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旅路 〜グランヌス・王宮〜

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「旅日記・・・クハハハハ!!」

 お腹を抱えて笑う国王トウカ・ノブタカ・ショーグンはイオリが思っているよりも無口ではないようだ。
 
「我も幼少の頃に、ここに忍び込んで読んだ時に同じように思ったものだ。
 大将軍と崇められてる男の話というから、どんな大冒険が書かれているかと胸躍らせていたのにガッカリしたのを覚えている。
 期待した後に事実を知れば呆気ないものだ。」

 今だに笑いが止まらないのか、肩を震わせる国王に宰相が冷めた視線を向けた。

「執務室から逃げ出して来たのですね?」

 国王にとって乳兄弟の宰相は無礼を働いても許される数少ない人物だった。

「ケンショーよ、そう言うな。
 大将軍については我も興味がある。
 特に今代の“神の愛し子”から話を聞けるなど貴重だろう。」

 反省の意思のない国王に溜息を吐き、折れた宰相は主人の為に椅子を引いた。

「それで、どうなんだ?
 アースガイルでも大将軍の話は聞いたんだろう。」

 目を煌めかせた国王はヒーローの話を聞きたがる少年のようだった。

「俺がアースガイルで教えてもらったのは初代国王マテオ・アースガイルの回顧録です。
 マテオさんと十蔵さんの出会いから国を造りに至った経緯が書かれていました。
 国王にならアルさんも教えてくれるかもしれませんよ。」

「アル・・・アルフレッド殿の事か?
 よし。
 我の事もノブタカと呼べ。」

 悪い事を思いついたようにニヤける国王に宰相が頭を抱えた。
 それでも、国王の我儘が覆る事はないと知っている宰相は困っているイオリに頷いてみせた。

「それなら、アースガイルにある回顧録の方が大将軍の活躍を知る事ができるな。
 我が国にあるのは、先人達の主観が強くて虚構な話になっているものが多い。
 大将軍ジュウゾウを知る上で、公平性がないんだ。」

 ノブタカの言葉は、いかにグランヌスの先人達がジュウゾウを敬愛していたかが窺えた。

「それでしたら、十蔵さんが築いた砦を元に作られたグダスクという街の領主と連絡を取られたら如何ですか?
 領主であるオーエンさんもアルさんからマテオ・アースガイルの回顧録を聞かされて、十蔵さんの人生を研究しているんです。
 グランヌスが持っている十蔵さんの情報に興味があるはずですよ。」

「それは、早速お手紙を書きましょう。」

 アースガイルにも同志がいて嬉しさを隠さないケンショー・オオスギは目的の書簡を見つけ出した。

「火山の土地に根を下ろした我らが祖先が残した大将軍が滞在された時の記録です。
 温泉の価値を見出してくれたのも大将軍だそうですよ。」

 イオリや十蔵の世界には古来から温泉が重宝されてきた。
 十蔵が湯気立つ池に心を沸かせたのは想像に難くない。

 温泉掘りに苦戦する侍の姿を想い、イオリはクスクスと笑った。
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