君が僕に心をくれるなら僕は君に全てをあげよう

下菊みこと

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従兄という立場

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「…そのお嬢さんとはどういう関係ですか?」

「従兄です。色々事情があって、この子の親の親権が停止されているので僕が監護権をもらって養育しています」

「…あ、それは」

「あの、警察さん。兄様はなんにも悪いことしてないよ…?」

コトハが不安そうな表情をする。

そんなコトハの頭を撫でる。

「大丈夫だよ、コトハ。ちょっとお話ししてるだけだからね」

「兄様…」

コトハが僕にしがみつく。

「一応身分証とか見せてもらえますか?荷物の確認もさせてください」

「はい」

身分証と荷物の中身を見せる。

その結果怪しいものは持っていないこと、コトハの保護者だとの確認も取れて許された。

「勘違いだったようですみません、ご協力ありがとうございました」

「いえ、誤解が解けて良かったです」

「失礼します」

警察が帰って行って、ちょっと思う。

従兄という立場も、鉄壁の守りとは言えないらしい。

でも、確認できる書類をバッグに入れていつも持ち歩いているからなんとかなった。

やっぱり備えあれば憂いなしだな。

しかしヒトの世はなかなか生きづらい社会だな。

「兄様、大丈夫…?」

「うん、もう大丈夫だよ。色々と誤解があったようだけど解決したよ」

「よかった…」

心底ホッとした様子のコトハの頭を撫でる。

「心配ないからね、コトハは僕が守るんだから」

「うん、離れていかないでね」

「絶対大丈夫。ずっと一緒にいるよ」

さて、甘やかすつもりが少しおかしなことになってしまった。

不動産屋さんに行く前に、もう一箇所寄り道をしようか。

「コトハ、ついでにちょっとおもちゃ屋さんに寄って行こうか」

「え?」

「おもちゃとか持ってないでしょう?欲しいものがあれば買うよ」

「い、いいの?」

「うん」

パッと笑顔になるコトハ。

不安で怯える顔より、笑顔の方が可愛いな。

「さあ、行こう」

「うん!」

アイスクリーム屋さんの近所にあったおもちゃ屋さんに入る。

そこでコトハは吟味に吟味をする。

そして、大きな猫のぬいぐるみを選んだ。

抱き枕にも出来そうな大きい猫のぬいぐるみは、最近流行りのアニメのキャラクターらしい。

「これにするの?」

「うん!」

「わかった」

買ってあげて、コトハに渡す。

コトハはぎゅっとぬいぐるみを抱きしめて、大切そうに抱えて移動する。

そんなコトハを見守りつつ、不動産屋さんに急いだ。

そういえば、不動産屋さんにアポイントって必要だっけ?

今からでも電話をかけておこうかな。

「…すみません、巫というものです。賃貸物件の紹介をお願いしたいのですが、今からお伺いしても大丈夫ですか?」

『今からですね。大丈夫ですよ』

「ありがとうございます、すぐ行きます」

ということで、幸い了承いただけたので予定通りに不動産屋さんにそのまま向かった。
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