続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜グランヌス(渓谷・渓流)〜

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「そう言えば、王妃様は体調を崩され後宮に閉じこもっているのでは?」

 そこまで黙って聞いていたヒューゴが思い出したように眉を顰めた。

 それにはムネタカは苦笑しながら頷いた。

「対外的に、そう見せているんです。
 後宮は母を筆頭に隠密の巣窟です。
 現在の宮殿内で後宮ほど安全な場所はありません。
 国を出る時に挨拶をした母は、姫巫女の術中にハマった父を《情けない愚か者》と鼻で笑っていました。
 ・・・ただ、その目は悲しんでおいででしたよ。」

 夫を心配する母の気持ちを想いムネタカは溜息を吐いた。

「妹達が取られた失態も母の気持ちを沈ませているのです。
 母は何とか、私だけでも国から出そうと苦心しておいででした。」

 母の愛に疎いヒューゴも、悲しそうに目を伏せた。
 気持ちを取り戻そうとしたのだろう。
 ムネタカは思い出したように、家族の話を続けた。

「母と側室のアオイ殿は幼き頃より隠密として訓練を共にした義姉妹です。
 実は、母が王妃となる事に反対したのは祖父よりもアオイ殿でした。
 しまいには、アオイ殿は父に決闘と申し込んだそうです。」

「・・・決闘?」

 キョトンとする、イオリとヒューゴにムネタカは笑った。

「我が国は強者こそ正義。
 もし、その決闘でアオイ殿が父に勝っていたらアオイ殿が王になって、母の輿入れの話は消滅していた事でしょう。」

「それはそれは・・・。」

「シンプルなルールだな。」

 イオリとヒューゴが呆れた様に笑うとムネタカも頷いた。

「結果はアオイ殿の惨敗だったそうです。
 その後、父は掻っ攫うように母と結婚しました。
 聞こえは悪いですが、楽しそうに話す母を見ていれば、恐らく母も満更ではなかったと思いますよ。
 母が嫁いだ翌年には私、その3年後に妹が生まれましたが、側室を求める声がやまず、苛立った父が側室の選択を母に一任したのです。
 すると、母が選んだのがアオイ殿だったのです。
 反目しあっていた父とアオイ殿でしたが、母が取り持つ事で弟と妹を授かりました。
 一番に喜んだのは母でした。
 妹の様に可愛がるアオイ殿と本当の家族になれたのですから。
 現在もアオイ殿は父よりも母を優先させます。
 王と側室で王妃を取り合っているのですよ。」

 家族を語るムネタカは実に楽しそうだった。

「私は家族を取り戻したいのです。
 まだ、幼い異母弟と異母妹・・・そして血を分けた妹・シオンを母たちの手に返してやりたい。
 恐らく“魅了”から解放された父は気まずそうに母と茶を飲みながら、アオイ殿に叱咤される事でしょう。」

 その日を夢見ながら、ムネタカは国を目指しているのだ。

「取り返しましょう。」

 珍しくヒューゴが熱い言葉を吐いた。

「何か、だんだん腹立ってきた。
 他人に迷惑をかける奴は嫌いだ。」

 乱暴に焚き火に薪を焚べたヒューゴにムネタカは驚いたようだった。

「フフフ。
 そうですね。
 別に“神の愛し子”と言う物に執着はないんですが、ゼンが怒ってるんで俺も頑張ります。」

 自分の事の様に起こるヒューゴと密かに気合いを入れるイオリに涙を堪えながら頭を下げたムネタカだった。 

 
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