未来の死神、過去に哭く

とある病室。
美しい死神の目の前には、衰弱しきったある青年の姿があった。
世界の理によって、彼女は彼の命を刈り取らなければならない。
しかし死神は、初対面であるはずの彼のことをなぜか知っていた。
なぜか愛していた。
だから死神は、自身の存在を犠牲にして奇跡を起こす。

過去に行き、彼の音楽の才能を奪う。
彼の音楽の才能が、彼を孤独にした。
世界は孤独となった者から命を奪う。
天才ピアニストとして脚光を浴びていた彼は、しかしその才能に溺れて孤独となってしまった。
そうであるなら、音楽の才能を奪えば彼は普通の少年として暮らしていける。
そう確信して、死神は過去に戻り大鎌を振るう。
それが悲劇の始まりになるとも知らないで……。
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