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第14話 オークがきたよ

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「おーい、オークを連れてきたぞ!」

 そう言って村に帰ってきたのは、ベンジャミンという名前のゴブリンだった。
 ベンジャミンは主に森の中に入っていって、狩りをする役割をしている。
 頭がよく、身体も丈夫なので、みんなから慕われている、いいやつだ。
 ちなみにベンジャミンという名前は、右利きっていうのが語源だ。
 ちなみにだがベンジャミンは左利きだ。
 だから左利きのベンジャミンと呼ばれている。
 余談だ。

 ベンジャミンは森の中から、オークを一体連れて帰ってきた。
 それをリンダが真っ先に迎える。

「おお! オークか、でかしたぞ!」
「なんかこいつ、迷子だったみたいでさ」

 オークという種族は、かなり珍しい種族だった。
 いわゆる、絶滅危惧種とでもいうのだろうか。
 オークはもはやなかなか出会える存在ではない。
 少なくとも、ゴブリンのようにありふれた存在ではない。

 オークっていうのは、ゴブリンよりもさらに身体がデカくて、強い生き物だ。
 皮膚が緑だったり、人型だったり、ゴブリンとかなり通じる部分の多い近隣種。
 だが、残念なことにオークは非常に頭が悪い。

 そのせいで、オークは群れを管理したりできないから、生存能力が低いのだ。
 オークは身体能力だけならゴブリンの数倍だが、頭が悪いせいで年々その数を減らしている。

 そんなオークは、半ばゴブリンの家畜のような存在だった。
 ゴブリンの群れには、だいたいオークが数頭存在する。
 オークは群れの中で、用心棒の役割だったり、戦闘兵器のような役割をする。

 ゴブリンたちは頭はいいが、どうしても強さでは人間やドラゴンなんかの上位種には劣る。
 そこで、ゴブリンたちはオークを仲間にして、共存しているというわけだ。
 オークもゴブリンたちといれば、飯も食えるし、知恵もかりれるというわけで、手を貸している。

 それから、オークというのは、実は雄しか存在しない生き物なのだ。
 オークがその数を増やすには、人間などの別の種類の生き物の雌を孕ませる必要がある。
 オークにレイプのイメージがあるのは、そのせいだな。
 ちなみに、ゴブリンの群れのオークは、適当なゴブリンの雌をあてがわれる。
 まあ、だいたい余り物の不細工な雌ゴブリンだ。

 オークは性欲はすごいし、頭もよくないから、どんな雌でも喜んで抱く。
 ゴブリンは余分なメスをオークに差し出し、それでオークを増やし、さらに群れの力とするのだ。
 まあ、そんな感じでゴブリンとオークは切っても切れない共存関係にあった。

 俺たち世界樹の村のゴブリンたちは、オークを一体も飼っていなかった。
 そのため、今回ベンジャミンがオークを連れてきたのは大手柄というわけだ。
 ゴブリンの村同士が戦争をするとき、オークの数が勝敗を決めるといってもいいからな。

 ベンジャミンがどこからオークを連れてきたのかはわからないが、まあ、お手柄だな。

 ベンジャミンが連れてきたオークは、リンダに軽く挨拶を済ませた。

「オデ、迷子。オデ、ベンジャミンに助けられた。オデ、ここで働く」
「おう、よろしくな……!」

 ということで、オークが新しく仲間になった。
 オークはオルグと名前がつけられた。
 これから村の大事な戦力となっていくだろう。
 
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