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旅路〜ルーシュピケ〜
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リルラとホワンにお願い事をしたイオリは、やっと2つ目の壁の向こうに足を踏み入れた。
客人であるイオリが“ルーシュピケ”の大物である、エルフと獣人の両方の代表者を呼びつけた事にアズゥを始めとした“デフテラ”のメンバーも砦を守っていたエルフや獣人達も唖然としていたが、その後、何故か何処か楽しそうだった。
代表者の元にすっ飛んでいった2人の代わりにゴヴァンとコナーが付き添ってくれた。
「ここが真ん中に存在する町です。
“ルーシュピケ”は国と言ってもエルフ・獣人が住みついた集落を纏めて丸太の壁で囲った砦のような物です。
中間地点である町は共同区域にあたり、商業を中心とした協力エリアです。
ですから、人族やドワーフなど元は住んでいなかった者達も生活を許されるようになりました。」
ゴヴァンの説明通り、木々の中に店屋が立ち並ぶ町は、まるで御伽噺の世界に迷い込んだようだった。
見慣れぬイオリ達であるが、エルフのゴヴァンや鳥の獣人のコナーと共にいる事から、さほど警戒もされていないようで安心した。
「おう、客人!
こっちに来いよ!」
巨大な岩の前でアズゥが大きな声で呼んでいる。
当然、町行く人達の視線を集めていたためにイオリは居心地が悪い。
思わず、足を止めれば背中をツンツンと突っつかれて振り向いた。
「呼ばれてるよ。」
パティがニヤニヤした顔で見上げていた。
笑いを堪えていたナギがスコルに何やら耳打ちされて、真っ赤な顔で吹き出している。
「すごい、人の視線を集めてるけど、行かなきゃ駄目かな?」
どうしようない嫌な予感を感じて眉を下げたイオリにヒューゴが苦笑した。
「駄目だろう。
お前、彼等が尊敬する人達を呼びつけてんだから。」
どうやら、ニナも同意見のようだ。
うんうん、と頷きイオリに「行け」とばかりにアズゥの方角を指差した。
渋々と歩くイオリに視線が絡みついている。
ここまで、注目を浴びるのも珍しい事だった。
「悪いな、客人。
ここで待っててくれ。
ぼちぼち、どっちの年寄りもやって来るだろうかさ。」
テコでも動きそうにない岩を見上げると不思議と落ち着きが戻ってきた。
それはまさに町のど真ん中と呼べる場所だった。
往来の者達だけじゃなく、店からも何事かと人が顔を出していた。
先程まで居た堪れない気持ちでいたイオリであったが、ヒューゴの言う通り呼び出したのはイオリだった。
「はぁ・・・。」
大きな溜息を吐いたイオリが覚悟を決めた。
暫くした時だった。
ズン ズン ズン
心なしか地面が揺れているようだった。
「おっ。
象の大将が先に来たか。」
楽しげなアズゥに「「「「象?」」」」
子供達が首を傾げた。
子供達の疑問に答えるように揺れが止まった。
「大陸からの客人ってのはお前さんかい?」
姿を現した男は巨体にも関わらず軽々とした足取りでイオリの前にやってきた。
立派な耳と鼻を持った男は持っていた大きな葉を団扇のように扇いでいる。
「初めまして、イオリと申します。」
イオリが挨拶をすると男は眉をピクリとさせて見下ろしてきた。
「そうかい。
オイラはフェンバインってんだよ。
オイラを呼び出したのはお前さんって事でいいんだね。」
決して穏やかではない声が降り注ぐ。
誰しもが息を呑んで見守っている中、イオリは微笑んだ。
「はい。俺です。」
客人であるイオリが“ルーシュピケ”の大物である、エルフと獣人の両方の代表者を呼びつけた事にアズゥを始めとした“デフテラ”のメンバーも砦を守っていたエルフや獣人達も唖然としていたが、その後、何故か何処か楽しそうだった。
代表者の元にすっ飛んでいった2人の代わりにゴヴァンとコナーが付き添ってくれた。
「ここが真ん中に存在する町です。
“ルーシュピケ”は国と言ってもエルフ・獣人が住みついた集落を纏めて丸太の壁で囲った砦のような物です。
中間地点である町は共同区域にあたり、商業を中心とした協力エリアです。
ですから、人族やドワーフなど元は住んでいなかった者達も生活を許されるようになりました。」
ゴヴァンの説明通り、木々の中に店屋が立ち並ぶ町は、まるで御伽噺の世界に迷い込んだようだった。
見慣れぬイオリ達であるが、エルフのゴヴァンや鳥の獣人のコナーと共にいる事から、さほど警戒もされていないようで安心した。
「おう、客人!
こっちに来いよ!」
巨大な岩の前でアズゥが大きな声で呼んでいる。
当然、町行く人達の視線を集めていたためにイオリは居心地が悪い。
思わず、足を止めれば背中をツンツンと突っつかれて振り向いた。
「呼ばれてるよ。」
パティがニヤニヤした顔で見上げていた。
笑いを堪えていたナギがスコルに何やら耳打ちされて、真っ赤な顔で吹き出している。
「すごい、人の視線を集めてるけど、行かなきゃ駄目かな?」
どうしようない嫌な予感を感じて眉を下げたイオリにヒューゴが苦笑した。
「駄目だろう。
お前、彼等が尊敬する人達を呼びつけてんだから。」
どうやら、ニナも同意見のようだ。
うんうん、と頷きイオリに「行け」とばかりにアズゥの方角を指差した。
渋々と歩くイオリに視線が絡みついている。
ここまで、注目を浴びるのも珍しい事だった。
「悪いな、客人。
ここで待っててくれ。
ぼちぼち、どっちの年寄りもやって来るだろうかさ。」
テコでも動きそうにない岩を見上げると不思議と落ち着きが戻ってきた。
それはまさに町のど真ん中と呼べる場所だった。
往来の者達だけじゃなく、店からも何事かと人が顔を出していた。
先程まで居た堪れない気持ちでいたイオリであったが、ヒューゴの言う通り呼び出したのはイオリだった。
「はぁ・・・。」
大きな溜息を吐いたイオリが覚悟を決めた。
暫くした時だった。
ズン ズン ズン
心なしか地面が揺れているようだった。
「おっ。
象の大将が先に来たか。」
楽しげなアズゥに「「「「象?」」」」
子供達が首を傾げた。
子供達の疑問に答えるように揺れが止まった。
「大陸からの客人ってのはお前さんかい?」
姿を現した男は巨体にも関わらず軽々とした足取りでイオリの前にやってきた。
立派な耳と鼻を持った男は持っていた大きな葉を団扇のように扇いでいる。
「初めまして、イオリと申します。」
イオリが挨拶をすると男は眉をピクリとさせて見下ろしてきた。
「そうかい。
オイラはフェンバインってんだよ。
オイラを呼び出したのはお前さんって事でいいんだね。」
決して穏やかではない声が降り注ぐ。
誰しもが息を呑んで見守っている中、イオリは微笑んだ。
「はい。俺です。」
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