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31.初の獣人の客人
しおりを挟むリンジェーラは先に屋敷に帰り、父達が帰ってくるのを待った。予定の時刻になり、父は師団長と、ゾディアス様を連れて帰ってきた。
「おかえりなさい父様。フィラデル様、ゾディアス様お待ちしていました。中へどうぞ」
リンジェーラは父と師団長、ゾディアス様を出迎え、中へ案内する。
ゾディアス様はまだ嗅覚は戻られないようで、屋敷内でも平気そうにしている。普通なら気分が悪くなるだろうに・・・だが薬の効果が切れたらどうするつもりなのだろうか。
効果が切れる前に、話をつけておかなくてはとリンジェーラは考えながらゾディアス様に視線を向けた。
ゾディアス様はキョロキョロとあたりをみられており、リンジェーラと視線があうと、照れ臭そうにされる。
「すまないな、珍しくてつい・・・」
ゾディアス様は自分の行動に注意がくるのだろうと思っていたみたいで謝られる。
「謝る事はないですよ。ここに来た獣人はゾディアス様が初めてらしいので、普通の反応だと思います。薬が切れる前には話を終わらせましょう。でないと気分が悪くなりますからね」
リンジェーラはゾディアス様に苦笑いした。
そのまま夕食の準備がしてある部屋へ案内して、まずは食事を皆んなで食べた。ゾディアス様は慣れないが、味は美味いといい食べられている。嗅覚が戻れば、さらにおいしいと思うのだが残念だ。
嗅覚が戻れば、気分が悪くなり、食事どころではなくなるのだがそう思わずにはいられなかった。
食事が終わった後で、応接室に移動しフィラデル様が話し出す。
「それで、本題だが・・・今日の出来事で、既に噂が広まり出した。アルも聞いたんだろう?」
フィラデル様は、父に話を振る。
「ああ、聞いている。部下が噂を話してくれた。だが、魔導師団の団員達が訂正してたりするともね・・・。これはフィルの事前の説明のおかげだな。感謝するよ。うちの部下達はリンジーには既に相手がいる事に残念そうな感じだったよ。うちの部下達は若いのが多いからね」
父の部下達の中にもリンジェーラを誘ってくる人がいた。だが決してリンジェーラは誘いは受けても、2人きりになる事はしなかった。
「リンジーがいつも関わる人達からの理解は問題なさそうだが・・・問題は女性達だな。それと、関係が偽りだとしても2人はこれから夜会にはパートナーとして、必要時は参加してもらわないといけないからね。ゾディアス殿もそのつもりだろう」
これは聞いていたし、想定範囲内だ。
「それに関しては問題ないが・・・彼女は夜会にはあまり参加したくない様だ」
ゾディアス様に前に言われた時に、返事を嫌がる感じでしてしまったからだろう。ゾディアス様はリンジェーラの方を伺うように見てきた。
「なるべく必要のないものには出たくありません。ゾディアス様には毎回薬を飲んで頂かなくていけませんし、パートナーがゾディアス様なのが嫌とかではなくて・・・夜会に行くと他の男性ともダンスを踊らないといけないのが嫌なだけです」
男性と踊ると、身体に触れられるため不快になる・・・。獣人は匂いもあるから近づいてはこないが、人族は違う。リンジェーラが、不快になる視線を向けてきたり、触れてきたりと、貴族令嬢にはしないだろう事をされるので嫌いだった。
リンジェーラの血筋はきちんと貴族なのだが、市井で生活をしていたというのは知られているため、手が出せる存在、軽く扱っても問題ないと思う人が多かった。だから極力夜会には参加していなかったのだ。
父や兄がパートナーでも、誘われたら基本断れない。婚約者か獣人がパートナーであれば、婚約者や獣人が優先されるため断る事が出来るのだ。
「ならば、今回は問題ないだろう・・・独占欲という事で、誘われたら自分が間に入る。もちろん誰が誘ってきてもだ。だが、俺と踊るのは我慢してくれ」
ゾディアス様はリンジェーラに苦笑いしながら言ってくる。
「ゾディアス様の視線や行動が、不快なのでなければ・・・我慢いたします」
リンジェーラはにっこりと、ゾディアス様に笑顔をむけ、ゾディアス様は努力すると了承されるのだった。
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