続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜ルーシュピケ〜

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「オイラを呼び出したのはお前さんって事でいいんだね。」

「はい。俺です。」

 ギロリとした目で見下ろされながらもイオリは笑っていた。
 どれだけ威圧しても気にするでもないイオリに、ついにフェンバインの方が根を上げた。

「初めて会うやつに怖がられないのは久々だ。
 つまらん!」

 不貞腐れるファンバインにイオリはクスクスと笑った。

「だって、本気じゃないでしょう?
 ほら。」

 イオリが指差す方を見れば、パティがフェンバインの足元でニコニコして見上げていた。
 フェンバインの大きな体や、見た事のない団扇の葉に興味があるらしい。
 怖いもの知らずの妹が突飛な行動するのは慣れているとばかりに、スコルが首根っこを掴んで引きずり戻していた。

「子供が近づいているのも気づいていたでしょう?
 それにフェンバインさん、楽しそうな気持ちが漏れてますよ。」

 揶揄うように肩をすくめるイオリにフェンバインは堪らずに吹き出した。

「ブハハハ!
 面白い男だ!
 会いたかったぞ、。」

 フェンバインの言い放った言葉に見守っていた住人達がザワザワと騒ぎ出した。

「どういう事?」

「さぁ、分からん。」

「大将がご機嫌に人族と話してるなんて。」

「おい。爺様も来たぞ。」

 人々が指差す方から板に木の棒を付けただけの神輿に乗せられたエルフの老人が現れた。
 とても小さなエルフの老人は若きエルフ達に大切そうに降ろされた。

「爺さんよ。
 お前さんも来たのかい?」

「フェンの坊やよ。
 こちらの客人には私も用があるのだよ。
 ・・・遠い所まで、よう、来なさったな。」

 声の大きなフェンバインとは対照的に囁くようなエルフの老人にイオリは静かに頭を下げた。

「アースガイルから参りました。
 冒険者をしています。イオリと申します。
 こちらから従魔のゼンとアウラにソル。
 双子のスコルとパティにナギと兄妹のヒューゴさんとニナです。
 お邪魔しています。」

 丁寧な挨拶にエルフの老人と象の獣人は満足そうに頷いた。

「フェンの坊やは挨拶は済んだのだろう?
 それならば、私の番だね。
 私はハニエル。
 この地にエルフが腰を据えた時からの生き証人だよ。」

 いくらエルフが長命と言えど“ルーシュピケ”の始まりを知っているとあれば、途方もなく前の事だ。

 イオリが驚いているのが分かったのだろう。
 ハニエル老は楽しそうに「ヒヒヒッ」と笑っている。

「なまじ長生きも辛いものだが、こうやってに再び会えた。
 よき日に立ち会えて僥倖、僥倖。」

 ハニエル老は、ほぼ役目を終えた目を薄く開けて微笑んだ。

「さて、爺さんが寝ちまう前に終わらせようや。
 お前さんが、この地に来たのは運命なんて陳腐なもんじゃねぇ。
 オイラ達はお前さんに返しきれない恩がある。
 どんな事でも聞かせてくんな。」

 フェンバインはドカッと胡座を組むとハニエル老の隣に腰据えた。
 
「私達は知っているのだよ。
 稀れ人の坊や。
 の事を・・・。
 アマメ様の絶望と希望・・・そして、その後への光明を。
 あの日、坊やが救ったのは彼の地のみにあらず。
 廃地と化した、この地をも救ったのだよ。」

「やはり、そうでしたか。」

 何の事かと首を傾げる者も多いが、不思議と誰もが何も言葉を発する事もなかった。
 エルフと獣人の代表者が何者か分からぬ人族の青年に礼を述べている。
 

「あの日の森の朝は気味悪く静かだった。」

 ハニエル老が語り出すと、それまでの空気が一変した。
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