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第一章 幼少期編
38.婚約者①
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「皆さま初めまして。ブリオン王国第一王女、ヒルデガンド=リスパーダ=ブリオンと申します。気安くヒルデと呼んでくださいませ」
そう言って、スカートの裾をつまみカーテシーをする狐耳幼女。
五歳くらいにみえるけれど、中々堂に入った挨拶だ。
ただそんな優雅な挨拶をしていても、後ろに見える尻尾にどうしても目が行ってしまう。
あんな大きなスカートの、一体どこから尻尾は出てきているのだろう。
突然の王女の来訪に俺がそんな現実逃避をしていると、クスクスと楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
その笑い声の主は、当然お祖母様だ。
「ふふ。私のプレゼント、気に入ってもらえたかしら?」
「は、はい……驚き過ぎて、何が何やら……」
奴隷を迎えようとしたら、王女が出てきたのだ。
この何の脈絡もない展開について行ける方がどうかしているだろう。
と思っていたのだが――
「……なるほど。ブリオン王国が私を支援することは、既定路線だったと言う事ですか」
と、父さんがため息をつきつつ呟いた。
隣に座っているマリアンヌ母さんも、得心が行った様に頷いている。
どうやら状況について行けていないのは、この場では俺一人らしい。
「えっと……どういうこと?」
周りが勝手に納得していく中、取り残された俺は答えを求めて父さんに尋ねる。
すると父さんは“落ち着いて聞くんだぞ”とやけに勿体ぶって、俺に事情を話してくれた。
どうやらお祖母たちブリオン王国サイドは、母さんからの手紙を見た段階で、父さんが当主を目指すことに決めたのだろうと見当をつけたらしい。
確かに奴隷の工面を態々他国であるブリオン王国に頼む時点で、何かしらの事情があることは察しが付くだろう。
しかしそれだけで、そこまで見当を付けられるものなのだろうか。
そんな俺の疑問は、お祖母様の言葉で氷解する。
「今まで一度も実家を頼ってこなかったマリーが、態々手紙を書いて寄こしたのですもの。余程の事態なのだとすぐに察しがついたわ」
お祖母様の言葉に、母さんは恥ずかしそうに顔を赤らめた。
なるほど、母さんが家を出てから実家を頼ったのはこれが初めてだったのか。
確かに他国に嫁いだ母さんが公爵家である実家を頼ると言う事は、個人の問題で済む話では無くなってしまうのだろう。
だからこそ、お祖母様はその手紙から事の重大さを感じ取ったと言う事か。
「あとはあなたたちの状況を鑑みて、見当を付けたと言う訳よ。まぁ概ね正解だった訳だけれど……まさかこんな奥の手があるとは流石に予想できなかったわ」
そう言って、俺を見ながら嬉しそうに笑うお祖母様。
色々とイレギュラーな俺の存在は、百戦錬磨の貴族たちにも予測不能だったらしい。
そう言って、スカートの裾をつまみカーテシーをする狐耳幼女。
五歳くらいにみえるけれど、中々堂に入った挨拶だ。
ただそんな優雅な挨拶をしていても、後ろに見える尻尾にどうしても目が行ってしまう。
あんな大きなスカートの、一体どこから尻尾は出てきているのだろう。
突然の王女の来訪に俺がそんな現実逃避をしていると、クスクスと楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
その笑い声の主は、当然お祖母様だ。
「ふふ。私のプレゼント、気に入ってもらえたかしら?」
「は、はい……驚き過ぎて、何が何やら……」
奴隷を迎えようとしたら、王女が出てきたのだ。
この何の脈絡もない展開について行ける方がどうかしているだろう。
と思っていたのだが――
「……なるほど。ブリオン王国が私を支援することは、既定路線だったと言う事ですか」
と、父さんがため息をつきつつ呟いた。
隣に座っているマリアンヌ母さんも、得心が行った様に頷いている。
どうやら状況について行けていないのは、この場では俺一人らしい。
「えっと……どういうこと?」
周りが勝手に納得していく中、取り残された俺は答えを求めて父さんに尋ねる。
すると父さんは“落ち着いて聞くんだぞ”とやけに勿体ぶって、俺に事情を話してくれた。
どうやらお祖母たちブリオン王国サイドは、母さんからの手紙を見た段階で、父さんが当主を目指すことに決めたのだろうと見当をつけたらしい。
確かに奴隷の工面を態々他国であるブリオン王国に頼む時点で、何かしらの事情があることは察しが付くだろう。
しかしそれだけで、そこまで見当を付けられるものなのだろうか。
そんな俺の疑問は、お祖母様の言葉で氷解する。
「今まで一度も実家を頼ってこなかったマリーが、態々手紙を書いて寄こしたのですもの。余程の事態なのだとすぐに察しがついたわ」
お祖母様の言葉に、母さんは恥ずかしそうに顔を赤らめた。
なるほど、母さんが家を出てから実家を頼ったのはこれが初めてだったのか。
確かに他国に嫁いだ母さんが公爵家である実家を頼ると言う事は、個人の問題で済む話では無くなってしまうのだろう。
だからこそ、お祖母様はその手紙から事の重大さを感じ取ったと言う事か。
「あとはあなたたちの状況を鑑みて、見当を付けたと言う訳よ。まぁ概ね正解だった訳だけれど……まさかこんな奥の手があるとは流石に予想できなかったわ」
そう言って、俺を見ながら嬉しそうに笑うお祖母様。
色々とイレギュラーな俺の存在は、百戦錬磨の貴族たちにも予測不能だったらしい。
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