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懐かしい村へと向かう
しおりを挟む「クーちゃん本当に良いの?森の入口まで距離あるよ。私のこと重くない・・」
「キュッゥウ」
アメリアは今、ジャイアントグリスリーこと巨大熊のクーちゃんの背中に横すわりで乗っていた。
ひとしきり一緒に遊んだ後、クーちゃんが森の出口まで乗せてくれるというので、お言葉に甘えクーちゃんの背に乗せてもらっている。
数年ぶりにクーちゃんの背中に乗ってみたが、成獣になりひと回りまた大きくなって威厳が出てきたようだ。だが、もふもふした茶色の毛の感触は昔と同じで変わってはいなかった。
「あの、セルフィス様も一緒にどうですか?クーちゃん、背中に乗っても良いって言っていますよ」
「私はいつもの薬草採りですからお構いなく。それよりもアメリア様の方こそ隣国からの長旅で疲れているのですから、少しでも休んでください」
「はい・・」
セルフィスは、薬草をいっぱいに入れた籠を背負い直すと、やんわりとアメリアの申し出を断ったのだ。
アメリアはそう言ってはくれたが、彼はアメリアがいる建前そう言っただけにすぎない。
もし、セルフィスが本当にアメリアと一緒に彼の背に乗ってしまったら最後・・・アメリアのいない所でどんな報復を受けるかわからない。
怒り狂った彼に頭をかじられるようなそんな嫌な予感がしたのだ。今も彼から殺気のようなものをヒシヒシと感じていた。
理由はわからないが、昔からセルフィスはアメリアのお友達から目の敵にされていたのだ。
森の出口にたどり着くと、アメリアはクーちゃんの背からゆっくりと降りる。もふもふの毛に頬擦りをすると、
「送ってくれてありがとうクーちゃん。また、遊びに来るね」
森の奥深くへと戻っていくクーちゃんの後ろ姿が見えなくなるまで、アメリアは手を振り続けたのだ。
「さあ、私たちも村へ行きましょうか」
「え?」
「このまま貴女を放っておくわけにもいきませんし、なぜ隣国の侯爵家に引き取られたはずのアメリア様がここにいるのか理由を聞いておかなくてはいけませんからね」
「はい・・」
アメリアは俯きしょげて返事をするが、セルフィスは笑いながら
「べつに貴女を責めてはいません。村で暮らすなら話してくれたほうが力になれると思ったからです。話したくなければ無理に言う必要はありません」
「あの・・落ち着いたら・・いずれは話したいと思います」
「わかりました。では、私が治療師をしている村へと向かいましょうか」
アメリアはこくりと頷くと昔と同じようにセルフィスの服の裾を掴んだのだ。
こうしていると、両親が生きていた・・幸せだった頃のことを思い出し懐かしい気持ちでいっぱいになるのだった。
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