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30.皆んなは味方
しおりを挟む師団長は、皆んなに忠告するように・・・ゆっくりと静かに話しだす。
「だから、皆んなには、話しておきたいと思う。数刻前に起きた出来事を・・・」
師団長は、騎士団のメンバーとの流れを話しだした。そして騎士団副長のゾディアス様が助けに来てくれたと・・・。だが実は、ここにリンジェーラが通い出す前から面識があり、既にゾディアス様にリンジェーラは男女の関係にさせられていたと・・・。
させられていたと言う言い方にリンジェーラは眉をひそめる。まるで襲われたみたいではないか・・・本当はそんな事実すらないというのに、師団長が話す内容はゾディアス様が悪者になってしまうようで、なんだが嫌だった。
そして、独占欲が強いゾディアス様のためにリンジェーラは、獣人に嫌われる匂いをまとうようになったのだ、と締めくくった。
団員達は驚いた顔をしていたが、リンジェーラに向けてくる視線に嫌悪感や、悪意は感じなかった。
むしろ、皆んなが口々に話し出したのは、あの副長も男だったんだなと、暢気なものだった。
「これから流れる噂は恐らく、このことに関わった騎士団のメンバーが発信源になるだろうからな・・・。この事実がどのように歪められるかわかったものではない。だから、皆が噂に惑わされる前に真実を話しておこうと思ったのだ」
団長の話が終わると皆んなは、口々にリンジェーラに自分達は味方だと言ってくれた。仲には好意をよせてくれていただろう人も軽蔑した様な感じでもなく、応援するとまで言われた。
副長なら諦めがつくと・・・。なぜ皆んなゾディアス様に対しては寛大というか、見守る目線なのか不思議だった。
ラミアさんが、リンジェーラの側にきて、副長について話してくれる。
「副長は上位種の獣人なのに、他とは違って女性の噂も聞かないし本当に一匹狼気質みたいだったから・・・気にしてたんだよ。私らにも人族だからと横柄な態度は取らないし、見かけは屈強でも実際は優しくて、分け隔てなく接してくれる人だからね。騎士団と魔導師団の仲はいいとは言えないから、リンジーちゃんが来るまでもいろいろといざこざがあって、そのたびに副長が間に入ってたのさ。リンジーちゃんが絡まれるたびに、副長が間に入るのと同じようにね」
ラミアさんが、リンジェーラが絡まれた際に副長が現れるのを知っていた様だ。そして、もとからよくあった事だと教えてくれた。
「そんな副長がリンジーちゃんの相手なら、皆んな応援するさ。他の女性たちがリンジーちゃんに絡んできても、選ばれたのは自分だと堂々としてたらいい」
ラミアさんは堂々とと言ったが、事実でもなく、男女の仲でもないため、出来るだろうかと不安になるのだった。
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