上 下
15 / 51

従兄という立場

しおりを挟む
「…そのお嬢さんとはどういう関係ですか?」

「従兄です。色々事情があって、この子の親の親権が停止されているので僕が監護権をもらって養育しています」

「…あ、それは」

「あの、警察さん。兄様はなんにも悪いことしてないよ…?」

コトハが不安そうな表情をする。

そんなコトハの頭を撫でる。

「大丈夫だよ、コトハ。ちょっとお話ししてるだけだからね」

「兄様…」

コトハが僕にしがみつく。

「一応身分証とか見せてもらえますか?荷物の確認もさせてください」

「はい」

身分証と荷物の中身を見せる。

その結果怪しいものはもったいないこと、コトハの保護者だとの確認も取れて許された。

「勘違いだったようですみません、ご協力ありがとうございました」

「いえ、誤解が解けて良かったです」

「失礼します」

警察が帰って行って、ちょっと思う。

従兄という立場も、鉄壁の守りとは言えないらしい。

でも、確認できる書類をバッグに入れていつも持ち歩いているからなんとかなった。

やっぱり備えあれば憂いなしだな。

しかしヒトの世はなかなか生きづらい社会だな。

「兄様、大丈夫…?」

「うん、もう大丈夫だよ。色々と誤解があったようだけど解決したよ」

「よかった…」

心底ホッとした様子のコトハの頭を撫でる。

「心配ないからね、コトハは僕が守るんだから」

「うん、離れていかないでね」

「絶対大丈夫。ずっと一緒にいるよ」

さて、甘やかすつもりが少しおかしなことになってしまった。

不動産屋さんに行く前に、もう一箇所寄り道をしようか。

「コトハ、ついでにちょっとおもちゃ屋さんに寄って行こうか」

「え?」

「おもちゃとか持ってないでしょう?欲しいものがあれば買うよ」

「い、いいの?」

「うん」

パッと笑顔になるコトハ。

不安で怯える顔より、笑顔の方が可愛いな。

「さあ、行こう」

「うん!」

アイスクリーム屋さんの近所にあったおもちゃ屋さんに入る。

そこでコトハは吟味に吟味をする。

そして、大きな猫のぬいぐるみを選んだ。

抱き枕にも出来そうな大きい猫のぬいぐるみは、最近流行りのアニメのキャラクターらしい。

「これにするの?」

「うん!」

「わかった」

買ってあげて、コトハに渡す。

コトハはぎゅっとぬいぐるみを抱きしめて、大切そうに抱えて移動する。

そんなコトハを見守りつつ、不動産屋さんに急いだ。

そういえば、不動産屋さんにアポイントって必要だっけ?

今からでも電話をかけておこうかな。

「…すみません、巫というものです。賃貸物件の紹介をお願いしたいのですが、今からお伺いしても大丈夫ですか?」

『今からですね。大丈夫ですよ』

「ありがとうございます、すぐ行きます」

ということで、幸い了承いただけたので予定通りに不動産屋さんにそのまま向かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします。

たろ
恋愛
わたしの愛する人の隣には、わたしではない人がいる。………彼の横で彼を見て微笑んでいた。 わたしはそれを遠くからそっと見て、視線を逸らした。 ううん、もう見るのも嫌だった。 結婚して1年を過ぎた。 政略結婚でも、結婚してしまえばお互い寄り添い大事にして暮らしていけるだろうと思っていた。 なのに彼は婚約してからも結婚してからもわたしを見ない。 見ようとしない。 わたしたち夫婦には子どもが出来なかった。 義両親からの期待というプレッシャーにわたしは心が折れそうになった。 わたしは彼の姿を見るのも嫌で彼との時間を拒否するようになってしまった。 そして彼は側室を迎えた。 拗れた殿下が妻のオリエを愛する話です。 ただそれがオリエに伝わることは…… とても設定はゆるいお話です。 短編から長編へ変更しました。 すみません

身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~

湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。 「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」 夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。 公爵である夫とから啖呵を切られたが。 翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。 地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。 「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。 一度、言った言葉を撤回するのは難しい。 そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。 徐々に距離を詰めていきましょう。 全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。 第二章から口説きまくり。 第四章で完結です。 第五章に番外編を追加しました。

1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。

尾道小町
恋愛
登場人物紹介 ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢  17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。 ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。 シェーン・ロングベルク公爵 25歳 結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。 ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳 優秀でシェーンに、こき使われている。 コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳 ヴィヴィアンの幼馴染み。 アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳 シェーンの元婚約者。 ルーク・ダルシュール侯爵25歳 嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。 ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。 ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。 この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。 ジュリアン・スチール公爵令嬢18歳デビット王太子殿下の婚約者。 ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳 私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。 一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。 正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】潔く私を忘れてください旦那様

なか
恋愛
「子を産めないなんて思っていなかった        君を選んだ事が間違いだ」 子を産めない お医者様に診断され、嘆き泣いていた私に彼がかけた最初の言葉を今でも忘れない 私を「愛している」と言った口で 別れを告げた 私を抱きしめた両手で 突き放した彼を忘れるはずがない…… 1年の月日が経ち ローズベル子爵家の屋敷で過ごしていた私の元へとやって来た来客 私と離縁したベンジャミン公爵が訪れ、開口一番に言ったのは 謝罪の言葉でも、後悔の言葉でもなかった。 「君ともう一度、復縁をしたいと思っている…引き受けてくれるよね?」 そんな事を言われて……私は思う 貴方に返す返事はただ一つだと。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します

冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」 結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。 私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。 そうして毎回同じように言われてきた。 逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。 だから今回は。

処理中です...