92 / 98
第11部 グリーンドレイク来襲
第92話 幸せの終わり
しおりを挟む
今日も俺達は南の門からウォルド領に向かう。
素材買取と解体を依頼し、預けた分の買取金をもらいに行くためだ。
アーマン村長から果物を門番にあげるのは、もうやめてほしいと言われた。
お駄賃にと思って始めたが俺達が通る門番の、希望者が多くなり本来の仕事をしないらしい。
それはすまないことをしました。
俺達はウォルド領に住んでいないので、街を離れる時にギルドに買取してほしい素材を預けて行く。
そして次に来た時に、そのお金をもらい次を預けて行くんだ。
魔物も種類によって金額が違う。
だから買取依頼を出す時も考えないといけないことだ。
例えば甲羅が固く防具になる素材なら、ホーネット(蜂)、キラーアント(蟻)、ブラックビートル(カブトムシ)、レッドスコーピオンなどだ。
でもこれを毎回出していたら、供給過多になり買取額が下がる。
だから1度出したら、次はジャイアントスパイダー、ポイズンスパイダー、センチピード(毒ムカデ)など、毒の素材を採取できる素材だ。
だが思っていたより、預けていた素材の金額が安くなっていく。
買取カウンターのモーリスさんに聞くと、ドラゴンが現れ物流が滞り食べ物の消費はあるが入ってきても僅かな上に高価だ。
食料が高騰し素材の買取など、二の次らしい。
逆に食用になる魔物や魔獣なら大歓迎だそうだ。
物資が入ってくるはずの一番東アレン領の、界隈にドラゴンが現れ始めたという。
アレン領とウォルド領の中間にある『クリームシチュー発祥の地』と言われたテオドーラ村も襲われている。
そして数日前には今いるウォルド領寄りの、エターブの町がドラゴンに襲われ壊滅したそうだ。
あくまでも人伝いの話で、どこまでの被害なのかはわからないが。
そして探索隊を派遣しドラゴンを探しているが、見つからないと言う。
住処がわかればまだ攻めようがあるのに。
次は一番東のアレン領か、いいや隣の村が襲われたこのウォルド領が襲われるの番だ、とかそんな憶測が飛び交う。
領主のノルベール公爵も蔵を開き、貯えを街に卸しているが底をつきかけているとか。
そして商人ギルドも力を貸してくれてはいるが、足元を見てこの機会に値上げをする商人も多いとか。
ある意味、商売なのでそれも仕方がないと思うけど。
売れるものが無くなった時、この街はどうするのだろう。
俺がいるジリヤ国は内陸にあり、四方を山や隣国に囲まれている。
王都を国の中心に作り、それを守るかのように周りに東西南北に6つの州を、更に王都寄りの東西に2つの州を置き公爵家を配置し外敵に備えている。
その王都寄りの東の州が、今いるウォルド領だ。
ウォルド領に繋がる他の州は一番東のアレン領か、西側の王都しかない。
北南の他の州とは街道がなく、行き来が出来ないのだ。
あくまでも王都寄りの東西の2つの州は、王都防衛用の州として造られていた。
人々はどうするのだろう?
この街を捨て東の王都に逃げ始めている人もいるようだ。
食べるものが無くなってからでは、遅すぎるから。
そんなことを思いながら、俺達はヴィラーの村へ戻って行く。
ウォルド領街道から北上するヴィラーの村に続く道は凸凹して悪い。
俺達はそこで一旦、立ち止まった。
以前から考えていたことだったが、道が悪すぎる。
オルガさんに頼んで凸凹の道に、Wind slashを放ってもらった。
ウィンドスラッシュは、ウィンドカッターの様に剣技で風魔法を飛ばす技だ。
だがスピードも遅く、奇襲や牽制には使えてもメイン攻撃にはならない。
だからあまり使わない。
だが凸凹した道を平らにするなら別だ。
ヒュン!ヒュン!ヒュ~~ン!
もう1度だ。
ヒュン!ヒュン!ヒュ~~ン!
そしてウィンドスラッシュで切った土を、ストレージに収納していく。
土がぬかるのは粘土質で水が土に染みこまないからだ。
そしてぬからないところは、土に有機物が混ざっており土に水が染みこむからだ。
だから俺達は事前に山で有機物が混ざった土を探しておいた。
ストレージから平らになった路面に土を巻く。
そして水捌けが良い様に、山で採取してきた砂利石を更に均等にひいた。
街道に続く道が良くなれば村の人達も、ウォルド領に穀物を売りに行く時に楽になるだろう。
俺は自分に出来ることを、村のためにするだけだ。
作業をしながら以前、会ったファイネン公爵の言葉が思い出される。
『相手は空を飛ぶ。森の中を進み山脈に向かい、しかも出せる兵も500人だな。攻めてくれば別だが、こちらから攻めるのは得策ではない。そして空にいる魔物にどの様な攻撃手段があるというのか。侍女達には可哀そうだが、攻めても勝ち目はない』
村に近付くにつれ様子が変な事に気づいた。
遠目で見る限りでは所々、煙が出て門番も居ない。
俺達はAgilityUPで走って村に向かった。
誰もいない城門を開け村の中に入る。
すると建物は壊され燃えている。
血溜まりが道の至る所にある。
「に、にげろ。エリアス様…」
見ると南門から入ったところにあるアルマン食堂の建物が壊され、アルマンさんが頭から血を流し倒れていた。
周りには誰のものか分かる、女物の衣服の端切れとたくさんの血が流れていた。
「大丈夫ですか、アルマンさん。オルガさん、早く回復魔法を」
「えぇ、任せて。命の鼓動よ。躍れ命の躍動、汝の傷を癒せ。ウォーターヒール!」
「俺の事は良いから、早く逃げてくれ。エリアス様までやられちまったら」
「どういうことですか、教えてください」
「奴が来たんだ。もう終わりさ」
〈〈〈〈〈 グワァ~~~~~ン!! 〉〉〉〉〉
大きな鳴き声が俺達の屋敷の方から聞こえた。
俺達は向って走る。
すると大きな影が浮かび上がった。
屋敷は潰され緑色のグリーンドレイクが翼を広げていた。
「お母さんは…」
パメラさんの声が聞こえた。
グリーンドレイクの腹は、たくさんの人を飲む込んだのであろう。
元の倍はあろうかと思うくらい膨らみ、満腹の様な顔をしていた。
素材買取と解体を依頼し、預けた分の買取金をもらいに行くためだ。
アーマン村長から果物を門番にあげるのは、もうやめてほしいと言われた。
お駄賃にと思って始めたが俺達が通る門番の、希望者が多くなり本来の仕事をしないらしい。
それはすまないことをしました。
俺達はウォルド領に住んでいないので、街を離れる時にギルドに買取してほしい素材を預けて行く。
そして次に来た時に、そのお金をもらい次を預けて行くんだ。
魔物も種類によって金額が違う。
だから買取依頼を出す時も考えないといけないことだ。
例えば甲羅が固く防具になる素材なら、ホーネット(蜂)、キラーアント(蟻)、ブラックビートル(カブトムシ)、レッドスコーピオンなどだ。
でもこれを毎回出していたら、供給過多になり買取額が下がる。
だから1度出したら、次はジャイアントスパイダー、ポイズンスパイダー、センチピード(毒ムカデ)など、毒の素材を採取できる素材だ。
だが思っていたより、預けていた素材の金額が安くなっていく。
買取カウンターのモーリスさんに聞くと、ドラゴンが現れ物流が滞り食べ物の消費はあるが入ってきても僅かな上に高価だ。
食料が高騰し素材の買取など、二の次らしい。
逆に食用になる魔物や魔獣なら大歓迎だそうだ。
物資が入ってくるはずの一番東アレン領の、界隈にドラゴンが現れ始めたという。
アレン領とウォルド領の中間にある『クリームシチュー発祥の地』と言われたテオドーラ村も襲われている。
そして数日前には今いるウォルド領寄りの、エターブの町がドラゴンに襲われ壊滅したそうだ。
あくまでも人伝いの話で、どこまでの被害なのかはわからないが。
そして探索隊を派遣しドラゴンを探しているが、見つからないと言う。
住処がわかればまだ攻めようがあるのに。
次は一番東のアレン領か、いいや隣の村が襲われたこのウォルド領が襲われるの番だ、とかそんな憶測が飛び交う。
領主のノルベール公爵も蔵を開き、貯えを街に卸しているが底をつきかけているとか。
そして商人ギルドも力を貸してくれてはいるが、足元を見てこの機会に値上げをする商人も多いとか。
ある意味、商売なのでそれも仕方がないと思うけど。
売れるものが無くなった時、この街はどうするのだろう。
俺がいるジリヤ国は内陸にあり、四方を山や隣国に囲まれている。
王都を国の中心に作り、それを守るかのように周りに東西南北に6つの州を、更に王都寄りの東西に2つの州を置き公爵家を配置し外敵に備えている。
その王都寄りの東の州が、今いるウォルド領だ。
ウォルド領に繋がる他の州は一番東のアレン領か、西側の王都しかない。
北南の他の州とは街道がなく、行き来が出来ないのだ。
あくまでも王都寄りの東西の2つの州は、王都防衛用の州として造られていた。
人々はどうするのだろう?
この街を捨て東の王都に逃げ始めている人もいるようだ。
食べるものが無くなってからでは、遅すぎるから。
そんなことを思いながら、俺達はヴィラーの村へ戻って行く。
ウォルド領街道から北上するヴィラーの村に続く道は凸凹して悪い。
俺達はそこで一旦、立ち止まった。
以前から考えていたことだったが、道が悪すぎる。
オルガさんに頼んで凸凹の道に、Wind slashを放ってもらった。
ウィンドスラッシュは、ウィンドカッターの様に剣技で風魔法を飛ばす技だ。
だがスピードも遅く、奇襲や牽制には使えてもメイン攻撃にはならない。
だからあまり使わない。
だが凸凹した道を平らにするなら別だ。
ヒュン!ヒュン!ヒュ~~ン!
もう1度だ。
ヒュン!ヒュン!ヒュ~~ン!
そしてウィンドスラッシュで切った土を、ストレージに収納していく。
土がぬかるのは粘土質で水が土に染みこまないからだ。
そしてぬからないところは、土に有機物が混ざっており土に水が染みこむからだ。
だから俺達は事前に山で有機物が混ざった土を探しておいた。
ストレージから平らになった路面に土を巻く。
そして水捌けが良い様に、山で採取してきた砂利石を更に均等にひいた。
街道に続く道が良くなれば村の人達も、ウォルド領に穀物を売りに行く時に楽になるだろう。
俺は自分に出来ることを、村のためにするだけだ。
作業をしながら以前、会ったファイネン公爵の言葉が思い出される。
『相手は空を飛ぶ。森の中を進み山脈に向かい、しかも出せる兵も500人だな。攻めてくれば別だが、こちらから攻めるのは得策ではない。そして空にいる魔物にどの様な攻撃手段があるというのか。侍女達には可哀そうだが、攻めても勝ち目はない』
村に近付くにつれ様子が変な事に気づいた。
遠目で見る限りでは所々、煙が出て門番も居ない。
俺達はAgilityUPで走って村に向かった。
誰もいない城門を開け村の中に入る。
すると建物は壊され燃えている。
血溜まりが道の至る所にある。
「に、にげろ。エリアス様…」
見ると南門から入ったところにあるアルマン食堂の建物が壊され、アルマンさんが頭から血を流し倒れていた。
周りには誰のものか分かる、女物の衣服の端切れとたくさんの血が流れていた。
「大丈夫ですか、アルマンさん。オルガさん、早く回復魔法を」
「えぇ、任せて。命の鼓動よ。躍れ命の躍動、汝の傷を癒せ。ウォーターヒール!」
「俺の事は良いから、早く逃げてくれ。エリアス様までやられちまったら」
「どういうことですか、教えてください」
「奴が来たんだ。もう終わりさ」
〈〈〈〈〈 グワァ~~~~~ン!! 〉〉〉〉〉
大きな鳴き声が俺達の屋敷の方から聞こえた。
俺達は向って走る。
すると大きな影が浮かび上がった。
屋敷は潰され緑色のグリーンドレイクが翼を広げていた。
「お母さんは…」
パメラさんの声が聞こえた。
グリーンドレイクの腹は、たくさんの人を飲む込んだのであろう。
元の倍はあろうかと思うくらい膨らみ、満腹の様な顔をしていた。
12
お気に入りに追加
264
あなたにおすすめの小説
完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-
ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。
断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。
彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。
通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。
お惣菜お安いですよ?いかがです?
物語はまったり、のんびりと進みます。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~
カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。
気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。
だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう――
――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-
ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。
困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。
はい、ご注文は?
調味料、それとも武器ですか?
カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。
村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。
いずれは世界へ通じる道を繋げるために。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~
甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって?
そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。
嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います
ゆさま
ファンタジー
美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされ、生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれてしまった、ベテランオッサン冒険者のお話。
懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる