずディアンは不満げな表情をみせていた。もし、相手の立場ならば自分もそうするかと思い、オスカーは放っておくことにした。
ディアンはオスカーをいない者として、エルピスに報告をし始めた。国の情勢がどうだ。今年は豊作の可能性があるだのと堅苦しい報告にオスカーは欠伸をして待っていた。数十分後報告が終わったのかディアンは、エルピスに深く頭を下げる。そして、立ち去る前にオスカーの方を向く。
「くれぐれもエルピス様にご無礼を働くでないぞ」
冬のように冷たい声でオスカーに釘を刺せば、ディアンは神殿から出ていった。重苦しい空気から解放されたオスカーは深いため息を吐きながら、帽子を被りなおす。
「ははっ、まさかの国王さんに目を付けられるとはなー。おいらってばモッテモテなこった」
「大丈夫かオスカーよ。あやつは真面目故にあのような態度になったのだろう。いつもは気の優しい者なのだがな」
「そりゃ、エルピスは国宝のようなものだからな。おいらみたいなのが誑かしてないかヒヤヒヤものだろうさ」
「そういうものだろうか」
自分が国に与えている影響を自覚していないエルピスに対して、オスカーはきっと王族とかは話しているけど、興味がないんだろうから自分の立場を忘れるんだろうなと感じた。この国で一番自由そうに見えて、不自由なエルピスがいつか自分と一緒に旅に出られたならば、どんな反応をするのだろうかとオスカーは想像する。
海は見たことあるのだろうか。東に昇る国のピンクの儚い花を知っているだろうか。もし、知らないならば、連れて行きたい。世界はこんなにも広く美しんだよと教えたい。
「エルピスが人間型になれたらいいのにな」
オスカーのさりげない一言を聞いたエルピスは目を細めて旅の話を聞き続けた。
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