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第7話 家内安全を祈願したい(1)
しおりを挟む「お前に憑いてた昨日のアレがあそこまで大きくなったのも、今俺が視えてるのも、お前がアレを『悪いもの』だと直感できて俺をそう思えないのも、全部お前が持ってる霊力のせい」
「え、私そんなの無いよ?」
「あるわ。無けりゃぁそもそも俺はお前に視えないし、声だって聞こえないんだっつーの!」
分かんねぇヤツだなぁ、お前バカなの?
そう言いたげな目を向けられて、ちょっと私もムッとする。
「でもだって、今までこんな事無かったよ?」
「そりゃぁ今までは何か護法が働いてたんじゃねぇのか? 知らんけど」
護法。
そう言われて考える。
そして唐突に思い出した。
心霊や妖怪の類を全く信じない私は、普段からあまりお守りというものを身に着けない。
だけどたった一つだけ。
親指大の石だけは、肌身離さず持っていた。
それが私が上京する時に持たせてくれたものであり、結局そのままお祖母ちゃんの形見になってしまったものだから。
「でもあれ、貰ったのは6年前だし」
「それまでは実家済みだったんじゃないのか? それもそのばばぁも一緒に住んでいた」
「何でそれを……」
「で、体調に変化があった少し前に無くしでもしたか? その石を」
「それが、車に引かれて砕けちゃって。私は幸い危ない所を無傷だったんだけど……」
「その石が守ったんだろ。で、砕けて護法が失われて、そのせいで悪いモノが集まってきて体調に現れた」
言われてみれば、仕事が上手く行かなくなったもの体調に変化が現れたのもそれ以降の事である。
だけど何で体調の事なんて知ってるのか。
その事については何も言っていないのに。
「アレだけのもんが付いてりゃぁ体調が悪いくなって当たり前だ」
そう言われて驚いて彼の顔を見れば、ちょっと面倒臭そうに「顔に出てんだよ、思ってることが」と言われてしまった。
神様的な力で分かったのかとちょっと期待した私の気持ちを返してほしい。
「知らんわそんなの、勝手に言ってろ」
「ハッ! もしかして本当に……!」
「こんな事如きに心読むなんて神力使って、一体何になるんだっつぅの」
何だ違うのか。
っていうか、その神力?っていうのを使えば心読めるの?
何だ出来るんじゃん、流石は神様。
そう思ったら、彼に可哀想なモノを見たかのような感じで鼻で笑われた。
え、ちょっと今一体何に笑ったの?
っていうか、その反応流石にちょっと失礼過ぎない?
なんて思っている内に、彼がシュークリームを全て完食してしまった。
そしてそれに気付くのが一歩出遅れたせいで、私を横目で一瞥した事に「何?」と首を傾げてしまう。
しかし次の瞬間、目にも留まらぬ速さ何かが私の横を駆け抜けた――ような風圧があった。
気付けば私の手元は空で、隣には私の食べ掛けを機嫌よく食べる彼が居る。
取られた。
食いしん坊め。
そう思ってジト目でその様を眺めていると、彼はそれもすぐに食べ終えこんな事を言ってくる。
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