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旅路〜グランヌス(渓谷・渓流)〜
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「ヨイショっ!」
「まだまだ。」
「おりゃっ!」
「はい。右がガラ空き~。」
朝から元気な声が聞こえてきた。
昨日の雨と打って変わって、雲1つない空に太陽が登り始めていた。
「あっ!
ロク、ズルいー。
パティ分かってたもん!」
「戦闘中はズルい奴が勝つんですぅ~。」
俊敏なパティの双剣をロクがニコニコしながらナイフで捌いていた。
「パティは素直なんだよ。
顔に出ちゃってんの。
魔物相手なら問題ないけど、対人相手ならスピードで誤魔化せない事もあるよ。」
「むぅぅ。
分かった。」
「ほら、素直。
でも、素直な子は成長も早い。
王妃様が好きなタイプだ。」
ロクに頭を撫でられるとパティは嬉しそうに口を緩ました。
「あっちはどうかな・・・。」
視線の先には剣を構えて睨み合うスコルとムネタカの姿があった。
ピクリとも動かない2人の剣を朝陽の光が反射した。
「スコルが動く。」
パティが呟くのと同時の事だった。
突きの構えで襲いかかるスコルをムネタカが避けると、スコルは中断に構えた刀を切り上げた。
剣の切先がムネタカの髪をかすると再び2人がピタッと止まった。
ダンスを踊るようなパティとロクの戦いと比べ2人の立ち合いは静と動の緩急が激しかった。
「うん。
目が良いな。
刀の戦いは間合いが大切だ。
攻撃を受けた時、どれだけ近くで避けられるか、そして相手よりも素早く構え攻撃を仕掛ける事が出来るのか・・・。
例えば・・・こうだ。」
ムネタカはスコルの胸ぐらを掴むと乱暴に押し放し、自身の刀を首筋に当ててみせた。
唖然としていたスコルも、自分の負けを確信すると悔しそうに頬を膨らました。
「フフフ。
普段の稽古で刀の型を美しく鍛錬するのも良いが、実際には死に物狂いの相手が自分の望み通りに襲ってくるとは限らない。
時には強引に自分の間合いに引き込む事も大切だ。」
「今のはムネタカにとって近すぎたって事?」
「そうだな。
あの間合いでも攻撃は出来ぞ。
ただ、今の方が分かりやすいだろう。
いくら剣技が素晴らしくとも、今のスコルなら体当たりされれば体勢を崩してしまう。
問題の解決の為に体を鍛えれば筋肉が付き良いと思う。
しかし、今度は体が重くなり今までの戦い方が出来なくなるぞ。」
「・・・難しいな。
オレはパティと共闘するのが当たり前だから、スピードが大切なんだ。」
考え込むスコルをムネタカは微笑んだ。
「私もそうだった。
修行中は周りの大人に振り回されたよ。
いくら人に教えられても、結局は自分の戦い方は自分で見つけるしかないのだ。
鍛錬とは鍛える事。
修行とは己を追求する事。」
「鍛錬とは鍛える事。
修行とは己を追求する事。」
ムネタカに言われた事を繰り返すとスコルは真剣な顔で頷いた。
「強くなると言うのは孤独になる事ではない。
それはイオリさんを見ていれば分かるだろう。
スコルにはパティがいるのだから共に強くなれば良い。」
「うん。
ムネタカ、ありがとう。」
剣を鞘に収めるとスコルはニコリとした。
そこにヌッと大きな影がさした。
「おい。
朝ご飯の時間だってよ。」
振り返った4人が見上げれば、汗をかいた上半身が朝日を浴びて輝いているヒューゴが大剣を担いで岩に立っていた。
「その前に、お風呂に入ったら?」
スコルが声をかけるとヒューゴがニカっと笑う。
「だな。」
気配もなく汗だくになるまで大剣を振り続けていたヒューゴにムネタカとロクは驚愕しながらも双子に背を押さ洞穴に戻るのだった。
「まだまだ。」
「おりゃっ!」
「はい。右がガラ空き~。」
朝から元気な声が聞こえてきた。
昨日の雨と打って変わって、雲1つない空に太陽が登り始めていた。
「あっ!
ロク、ズルいー。
パティ分かってたもん!」
「戦闘中はズルい奴が勝つんですぅ~。」
俊敏なパティの双剣をロクがニコニコしながらナイフで捌いていた。
「パティは素直なんだよ。
顔に出ちゃってんの。
魔物相手なら問題ないけど、対人相手ならスピードで誤魔化せない事もあるよ。」
「むぅぅ。
分かった。」
「ほら、素直。
でも、素直な子は成長も早い。
王妃様が好きなタイプだ。」
ロクに頭を撫でられるとパティは嬉しそうに口を緩ました。
「あっちはどうかな・・・。」
視線の先には剣を構えて睨み合うスコルとムネタカの姿があった。
ピクリとも動かない2人の剣を朝陽の光が反射した。
「スコルが動く。」
パティが呟くのと同時の事だった。
突きの構えで襲いかかるスコルをムネタカが避けると、スコルは中断に構えた刀を切り上げた。
剣の切先がムネタカの髪をかすると再び2人がピタッと止まった。
ダンスを踊るようなパティとロクの戦いと比べ2人の立ち合いは静と動の緩急が激しかった。
「うん。
目が良いな。
刀の戦いは間合いが大切だ。
攻撃を受けた時、どれだけ近くで避けられるか、そして相手よりも素早く構え攻撃を仕掛ける事が出来るのか・・・。
例えば・・・こうだ。」
ムネタカはスコルの胸ぐらを掴むと乱暴に押し放し、自身の刀を首筋に当ててみせた。
唖然としていたスコルも、自分の負けを確信すると悔しそうに頬を膨らました。
「フフフ。
普段の稽古で刀の型を美しく鍛錬するのも良いが、実際には死に物狂いの相手が自分の望み通りに襲ってくるとは限らない。
時には強引に自分の間合いに引き込む事も大切だ。」
「今のはムネタカにとって近すぎたって事?」
「そうだな。
あの間合いでも攻撃は出来ぞ。
ただ、今の方が分かりやすいだろう。
いくら剣技が素晴らしくとも、今のスコルなら体当たりされれば体勢を崩してしまう。
問題の解決の為に体を鍛えれば筋肉が付き良いと思う。
しかし、今度は体が重くなり今までの戦い方が出来なくなるぞ。」
「・・・難しいな。
オレはパティと共闘するのが当たり前だから、スピードが大切なんだ。」
考え込むスコルをムネタカは微笑んだ。
「私もそうだった。
修行中は周りの大人に振り回されたよ。
いくら人に教えられても、結局は自分の戦い方は自分で見つけるしかないのだ。
鍛錬とは鍛える事。
修行とは己を追求する事。」
「鍛錬とは鍛える事。
修行とは己を追求する事。」
ムネタカに言われた事を繰り返すとスコルは真剣な顔で頷いた。
「強くなると言うのは孤独になる事ではない。
それはイオリさんを見ていれば分かるだろう。
スコルにはパティがいるのだから共に強くなれば良い。」
「うん。
ムネタカ、ありがとう。」
剣を鞘に収めるとスコルはニコリとした。
そこにヌッと大きな影がさした。
「おい。
朝ご飯の時間だってよ。」
振り返った4人が見上げれば、汗をかいた上半身が朝日を浴びて輝いているヒューゴが大剣を担いで岩に立っていた。
「その前に、お風呂に入ったら?」
スコルが声をかけるとヒューゴがニカっと笑う。
「だな。」
気配もなく汗だくになるまで大剣を振り続けていたヒューゴにムネタカとロクは驚愕しながらも双子に背を押さ洞穴に戻るのだった。
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