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旅路 〜カプリース・天空の王〜
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スカイヤの白亜の宮殿は今や、互いの怒りがぶつかり合う場となっていた。
これまでも幾度として聞いたリュオンを“邪神”と呼ぶ彼らの信仰がブレる事はなさそうだ。
彼らは目の前の大きな純白のドラゴンに気を取られて気がついていなかった。
この場には、もう1匹の神獣がいる事を・・・。
『言ったな・・・僕の前でリュオン様の悪口を言った。』
怒りの感情に気づいたイオリが振り返ると、ゼンが美しい純白の毛並みを逆立てていた。
『リュオン様は言った。
お前ら“エルフの里”も愛する世界の一部であると。
どんなにお前らが世界を嫌っても、世界がお前らを嫌っても、リュオン様にとって全て同じ愛を注ぐ存在なんだ!
それを・・・それを・・・。』
アオォォォン!!!
空にゼンの遠吠えが響き渡り、空気を震わせていく。
巨体に変化したゼンの周囲には強い風の渦が生まれていた。
その迫力に“エルフの里の戦士”達も後退る勢いだ。
「無遠慮に力を得た化け物がっ!
ルミエール様の手土産に丁度良い。
この私が狩ってやろう。」
ガルゥゥゥ!
槍を構える男にゼンが右の前脚に暴風を纏わせ襲いかかった。
「ゼン!!」
イオリの叫びがゼンに急ブレーキを掛けた。
「リュオン様の名誉を守る理由を、自分の怒りで誤魔化してはいけないよ。
戻っておいで。」
優しく嗜めるイオリの声にゼンが情けない顔で振り返った。
『・・・イオリ。
でもさぁ。』
「手を出すなとは言わないよ。
でも、我を忘れ怒ったまま戦うのは違うと思う。」
手を差し出すイオリに頷くとゼンがトボトボと帰ってきた。
『フン。
大人なこったな。小僧よ。』
スカイヤが小馬鹿にした様に笑う中、背を向けたゼンに“エルフの里の戦士”の男が襲いかかる。
ドンッ!
「ギャァァァ!!」
拳銃を構えたイオリが“エルフの里の戦士”達を見据えていた。
「さっきはゼンに、あんな風に言いましたが、リュオン様への暴言を許すつもりはありませんよ。」
イオリの放った弾丸に撃ち抜かれた男は頭を押さえて、のたうちまわっている。
「まぁ、気に入らんわな。
俺は別に神がいるとか、どうとか分からんがゼンを背後から襲う奴を気遣う心は持ち合わせてない。」
首をコキコキと鳴らすと、ヒューゴは片手でブンブンと大剣を振り回した。
「オレはイオリとの出会いを絶対神に感謝してる。」
「パティも。」
スコルはフードを被り、パティは結んでいた髪をギュッと締めた。
「美しい世界を創った絶対神が悪い人な訳ないもんね。」
ニナが掲げる杖に様々な色の光が集まっていく。
「強さ。才能。崇拝。権利・・・。
“エルフの里”の人は生きる理由を探しているけど、生命あるものは全てにおいて自由に生きて良いんだよ。
ダークエルフの為に生きるんじゃなくて、自分達の為に生きて良いんだ。」
かつての故郷の住人達を前にナギは哀れみを感じていた。
ナギの言葉に苛立ちを隠さない“エルフの里の戦士”にヴァルトが溜息を吐いた。
「“エルフの里”に生まれた宿命には同情する。
しかし、これまで一度でも自分達の頭で考えた事はあったか?
お前達はダークエルフの付属ではない。
世界を知れば、子供でも分かる事だ。」
「考えた事がないから、アホ共なんだろう。」
面倒くさそうなマルクルの肩をトゥーレが叩いた。
「なんて言い草ですか。
まぁ、同感です。」
そうして、戦いのゴングが鳴り響いた。
これまでも幾度として聞いたリュオンを“邪神”と呼ぶ彼らの信仰がブレる事はなさそうだ。
彼らは目の前の大きな純白のドラゴンに気を取られて気がついていなかった。
この場には、もう1匹の神獣がいる事を・・・。
『言ったな・・・僕の前でリュオン様の悪口を言った。』
怒りの感情に気づいたイオリが振り返ると、ゼンが美しい純白の毛並みを逆立てていた。
『リュオン様は言った。
お前ら“エルフの里”も愛する世界の一部であると。
どんなにお前らが世界を嫌っても、世界がお前らを嫌っても、リュオン様にとって全て同じ愛を注ぐ存在なんだ!
それを・・・それを・・・。』
アオォォォン!!!
空にゼンの遠吠えが響き渡り、空気を震わせていく。
巨体に変化したゼンの周囲には強い風の渦が生まれていた。
その迫力に“エルフの里の戦士”達も後退る勢いだ。
「無遠慮に力を得た化け物がっ!
ルミエール様の手土産に丁度良い。
この私が狩ってやろう。」
ガルゥゥゥ!
槍を構える男にゼンが右の前脚に暴風を纏わせ襲いかかった。
「ゼン!!」
イオリの叫びがゼンに急ブレーキを掛けた。
「リュオン様の名誉を守る理由を、自分の怒りで誤魔化してはいけないよ。
戻っておいで。」
優しく嗜めるイオリの声にゼンが情けない顔で振り返った。
『・・・イオリ。
でもさぁ。』
「手を出すなとは言わないよ。
でも、我を忘れ怒ったまま戦うのは違うと思う。」
手を差し出すイオリに頷くとゼンがトボトボと帰ってきた。
『フン。
大人なこったな。小僧よ。』
スカイヤが小馬鹿にした様に笑う中、背を向けたゼンに“エルフの里の戦士”の男が襲いかかる。
ドンッ!
「ギャァァァ!!」
拳銃を構えたイオリが“エルフの里の戦士”達を見据えていた。
「さっきはゼンに、あんな風に言いましたが、リュオン様への暴言を許すつもりはありませんよ。」
イオリの放った弾丸に撃ち抜かれた男は頭を押さえて、のたうちまわっている。
「まぁ、気に入らんわな。
俺は別に神がいるとか、どうとか分からんがゼンを背後から襲う奴を気遣う心は持ち合わせてない。」
首をコキコキと鳴らすと、ヒューゴは片手でブンブンと大剣を振り回した。
「オレはイオリとの出会いを絶対神に感謝してる。」
「パティも。」
スコルはフードを被り、パティは結んでいた髪をギュッと締めた。
「美しい世界を創った絶対神が悪い人な訳ないもんね。」
ニナが掲げる杖に様々な色の光が集まっていく。
「強さ。才能。崇拝。権利・・・。
“エルフの里”の人は生きる理由を探しているけど、生命あるものは全てにおいて自由に生きて良いんだよ。
ダークエルフの為に生きるんじゃなくて、自分達の為に生きて良いんだ。」
かつての故郷の住人達を前にナギは哀れみを感じていた。
ナギの言葉に苛立ちを隠さない“エルフの里の戦士”にヴァルトが溜息を吐いた。
「“エルフの里”に生まれた宿命には同情する。
しかし、これまで一度でも自分達の頭で考えた事はあったか?
お前達はダークエルフの付属ではない。
世界を知れば、子供でも分かる事だ。」
「考えた事がないから、アホ共なんだろう。」
面倒くさそうなマルクルの肩をトゥーレが叩いた。
「なんて言い草ですか。
まぁ、同感です。」
そうして、戦いのゴングが鳴り響いた。
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