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お友達のクーちゃん

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 森の奥からは、バキッバキと不自然な倒れかたがする木々の音や、盗賊たちの悲鳴、猛獣の唸り声などが混ざり合い辺りに響いていた。・・だが、やがて沈黙が訪れる。

 「・・。どうやら終わったようですね」
 「まったく・・知らない人が森の中に入ってきたらそりゃクーちゃん怒るに決まっているのに」
 「・・ここは彼の縄張りですから、知らなかったとはいえ盗賊たちも災難でしたね」

 セルフィスは苦笑を浮かべ、なぜか遠い目をして答える。

「そういえばセルフィス様・・あ、あの先ほどはありがとうございました・・」
「お礼でしたら、貴女のお友達に言ってあげてください。私はこの森で薬草を採っていたら、貴女がここに来ていると彼が私に教えにきてくれたのですから」
 「はい・・」

 ぽっと頬を赤く染め、お礼を言うアメリアに、セルフィスは水色の瞳を細め優しく笑いかけたのだ。
 こんな時間がずっと続けばいいと彼女は顔を赤くしながらそう思ったのだが、その時――後ろの茂みからガサガサと音が聞こえたのだ。
 後ろを振り向くとそこに姿を現したのは、体長3メートル以上はあろうかという巨大熊、ジャイアントグリスリー。

 アメリアはぱっと満面の笑顔を浮かべると、恐れもせず大きな熊に駆け寄ったのだ。

「クーちゃん、会いたかったよ~」
「グワオ~ン」

 クーちゃんと呼ばれた巨大熊も、甘えるような声をだしながらアメリアに突進したのだ。
この様子を感慨深げに見守りながらも、こっそりとセルフィスはアメリアたちから距離を取る。大きく後ろに下がっり自らの安全を確保したのだ。
 感動の再会ではあるが、普通の人間が近くにいては非常に危険なので安全圏まで離れたのだ。

 案の定、全力でじゃれついてきたクーちゃんを難なく地面に転がすと毛に頬擦りをし、クーちゃんが力強い前足を振り上げてきたかと思うとそれを前に抱えて、一本背負いの要領でクーちゃんを遠くにすっ飛ばす。また、起き上がるとクーちゃんはアメリアに突進する。

 知らないものが見ると、少女が巨大熊と戦っているように見えるがそれは大きな誤解だ。実際はお互いじゃれて遊んでいるだけである。

 彼は子熊のとき、怪我をしてこの森で迷子になり泣いているところをアメリアの両親に保護されていた。
 アメリアとは家族のように一緒に育ち、怪我が治りこの森に帰った後も、アメリアと両親にはとても懐いていたのだ。
 この森に来るたびにアメリアはクーちゃんとこうやって遊んでいたせいか、可憐な外見とは裏腹に彼女は非常に力が強くなってしまったようだ。

 どうやらアメリアの規格外の・・力の強さは今も相変わらずなのだと思いながらも、保護者としては将来が少し心配でもある。
だが、彼女が戻ってきてくれたことに喜んでもいる自分がいることに少し驚きながらもセルフィスは、温かい気持ちのまま離れた所から見守っていたのだ。
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