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第6話 ツンデレオオカミさま(2)
しおりを挟む私が差し出したシュークリームを乱暴に奪い取り、彼は私の隣にドカッと座った。
そしてこれまた乱暴に包みをバリッと外した所で、まずはスンスンと匂いを嗅ぐ。
何かちょっと可愛い仕草だ。
が、そんな風に警戒しておきながら、食べる時は大口で思い切り被り付いた。
そして無言のままモグモグと咀嚼する。
「……うん、まぁ、まぁまぁだな」
言いながら口元に付いたクリームを親指で拭ってペロリと舐めるその仕草は、食べっぷりと時々見える大きな牙も相まって、ちょっとワイルドっぽい。
が、ダメだよそれじゃぁ。
あぁほら尻尾が喜んでる喜んでる。
「どうやら気に入ったらしいな」と思いつつ「まだあるよ?」と言ってみると、無言で手がズイッと伸びてきた。
見れば顔はそっぽを向いてフンッと鼻を鳴らしているが、耳はこちらの動向をしっかり拾おうとしている。
私にはオオカミの生態とか良く分からないけど、犬と同じで良いんだとしたらこの尻尾と耳の動きを合わせて「こっちにめっちゃ興味津々」っていう事になっちゃうんだけど、それで良いのか神様よ。
そう思いつつ、私は「はい」とその手の上にシュークリームを配置した。
私も隣でティラミスにパクつきながら、彼を見る。
相変わらず「まぁまぁだな、まぁまぁ……」と言いながらそれでも食べる手が一向に止まる気配なく、尻尾も忙しそうな彼。
その姿に「何だかちょっと餌付けでもしている気分になってきた」と思ってしまうのは、一応人型の彼には失礼だろうか。
と、先程もチラリと見えてた牙もそうだけど、よく見れば手の爪だってかなり鋭い。
繊細そうな見た目をしてるからあまり思わなかったけど、耳や尻尾以外にも獣っぽい所があるらしい。
そんな認識を改めてして、私はふと「もしかしてこういう場合、『怖い』と思うのが普通なんだろうか」と思う。
しかし何故だろう。
最初に会った時から今まで、驚き困惑こそしたけれど一度だって彼を『怖い』と思った事は無い。
「何で怖いって思わないんだろう……?」
「それはお前の霊力のせいだろう」
鼻をフンッと鳴らしながら言った彼に、私はかなり驚いた。
「え、私口に出してた?」
「あぁガッツリな」
ちょっと居た堪れなくなって視線を落とせば、分かり易くその前にまた空の手がズイッと出された。
仕方が無いのでシュークリームの最後の一個をその手に乗せると、手は満足して戻っていく。
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