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第7部 いざ男爵領へ
第55話 ルイディナの回想
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そ、そうだわ、大事なことを忘れていた。
私達3人は『紅の乙女』というパーティーを組んで冒険者をやっていた。
でも私は力が弱く弓の引きが甘く矢の威力がない。
そしてパメラの魔法は近距離じゃないと威力がなくて…。
そう言えばパメラの魔法は、今まで戦闘で役に立ったことはなかったな。
遠距離攻撃できない魔術師だものね。
魔物を狩るのは剣士のオルガに頼ってばかりだったわ。
私達3人は同じ村の出身で成人を機に村を出て、アレンの街で冒険者になった。
それ以外に生きる道がなかったから。
村は貧しく家には子供を養う余裕もない。
街に出て働ける伝手もない。
女性の中には生きていくために体を売って生活している人もいる。
でも私達は冒険者を選んだ。
魔獣を狩りそれを売って生計を立てる毎日だった。
でも戦闘力が無いから、たいした稼ぎもない。
そんな時、森でバグベアに出会ってしまった。
私は弓で、パメラは風魔法で牽制するけど、まったく役に立たなかった。
オルガ1人でバグベアに立ち向かったけど、まるで相手にならず。
左手を鋭い爪でえぐられ吹き飛ばされた。
オルガがバグベアにやられる、そう思った時だった。
彼がオルガとバグベアの間に入り、バグベアの攻撃を防いでくれたのは。
オルガはその後、気を失ったみたいだったけど。
エリアスは不思議な少年だ。
バグベアの攻撃を素手で受け止め、魔法剣でとどめを刺した。
その後、オルガの腕の傷をハイポーションを使い治してくれた。
見ず知らずの初めて会う他人に、高価なハイポーションを使うなんて。
美形で黒髪、黒い瞳の、この地方では見かけない容姿の少年。
その時からかな、オルガがエリアスを好きになったのは。
エリアスに泊まっている宿を聞き、私達も同じ宿に泊まることにした。
オルガがリーダーみたいなものだから、好きにやらせることにしたんだ。
以前から3人パーティーではバランスが悪く、後1人前衛が欲しかった。
でも女剣士で1人でいる人なんて、まずいない。
男をパーティーに入れるのも問題になるし。
そんな時に現れたのがエリアスだった。
彼をパーティーに誘うことにした。
オルガが言い出した時、私達も反対しなかった。
彼なら大丈夫、そんな気がした。
いいえ、そうじゃない。
他の冒険者はギラギラしたところがあるのに、彼はまったくそんなところがない。
人を安心させる、と言うより生活感が感じられなかった。
まるで今あることが、現実ではない様な目をしていた。
そしてエリアスはパーティーに仮加入した。
『お試し』というやつらしい。
今から思うとエリアスも加入に関しては、恥ずかしかったのかもしれない。
他のメンバーは女だからかな。
エリアスと4人で森に入り、果物を取り魔物を狩った。
接するうちにエリアスの印象が変わっていく。
出会った頃は落ち着いた中年のおじさんの様な感じだった。
でも段々と若く感じ、逆にちょっと背伸びをしようとしている子供に見えるようになった。
まるで精神年齢が、50代から10代にさかのぼっていくような印象だった。
まあエリアスは私より4歳、オルガより2歳年下だ。
パメラと同じ17歳だから、子供と言えばそうだけど。
腕を組んで少し胸を肘に当ててあげると、とても喜んでくれた。
こんなことでバグベアから、救ってくれた恩が返せるなら安いものだ。
そんな時だ、ゴブリンのスタンピードが起きたのは。
ゴブリンはメスが居ないため異種間で強姦し繁殖をする。
だから女の冒険者は外された。
それはそれでほっとしたものよ。
でも戦いに行くのは500匹のゴブリンに対して700人の騎士団。
そして冒険者は24人。
それだけでも相打ち覚悟なのに、キングがいる群れなら全滅覚悟の編成ね。
私達は祈った。
勝利とエリアスの無事な帰還を。
そしてエリアスは帰ってきた。
24人の冒険者達と勝利を連れて。
しかも彼は魔力枯渇で倒れたまま生還した。
オルガはエリアスが目覚めるまで、つきっきりで側にいたし。
あの時は見てられなかったわ。
そして3日間眠り続けた後、エリアスは目を覚ました。
オルガの喜びようと言ったら。
その後から『エリアスは私がしっかり管理しないといけないわ』、と言い始めた。
きっとエリアスが魔力枯渇で倒れたのが、よほどショックだったようね。
そしてエリアスは男爵になった。
これで私たちは終わったと思ったわ。
だって貴族と冒険者だもの。
でもエリアスは違った。
「もし良かったら3人共、俺と一緒に来ないか?」
そう言ってくれた。
とても嬉しかった。
でも今までと同じ、仲間としてだと私は分かっていた。
でもオルガは違った。
エリアスと離れたくない、無意識の感情からプロポーズだと思い込みたかった。
そして周囲に嫌われないように、輪を乱さないように、顔色を窺いながら行動している、流されやすいエリアスはオルガの勘違いを否定できなかった。
オルガのついでに、私もパメラもお嫁さんにしてもらった。
私は生活の安定、パメラはエリアスの魔法への興味から。
そして嫌いではないから、寝ることも苦にはならない。
それに生活できるから。
それが今までの経緯。
でもこれからは、どうなるのエリアス。
夫婦になり男女の関係になっても、あなたは未だに敬語を使ってばかり。
それがどういう意味なのか分かる?
敬語を使うという事は、あなたとは一線を引きます、と言っているのと同じだわ。
『優柔不断で流されやすい』あなたは、いつまで私達を側においてくれるの。
いつ気が変わるのかしら?
いいえ、その前に…。
私達を愛しているの?
私達3人は『紅の乙女』というパーティーを組んで冒険者をやっていた。
でも私は力が弱く弓の引きが甘く矢の威力がない。
そしてパメラの魔法は近距離じゃないと威力がなくて…。
そう言えばパメラの魔法は、今まで戦闘で役に立ったことはなかったな。
遠距離攻撃できない魔術師だものね。
魔物を狩るのは剣士のオルガに頼ってばかりだったわ。
私達3人は同じ村の出身で成人を機に村を出て、アレンの街で冒険者になった。
それ以外に生きる道がなかったから。
村は貧しく家には子供を養う余裕もない。
街に出て働ける伝手もない。
女性の中には生きていくために体を売って生活している人もいる。
でも私達は冒険者を選んだ。
魔獣を狩りそれを売って生計を立てる毎日だった。
でも戦闘力が無いから、たいした稼ぎもない。
そんな時、森でバグベアに出会ってしまった。
私は弓で、パメラは風魔法で牽制するけど、まったく役に立たなかった。
オルガ1人でバグベアに立ち向かったけど、まるで相手にならず。
左手を鋭い爪でえぐられ吹き飛ばされた。
オルガがバグベアにやられる、そう思った時だった。
彼がオルガとバグベアの間に入り、バグベアの攻撃を防いでくれたのは。
オルガはその後、気を失ったみたいだったけど。
エリアスは不思議な少年だ。
バグベアの攻撃を素手で受け止め、魔法剣でとどめを刺した。
その後、オルガの腕の傷をハイポーションを使い治してくれた。
見ず知らずの初めて会う他人に、高価なハイポーションを使うなんて。
美形で黒髪、黒い瞳の、この地方では見かけない容姿の少年。
その時からかな、オルガがエリアスを好きになったのは。
エリアスに泊まっている宿を聞き、私達も同じ宿に泊まることにした。
オルガがリーダーみたいなものだから、好きにやらせることにしたんだ。
以前から3人パーティーではバランスが悪く、後1人前衛が欲しかった。
でも女剣士で1人でいる人なんて、まずいない。
男をパーティーに入れるのも問題になるし。
そんな時に現れたのがエリアスだった。
彼をパーティーに誘うことにした。
オルガが言い出した時、私達も反対しなかった。
彼なら大丈夫、そんな気がした。
いいえ、そうじゃない。
他の冒険者はギラギラしたところがあるのに、彼はまったくそんなところがない。
人を安心させる、と言うより生活感が感じられなかった。
まるで今あることが、現実ではない様な目をしていた。
そしてエリアスはパーティーに仮加入した。
『お試し』というやつらしい。
今から思うとエリアスも加入に関しては、恥ずかしかったのかもしれない。
他のメンバーは女だからかな。
エリアスと4人で森に入り、果物を取り魔物を狩った。
接するうちにエリアスの印象が変わっていく。
出会った頃は落ち着いた中年のおじさんの様な感じだった。
でも段々と若く感じ、逆にちょっと背伸びをしようとしている子供に見えるようになった。
まるで精神年齢が、50代から10代にさかのぼっていくような印象だった。
まあエリアスは私より4歳、オルガより2歳年下だ。
パメラと同じ17歳だから、子供と言えばそうだけど。
腕を組んで少し胸を肘に当ててあげると、とても喜んでくれた。
こんなことでバグベアから、救ってくれた恩が返せるなら安いものだ。
そんな時だ、ゴブリンのスタンピードが起きたのは。
ゴブリンはメスが居ないため異種間で強姦し繁殖をする。
だから女の冒険者は外された。
それはそれでほっとしたものよ。
でも戦いに行くのは500匹のゴブリンに対して700人の騎士団。
そして冒険者は24人。
それだけでも相打ち覚悟なのに、キングがいる群れなら全滅覚悟の編成ね。
私達は祈った。
勝利とエリアスの無事な帰還を。
そしてエリアスは帰ってきた。
24人の冒険者達と勝利を連れて。
しかも彼は魔力枯渇で倒れたまま生還した。
オルガはエリアスが目覚めるまで、つきっきりで側にいたし。
あの時は見てられなかったわ。
そして3日間眠り続けた後、エリアスは目を覚ました。
オルガの喜びようと言ったら。
その後から『エリアスは私がしっかり管理しないといけないわ』、と言い始めた。
きっとエリアスが魔力枯渇で倒れたのが、よほどショックだったようね。
そしてエリアスは男爵になった。
これで私たちは終わったと思ったわ。
だって貴族と冒険者だもの。
でもエリアスは違った。
「もし良かったら3人共、俺と一緒に来ないか?」
そう言ってくれた。
とても嬉しかった。
でも今までと同じ、仲間としてだと私は分かっていた。
でもオルガは違った。
エリアスと離れたくない、無意識の感情からプロポーズだと思い込みたかった。
そして周囲に嫌われないように、輪を乱さないように、顔色を窺いながら行動している、流されやすいエリアスはオルガの勘違いを否定できなかった。
オルガのついでに、私もパメラもお嫁さんにしてもらった。
私は生活の安定、パメラはエリアスの魔法への興味から。
そして嫌いではないから、寝ることも苦にはならない。
それに生活できるから。
それが今までの経緯。
でもこれからは、どうなるのエリアス。
夫婦になり男女の関係になっても、あなたは未だに敬語を使ってばかり。
それがどういう意味なのか分かる?
敬語を使うという事は、あなたとは一線を引きます、と言っているのと同じだわ。
『優柔不断で流されやすい』あなたは、いつまで私達を側においてくれるの。
いつ気が変わるのかしら?
いいえ、その前に…。
私達を愛しているの?
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