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寝落ちてしまったフィーリアは、一宿の恩を彼らに返す。

第6話 陽光の下、一宿の恩(2)

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 窓の拭き掃除なんて、最近は慣れた仕事だった。
 レイチェルさんから「そのくらいしか出来ないでしょう?」と言われ、私自身、彼女ほどの社交性も無ければ目立つ容姿という訳でもない自覚があったから、言い返す言葉もなく彼女に従い、使用人に混じってやるようになった。

 せめて裏方でくらいはザイスドート様のお役に立ちたいと、懸命に手を動かしていたが、思えばずっと何かに追われるように掃除をしていて、こんな風に綺麗になる過程を楽しんだ事は一度もなかった。

「お掃除って、こんなに楽しいものだったのね……」

 気付いてしまうと、一層拭き掃除が楽しくなってきた。

 窓の外の青空を見ながら、キュッキュ、キュッキュと拭き上げていく。
 清々しい。窓から見える空の青が一層鮮やかになっていく気がして、「空ってこんなに綺麗だったのね」という気付きさえも新しく得た。

 そうしてしばらく窓ふきに没頭していたが、後ろでモゾリと人の動く気配がして、意識が現実に引き戻された。

「……ん、まぶし」

 振り向けば、ちょうど茶色頭がむくりと起き上がったところだった。
 彼は、見るからに寝起きの寝ぼけ顔だった。迷惑そうに細めた目を光の射す方、つまりこちらへと向ける。

「あ、おはようございます」

 数秒間の無反応の後、ディーダがギョッと目を剥いた。身の危険でも感じたのか、座ったままで後ずさり、ダダンッと壁に背中をぶつける。

 その音でやっと目覚めたノインが「うるさい、ディーダ……」と目をこすった。彼も眩しかったのだろう。こちらを見て同じくギョッとして、そのまま固まってしまった。

 一体何が彼等をそうさせるのかよく分からないが、とりあえずは朝なのだから、相応の事をすべきだろう。

「おはようございます、お二人とも。もし宜しければ顔を洗って、食事を買いに行ってくれませんか? 私ではまだ店の場所も分かりませんし」

 二人が朝食を買いに行っている間に、私はもう少し部屋の掃除を進めておこう。
 今日は幸い天気が良いから、部屋の端に放り投げているあの布も、洗って干してしまいたい。それから室内のちりやほこりを外にすべて掃き出して……そういえば、箒はどこかにあったかしら。

 頭の中で、一人段取りを考えていると、依然として動かない彼等の方からグゥという音がした。
 本人よりも先に返事をしたお腹は一体どちらのお腹だったのだろうか。先に腰を上げたのはディーダ、面倒くさげに外へ出た彼に、クツクツと笑いながらノインが続く。

 外に出た二人が窓から見えた。何故か楽しげに笑うノインのお尻にディーダがキックをお見舞いしているが、朝から元気でなによりだ。
 
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