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旅路〜パライソの森3〜
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ジュ~ ジュ~
肉の油が滴り落ち、芳醇な香りが辺りを包み込む。
「お腹すいたぁ。」
食いしん坊のパティが美少女という外見を忘れヨダレを啜る。
「パティ、お行儀悪い。」
双子の片割れのスコルが諌めるとパティは頬を膨らます。
「だって、我慢できないんだもん。」
「じゃあ、これでも食べて待ってなよ。」
パティは差し出された人参スティックを不満気に受け取りながらも、ポリポリと音を立てて食べた。
「狼の娘程ではないが、何とも空腹を刺激する匂いだ。
腹が減って堪らん。」
タイソンがお腹を抑えながら、果実水を一気に煽った。
焚き火の上には網が並び、ハーブやスパイスをブレンドしたオイルに漬けられていたオークの肉が香ばしい匂いを立ち込めさせている。
ルーシュピケを出発する前にイオリが特製のマリネオイルを作り仕込んでおいたのだ。
「もう、そろそろ出来ますよ。」
イオリがテーブルに並べたのはたっぷりと野菜が入ったスープだった。
クタクタに煮えたイオリの野菜スープは子供達も大好きだ。
お肉を頬張り、優しい野菜のスープでさっぱりさせるのだ。
「米も炊けたぞ。」
ヒューゴが土鍋を開ければ、ほんのり甘い香りが鼻をくすぐる。
「こっちも良いよ。」
次々とオーク肉を皿に盛り付けていくスコルは汗だくだ。
全ての料理が準備できると、一同が期待を込めてイオリを見つめた。
「どうぞ。
召し上がれ。」
イオリの合図に一斉にオーク国に手が伸びる。
「おいしぃー!!」
「美味い!」
パティが叫ぶと負けじとタイソンが叫ぶ。
「はぁ・・・美味しい。」
「うん。良い味だ。」
野菜スープにうっとりとするエルフの夫婦は肩を寄せ合って微笑み合っている。
「なんだこれ。」
黄色い塊をフォークに刺し、凝視しクンクンと匂いを嗅いだロクにニナの可愛い声が教えてくれた。
「厚焼き卵だよ。
甘くて、しょっぱくて、ホワホワしてて凄い美味しいよ。」
「イオリの厚焼き卵は最高だよ。
まだオレは上手に巻けないんだ。」
悔しそうなスコルをイオリが微笑んだ。
「練習あるのみ。」
「絶対に綺麗な厚焼き卵を作れるようになってやる。」
真剣なスコルに、些か驚きながらもロクは厚焼き卵を口にした。
「んー!!」
「美味しいでしょ。」
楽しげなニナにロクは目をキラキラして無言で何度も頷いた。
そしてムネタカをつっつき、厚焼き卵を指差し、「食え」と促した。
「どれどれ。」
ムネタカが厚焼き卵を食べ、ロクと同じように無言で目を煌めかせると子供達は大笑いした。
満天の星が森の中の晩餐を見守っている中、美味しそうに食べる旅の仲間をイオリは嬉しそうに微笑んだ。
「さぁ、じゃんじゃん食べて、ぐっすり眠りましょう。
明日も、よろしくお願いします。」
“グランヌス”への旅は始まったばかり、英気を養う彼らを森の主人が、どこかで見守っているだろう。
肉の油が滴り落ち、芳醇な香りが辺りを包み込む。
「お腹すいたぁ。」
食いしん坊のパティが美少女という外見を忘れヨダレを啜る。
「パティ、お行儀悪い。」
双子の片割れのスコルが諌めるとパティは頬を膨らます。
「だって、我慢できないんだもん。」
「じゃあ、これでも食べて待ってなよ。」
パティは差し出された人参スティックを不満気に受け取りながらも、ポリポリと音を立てて食べた。
「狼の娘程ではないが、何とも空腹を刺激する匂いだ。
腹が減って堪らん。」
タイソンがお腹を抑えながら、果実水を一気に煽った。
焚き火の上には網が並び、ハーブやスパイスをブレンドしたオイルに漬けられていたオークの肉が香ばしい匂いを立ち込めさせている。
ルーシュピケを出発する前にイオリが特製のマリネオイルを作り仕込んでおいたのだ。
「もう、そろそろ出来ますよ。」
イオリがテーブルに並べたのはたっぷりと野菜が入ったスープだった。
クタクタに煮えたイオリの野菜スープは子供達も大好きだ。
お肉を頬張り、優しい野菜のスープでさっぱりさせるのだ。
「米も炊けたぞ。」
ヒューゴが土鍋を開ければ、ほんのり甘い香りが鼻をくすぐる。
「こっちも良いよ。」
次々とオーク肉を皿に盛り付けていくスコルは汗だくだ。
全ての料理が準備できると、一同が期待を込めてイオリを見つめた。
「どうぞ。
召し上がれ。」
イオリの合図に一斉にオーク国に手が伸びる。
「おいしぃー!!」
「美味い!」
パティが叫ぶと負けじとタイソンが叫ぶ。
「はぁ・・・美味しい。」
「うん。良い味だ。」
野菜スープにうっとりとするエルフの夫婦は肩を寄せ合って微笑み合っている。
「なんだこれ。」
黄色い塊をフォークに刺し、凝視しクンクンと匂いを嗅いだロクにニナの可愛い声が教えてくれた。
「厚焼き卵だよ。
甘くて、しょっぱくて、ホワホワしてて凄い美味しいよ。」
「イオリの厚焼き卵は最高だよ。
まだオレは上手に巻けないんだ。」
悔しそうなスコルをイオリが微笑んだ。
「練習あるのみ。」
「絶対に綺麗な厚焼き卵を作れるようになってやる。」
真剣なスコルに、些か驚きながらもロクは厚焼き卵を口にした。
「んー!!」
「美味しいでしょ。」
楽しげなニナにロクは目をキラキラして無言で何度も頷いた。
そしてムネタカをつっつき、厚焼き卵を指差し、「食え」と促した。
「どれどれ。」
ムネタカが厚焼き卵を食べ、ロクと同じように無言で目を煌めかせると子供達は大笑いした。
満天の星が森の中の晩餐を見守っている中、美味しそうに食べる旅の仲間をイオリは嬉しそうに微笑んだ。
「さぁ、じゃんじゃん食べて、ぐっすり眠りましょう。
明日も、よろしくお願いします。」
“グランヌス”への旅は始まったばかり、英気を養う彼らを森の主人が、どこかで見守っているだろう。
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