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旅路〜ルーシュピケ2〜

500〜記念〜 一方、その頃

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 朝の日差しに力が増し始めた頃、1人の男が机に向かい険しい顔を浮かべていた。

「・・・分かりました。
 許可します。
 こちらもミズガルドとデザリアに連絡を取りましょう。
 イオリ達の事・・・引き続き頼みます。」

 通信を切るとグレン・ターナーは深い溜息を吐いた。

 アースガイルという国で宰相という重積を担うこの男は、日々目まぐるしく襲う問題を涼しい顔でこなしていく。

 それでも、今回もたらされた情報は最大級の面倒事だった。

 疲れた顔に仮面を被り、部屋を出たグレン・ターナーに行き交う人達が挨拶をする。

 目的の部屋に着き、衛兵が扉を開けると彼が主人と崇める男が難しい顔で考え込んんでいた。

「・・・何してるんです?」

 冷え切った家臣の声にも気づかずに国王アルフレッド・アースガイルは目の前に並ぶ皿から目を逸らさずに問いかけた。

「グレンよ。
 クッキーとプリン・・・お前なら、どちらから食べる?」

 実に真剣な国王を見下ろしたグレン・ターナーは徐にクッキーを鷲掴み口に含むと殺気の籠った目で唖然とする国王を見下ろした。

「これで悩む事なくプリンを食べられますね。」

 泣きそうな国王に持っていた資料を押し付けるとグレン・ターナーは椅子にドカッと座った。

「しっかりして下さい!
 “グランヌス”が“エルフの里”に乗っ取られている可能性があります。
 “ドミトリー・ドナード”の遺物が“火の国”を惑わしているんです。
 即刻、ミズガルドに連絡を取り事実確認をする必要があります。
 加えて、デザリアがイオリが捕まえた“エルフの里の戦士”の受け取りを受諾してくれました。
 ここからは、国を跨いだ総力戦になりますよ。
 貴方の判断次第で、再び世界大戦に直行です。
 クッキーかプリンで悩んでるんじゃありません!」
 
 怒涛の如く、伝えられる情報に国王アルフレッドは面倒くさそうに天井を仰いだ。

「“エルフの里”め・・・。
 本格的に閉じこもっているのに飽きたか。
 諸侯に情報の共有をさせろ。
 ミズガルドとの連絡は密にな。
 イオリに、こちらの心配をさせるな。
 奴は前だけ見ていれば良い。」

「承知しました。
 早速、動きます。
 ・・・プリン、食べて良いですよ。」

 よく出来ました。とばかりに目を緩めた宰相に国王はニコッとしてスプーンに手を伸ばした。

「さぁ、仕事をしようか。」

 
 
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