20 / 60
第一章 The war ain't over!
8-2 グラインド・ゴシップⅢ
しおりを挟む
「そうか……じゃあ、精神崩壊云々は、言い過ぎって事でいいな」
「言い過ぎというか、憶測です。ていうか精神崩壊してたら一人で全部の楽器演奏してマスターテープまで作れませんし、スウェーデンまで行きません」
「それはそうだ」
「とはいえ……デプレッシブ・ブラックメタルはマジで頭おかしい作品が出てきたジャンルでもありますし、せいぜい記事のコメント欄か、SNSのシェアを使って精神崩壊してたら一人でアルバム作れんだろ、わら、みたいなコメントつけて拡散狙うくらいしかないと思いますよ」
「まあ、そうだな、この件は」
「この件?」
訝しむレインの目前に、別の記事が差し出された。
――元有名バンドギタリスト、白昼の〇〇取引。
それは下世話な芸能醜聞を面白おかしく書き立てているらしい連載の一部で、写真にはモザイクの中に浮かぶ一人の人影が有った。
「げ、これ、盗撮っすね」
レインは不快感をあらわに、亀山を見る。
「そうか。それで、やられた覚えは?」
レインはざっと記事の内容を見る。其処には違法薬物の取引を思わせる文言が並んでいた。
「え……あ、これ、パッケージストア。このポップの配色、見覚えが有ります。多分、年末に友達の会社で使うOPP袋が無くなって、慌てて調達に行った時ですね。そうそう、このアホみたいなワッペンは、木綿のパーカーの穴を塞ぐのに、ちょっと喧嘩した連れ合いにいたずらされて……」
レインは画像を拡大し、亀山に写真の一部を指さして見せる。
「えっと、まずパッケージストアってのが」
「業務用資材の販売店で、都内に何軒か在ります。所謂業務用スーパーみたいな物で、ラッピングとか食品容器の専門店です。基本的に大容量の業務用パックしか売ってませんけど、単価の高い箱は入り数少ないですし、マステも沢山有って普通のお客さんも多いですよ」
「あぁ、で、友達の会社ってのが、金具屋さんだっけ?」
「ビーズやビジューも扱うので、小分けパックが無限に必要で……年末の売れ行きが良くて、年明けの在庫を作っていたら袋が切れたんです」
「で、この0.7とか、0.25とか何とかいうのは」
「袋の規格と、丸カンやTピンの規格の話してた時ですかね。いざ売り場に行ったところで、何が要るやらって事になって電話を……証拠が必要っていうなら、会社に聞いてもらえばいいですよ。商品用のOPP袋は経費になるので、領収書のデータが残ってるはずです」
「そうか……じゃあ、こっちは出鱈目名誉棄損で叩けるな……ところで、このワッペンの出所は分るか?」
「多分百円雑貨じゃないですかね。最近買った物じゃなくて、この数年で衝動買いした謎資材の一部かもしれませんが」
「店の見当はつくか?」
「おしゃれ雑貨の多い所じゃないですかね、今でも端切れの類はよく見てますし」
「後、パーカーは何処で?」
「あー……これ。レコードのおまけです」
「は?」
亀山は思わずレインの顔を凝視する。
「サッド・レイン・サウンズから出しているバンド、サイコトロピック・ポイズンのグッズです。向精神作用のある毒みたいな名前してますけど、デプレッシブ・ブラックメタルのバンドで、メロディ重視のポストロック寄りなスタイルかつ、この手のバンドには珍しくロゴが読めるしお洒落なんですよ。ただ、おまけの所為か、早々に穴が」
「……分った。この記事に関しちゃ、ちょっとどうにかするよ」
「って、しゃちょー、もしかしてこの為にすっ飛んできたんですか?」
「そりゃそうだよ、幾らレインとしては死んでいて、君が正式なうちの所属タレントではないにせよ、君にあらぬ醜聞が立つのは困る」
「なんかすみません、迷惑かけちゃってる格好になって」
「気にするな……まあ、身辺には気を付けてくれよ」
「はい」
亀山はそそくさと玄関扉を開け、家の出入り口を塞ぐ様な格好で雑に止めた車を出していった。
「言い過ぎというか、憶測です。ていうか精神崩壊してたら一人で全部の楽器演奏してマスターテープまで作れませんし、スウェーデンまで行きません」
「それはそうだ」
「とはいえ……デプレッシブ・ブラックメタルはマジで頭おかしい作品が出てきたジャンルでもありますし、せいぜい記事のコメント欄か、SNSのシェアを使って精神崩壊してたら一人でアルバム作れんだろ、わら、みたいなコメントつけて拡散狙うくらいしかないと思いますよ」
「まあ、そうだな、この件は」
「この件?」
訝しむレインの目前に、別の記事が差し出された。
――元有名バンドギタリスト、白昼の〇〇取引。
それは下世話な芸能醜聞を面白おかしく書き立てているらしい連載の一部で、写真にはモザイクの中に浮かぶ一人の人影が有った。
「げ、これ、盗撮っすね」
レインは不快感をあらわに、亀山を見る。
「そうか。それで、やられた覚えは?」
レインはざっと記事の内容を見る。其処には違法薬物の取引を思わせる文言が並んでいた。
「え……あ、これ、パッケージストア。このポップの配色、見覚えが有ります。多分、年末に友達の会社で使うOPP袋が無くなって、慌てて調達に行った時ですね。そうそう、このアホみたいなワッペンは、木綿のパーカーの穴を塞ぐのに、ちょっと喧嘩した連れ合いにいたずらされて……」
レインは画像を拡大し、亀山に写真の一部を指さして見せる。
「えっと、まずパッケージストアってのが」
「業務用資材の販売店で、都内に何軒か在ります。所謂業務用スーパーみたいな物で、ラッピングとか食品容器の専門店です。基本的に大容量の業務用パックしか売ってませんけど、単価の高い箱は入り数少ないですし、マステも沢山有って普通のお客さんも多いですよ」
「あぁ、で、友達の会社ってのが、金具屋さんだっけ?」
「ビーズやビジューも扱うので、小分けパックが無限に必要で……年末の売れ行きが良くて、年明けの在庫を作っていたら袋が切れたんです」
「で、この0.7とか、0.25とか何とかいうのは」
「袋の規格と、丸カンやTピンの規格の話してた時ですかね。いざ売り場に行ったところで、何が要るやらって事になって電話を……証拠が必要っていうなら、会社に聞いてもらえばいいですよ。商品用のOPP袋は経費になるので、領収書のデータが残ってるはずです」
「そうか……じゃあ、こっちは出鱈目名誉棄損で叩けるな……ところで、このワッペンの出所は分るか?」
「多分百円雑貨じゃないですかね。最近買った物じゃなくて、この数年で衝動買いした謎資材の一部かもしれませんが」
「店の見当はつくか?」
「おしゃれ雑貨の多い所じゃないですかね、今でも端切れの類はよく見てますし」
「後、パーカーは何処で?」
「あー……これ。レコードのおまけです」
「は?」
亀山は思わずレインの顔を凝視する。
「サッド・レイン・サウンズから出しているバンド、サイコトロピック・ポイズンのグッズです。向精神作用のある毒みたいな名前してますけど、デプレッシブ・ブラックメタルのバンドで、メロディ重視のポストロック寄りなスタイルかつ、この手のバンドには珍しくロゴが読めるしお洒落なんですよ。ただ、おまけの所為か、早々に穴が」
「……分った。この記事に関しちゃ、ちょっとどうにかするよ」
「って、しゃちょー、もしかしてこの為にすっ飛んできたんですか?」
「そりゃそうだよ、幾らレインとしては死んでいて、君が正式なうちの所属タレントではないにせよ、君にあらぬ醜聞が立つのは困る」
「なんかすみません、迷惑かけちゃってる格好になって」
「気にするな……まあ、身辺には気を付けてくれよ」
「はい」
亀山はそそくさと玄関扉を開け、家の出入り口を塞ぐ様な格好で雑に止めた車を出していった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
【R18 大人女性向け】会社の飲み会帰りに年下イケメンにお持ち帰りされちゃいました
utsugi
恋愛
職場のイケメン後輩に飲み会帰りにお持ち帰りされちゃうお話です。
がっつりR18です。18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる