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第一章 幼少期編
37.初めての奴隷⑫
しおりを挟む父とお祖母様との会談が無事円満に終わり一息ついていると、お祖母様がパンッと手を一つ叩き、皆の注目を集めた。
「さて、ではそろそろアルへのプレゼントを紹介しましょうか」
俺へのプレゼント。
つまり俺が購入する奴隷の事だろう。
人を物の様に売買することにまだ抵抗はあるが、ミリーやフォルコを見ているからかその忌避感も今は少し薄れている。
結局、俺がきちんと人として接していけばいいだけだ、と思うことにした。
因みに、購入してすぐに奴隷から解放することは両親から禁じられている。
これから俺は父の下でたくさんの奴隷を労働力として扱っていくことになるのだ。
それなのに自分の手元に置いてある奴隷だけをすぐに開放するのは自己満足でしかない。そう言われてしまった。
解放するのであれば、きちんと時間を掛けて信頼関係を築いてからにしなさいと。
確かにその通りだと感じ、俺も両親の言葉に素直に従うつもりでいる。
これから労働力として扱う奴隷たちを、書面上のただの数字として考えないためにも、身近に奴隷を置いておくのは必要なことなのだろう。
お祖母様の声に反応し、カインさんが一度席を外し部屋の外へと出ていく。
そしてしばらくしてから、彼は少年と少女、そして一人の幼女を連れて部屋の中へと入ってきた。
一人は褐色の短髪と同色の瞳を持った十歳くらいの少年。
小さいながらも既に鍛えているのか、体つきがしっかりしているのが分かる。
もう一人の少女は、薄い緑色の髪を肩口で切りそろえており、髪の隙間から長く尖った耳を覗かせている。
瞳は髪よりも濃い緑色をしており、その透き通る瞳はエメラルドの様な輝きを秘めている。
すこしぼーっとした顔でこちらを眺めるその姿はどこか浮世離れをしており、放っておくとフラフラとどこかへ消えてしまいそうな危うさを覚える。
そして最後の幼女だが、母と同じ金色のロングヘアーではあるものの、日の光を浴びると少し赤みを帯びて見える。
年は俺よりいくつか上くらいだろうか。
髪色より少し赤みを帯びた瞳と、何より目を引くのは頭の上の狐耳。
お尻のあたりには髪と同色の尻尾が揺れており、その先端に移行するほど赤みが強く感じられる。
少年はともかく、もう二人の女の子は華美では無いものの綺麗に着飾られており、とても奴隷には見えなかった。
寧ろどこぞの貴族の娘だといわれた方がしっくりと来る。
「お待たせいたしました。こちらが今回紹介させていただきます奴隷、人族のジャックス、エルフ族のソフィーネでございます」
カインさんの言葉に、二人が軽く会釈をする。
「そしてこちらの方が、リドリアーヌ様からのサプライズにございます。ブリオン王国第一王女、ヒルデガンド=リスパーダ=ブリオン王女にございます」
カインさんの言葉に、フィリップ父さんが紅茶を吹き出す。
母さんも困ったように首を傾げ苦笑いだ。
ふと視線を正面に移すと、お祖母様がこちらを見て楽しそうにほほ笑んでいる。
この人とは会ってまだ間もないが、あれはきっとこちらの反応を楽しんでいる顔に違いない。
どうやら彼女からのプレゼントには、とんでもない爆弾が入っていたようだ。
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