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旅路 〜カプリース・天空の王〜
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しおりを挟むーーー苦心の末に隠し葬ることになったのだ。
そこまで言ってスカイヤが、突如として口を噤んだ。
バリバリバリッ!
彼が睨みつけた青天の空には平穏な時間に終止符を打つ稲妻が走った。
雷と共に降り立ったのは10人の“エルフの里”の戦士だった。
『厄介者達めが嗅ぎつけて来おったか。』
お茶会を邪魔され、不機嫌な“天空の王”を相手にしても、ガチガチと歯を鳴らし馴染みの威嚇をする“エルフの里の戦士”達だ。
その目は血走り、今にも襲いかかって来そうな勢いだった。
素早く反応したのはイオリ達も同じで、各々が武器を手に取り敵を前に構え、白亜の宮殿は一触即発の状態になった。
10人の“エルフの里の戦士”の中から1人の男が前に出て来た。
「我らが光“ダークエルフ・ルミエール”様の愛剣を渡せ。
あれは我らの物だ。」
旅の間に出会った“エルフの里の戦士”の中には無口だったりカタコトだったりと武力はあっても知性の部分が育ってない者達もいた。
しかし、目の前に進み出てきた男は、どうやら言葉を流暢に話しスカイヤだけではなく、イオリ達をも注意深く観察していた。
『知らんなぁ。』
惚けるスカイヤは馬鹿にした様に鼻で笑い、男の後に並んだ“エルフの里の戦士”達の怒りを煽っていた。
ガチガチガチ
“エルフの里の戦士”達の威嚇の歯軋りが激しくなる。
「穢らわしい獣め。」
男は吐き捨てる様にスカイヤを睨みつけた。
「何と不遜な・・・。
スカイヤ様は絶対神リュオン様より神獣として認められた神聖な存在。
無礼は許されません。」
トゥーレが顔を強張らせると、男のギラリとした瞳に睨まれた。
「愚かな人族め。
コレは、邪神が寄越した穢れ呪われた獣だ。」
獣と揶揄られてもスカイヤはケラケラと笑った。
『殻に籠る田舎者には、世界の神秘など理解は出来まいよ。
阿呆共が。
たった1人の怨念に取り憑かれよって。』
「あの方は滅んでなどいない!
完璧な生命体こそが、我らが光だ。」
吠える男にスカイヤは疲れた様に首を振った。
『だったら何故、本人が出向いて来んのだ?
お前らの力を借りて本人は見窄らしく隠れておるではないか。
カッカッカ!』
ドンッ!
スカイヤの顔を炎が掠めた。
『ほーう。』
スカイヤが目を細めて睨みつけると、槍を構えた男がコメカミに太い血管を浮かび上がらせて、短い呼吸を繰り返していた。
「邪神に魅入られた穢らわしい獣め。
お前があの方の剣を隠し持っている事くらい分かっている。
獣には無用な物だ。引き渡せ!」
崇拝するルミエールを馬鹿にされ激昂する“エルフの里の戦士”達を前にイオリ達の警戒心も上がっていく。
そんな時だった。
背筋を凍らせるには十分なフェンリルの低い声が聞こえた。
『リュオン様が邪神・・・?
何で?』
振り返ったイオリ達が見たのはゼンが口から煙を吐き出しながら“エルフの里の戦士”達を睨め付けている姿だった。
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