395 / 782
旅路〜ルーシュピケ〜
403
しおりを挟む
足を踏み入れた“ルーシュピケ”の入り口で足止めをされているイオリ達は戸惑っていた。
分厚い壁の向こう側に入ると再び丸太の壁が現れる。
荒ぶる魔獣達の侵入を遮る為とも考えられるが、見ていれば無許可な人間が入るのを防ぐ為とも考えられる。
壁と壁の間。
今はそこで立ち止まっていた。
何故なら・・・。
「だから!
先にハニエル様の所に行くのよ!」
「駄目。
大将が先。」
「イオリ様は私がお連れしたのよ?
先ずはエルフの代表者に合わせるのが筋でしょう?」
「違う。
大将が俺を迎えに寄越した。
大将は待ってる。」
先にエルフの代表者に会わせるか獣人の代表者に会わせるかでリルラとホワンが揉め始めたのだ。
アズゥを始めとしたデフテラのメンバーは我関せずとばかりに2人の言い合いをニヤニヤと見つめていた。
門を守っていたエルフや獣人すら、どうでも良いとばかりにイオリ達が“ルーシュピケ”に入る手続きを進めていた。
「ハニエル様!」
「大将。」
リルラとホワンの言い合いが終わらない。
イオリは側で困っていたゴヴァンとコナーを手招きした。
「御2人に一緒に会う事は出来ないんですか?」
2人は顔を見合わせると肩をすくめた。
「出来ない事はないんですが・・・。」
言い淀むゴヴァンだったが、覚悟を決めたように話し始めた。
「基本的にエルフはエルフの集落があり、獣人には獣人の集落があります。
その間に町があり、町は種族が入り乱れているんです。」
「お互いの集落に行ってはいけないんですか?」
「いいえ、特別な決まりはありません。
せいぜい自分の居場所じゃないと感じる程度かと思います。
しかし、代表者達は違います。
片方の代表者が、もう片方に会いに行けば相手より格下に見られてしまうんです。
それでは種族に序列がついてしまう。
この国では、そう考えているんですよ。」
相手に合わせれば、従ったとみなされる。
「成程・・・・。」
価値観が違うのだと、イオリは納得した。
「確か、人間もいるんですよね?」
「少数ですが・・・。
彼らは町にいる事が多いですね。
要は、仕事で“ルーシュピケ”に腰を据えていると考えてください。
ドワーフ達も同じですね。」
「専門職って事ですか?」
「そうですね・・・。
例えばですが、神官や武器職人・商人・・・後はギルド職員とかですかね。
どれもが許可制です。」
一通り聞いて、イオリは溜息を吐いた。
要はエルフの代表者も獣人の代表者も互いに譲れば同種に示しがつかないと考えているのだ。
それは代表者だけに適応し、その他の者は自由に行動していると考えれば、厄介な立場である。
「話の分からない、男ね。」
「そっちも意固地だ。」
リルラとホワンの言い争いが終わらない。
2人が不満そうに睨み合っている所に、決意を込めてイオリが近づいた。
「“ルーシュピケ”における、代表者さんの互いの立場について理解しました。
だから、リルラさんとホワンにお願います。」
2人は不思議そうにイオリの顔を見つめた。
怒気が薄まったのを確認しイオリは一気に伝えた。
「アースガイル国王に頂いた指輪を持つ俺が要請します。
エルフの代表者、獣人の代表者の御2人と面会させて下さい。
2人とも一緒に・・・。」
それにはルーシュピケの一同が息を呑んだ。
人間がエルフの代表者と獣人の代表者を呼びつけたのだ。
しかし、イオリの素性を知っている2人はニッコリと頷いた。
「承りました。」
「承知。」
それぞれが報告に向かったのを確認するとイオリは手に収まった指輪を見つめた。
「・・・役に立ったな。」
アースガイルで最も貴ばれている男の得意気な顔が思い浮かばれ、イオリが振り向けば、子供達とヒューゴも苦笑していた。
分厚い壁の向こう側に入ると再び丸太の壁が現れる。
荒ぶる魔獣達の侵入を遮る為とも考えられるが、見ていれば無許可な人間が入るのを防ぐ為とも考えられる。
壁と壁の間。
今はそこで立ち止まっていた。
何故なら・・・。
「だから!
先にハニエル様の所に行くのよ!」
「駄目。
大将が先。」
「イオリ様は私がお連れしたのよ?
先ずはエルフの代表者に合わせるのが筋でしょう?」
「違う。
大将が俺を迎えに寄越した。
大将は待ってる。」
先にエルフの代表者に会わせるか獣人の代表者に会わせるかでリルラとホワンが揉め始めたのだ。
アズゥを始めとしたデフテラのメンバーは我関せずとばかりに2人の言い合いをニヤニヤと見つめていた。
門を守っていたエルフや獣人すら、どうでも良いとばかりにイオリ達が“ルーシュピケ”に入る手続きを進めていた。
「ハニエル様!」
「大将。」
リルラとホワンの言い合いが終わらない。
イオリは側で困っていたゴヴァンとコナーを手招きした。
「御2人に一緒に会う事は出来ないんですか?」
2人は顔を見合わせると肩をすくめた。
「出来ない事はないんですが・・・。」
言い淀むゴヴァンだったが、覚悟を決めたように話し始めた。
「基本的にエルフはエルフの集落があり、獣人には獣人の集落があります。
その間に町があり、町は種族が入り乱れているんです。」
「お互いの集落に行ってはいけないんですか?」
「いいえ、特別な決まりはありません。
せいぜい自分の居場所じゃないと感じる程度かと思います。
しかし、代表者達は違います。
片方の代表者が、もう片方に会いに行けば相手より格下に見られてしまうんです。
それでは種族に序列がついてしまう。
この国では、そう考えているんですよ。」
相手に合わせれば、従ったとみなされる。
「成程・・・・。」
価値観が違うのだと、イオリは納得した。
「確か、人間もいるんですよね?」
「少数ですが・・・。
彼らは町にいる事が多いですね。
要は、仕事で“ルーシュピケ”に腰を据えていると考えてください。
ドワーフ達も同じですね。」
「専門職って事ですか?」
「そうですね・・・。
例えばですが、神官や武器職人・商人・・・後はギルド職員とかですかね。
どれもが許可制です。」
一通り聞いて、イオリは溜息を吐いた。
要はエルフの代表者も獣人の代表者も互いに譲れば同種に示しがつかないと考えているのだ。
それは代表者だけに適応し、その他の者は自由に行動していると考えれば、厄介な立場である。
「話の分からない、男ね。」
「そっちも意固地だ。」
リルラとホワンの言い争いが終わらない。
2人が不満そうに睨み合っている所に、決意を込めてイオリが近づいた。
「“ルーシュピケ”における、代表者さんの互いの立場について理解しました。
だから、リルラさんとホワンにお願います。」
2人は不思議そうにイオリの顔を見つめた。
怒気が薄まったのを確認しイオリは一気に伝えた。
「アースガイル国王に頂いた指輪を持つ俺が要請します。
エルフの代表者、獣人の代表者の御2人と面会させて下さい。
2人とも一緒に・・・。」
それにはルーシュピケの一同が息を呑んだ。
人間がエルフの代表者と獣人の代表者を呼びつけたのだ。
しかし、イオリの素性を知っている2人はニッコリと頷いた。
「承りました。」
「承知。」
それぞれが報告に向かったのを確認するとイオリは手に収まった指輪を見つめた。
「・・・役に立ったな。」
アースガイルで最も貴ばれている男の得意気な顔が思い浮かばれ、イオリが振り向けば、子供達とヒューゴも苦笑していた。
834
お気に入りに追加
10,436
あなたにおすすめの小説
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。
【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~
柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」
テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。
この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。
誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。
しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。
その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。
だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。
「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」
「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」
これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語
2月28日HOTランキング9位!
3月1日HOTランキング6位!
本当にありがとうございます!
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

元捨て子の新米王子様、今日もお仕事頑張ります!
藤なごみ
ファンタジー
簡易説明
転生前も転生後も捨て子として育てられた少年が、大きく成長する物語です
詳細説明
生まれた直後に病院に遺棄されるという運命を背負った少年は、様々な境遇の子どもが集まった孤児院で成長していった。
そして孤児院を退寮後に働いていたのだが、本人が気が付かないうちに就寝中に病気で亡くなってしまいす。
そして再び少年が目を覚ますと、前世の記憶を持ったまま全く別の世界で新たな生を受ける事に。
しかし、ここでも再び少年は生後直ぐに遺棄される運命を辿って行く事になります。
赤ん坊となった少年は、果たして家族と再会する事が出来るのか。
色々な視点が出てきて読みにくいと思いますがご了承ください。
家族の絆、血のつながりのある絆、血のつながらない絆とかを書いて行く予定です。
※小説家になろう様でも投稿しております

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
【完結】月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。
五城楼スケ(デコスケ)
ファンタジー
※本編完結しました。お付き合いいただいた皆様、有難うございました!※
両親を事故で亡くしたティナは、膨大な量の光の魔力を持つ為に聖女にされてしまう。
多忙なティナが学院を休んでいる間に、男爵令嬢のマリーから悪い噂を吹き込まれた王子はティナに婚約破棄を告げる。
大喜びで婚約破棄を受け入れたティナは憧れの冒険者になるが、両親が残した幻の花の種を育てる為に、栽培場所を探す旅に出る事を決意する。
そんなティナに、何故か同級生だったトールが同行を申し出て……?
*HOTランキング1位、エールに感想有難うございます!とても励みになっています!

憧れのテイマーになれたけど、何で神獣ばっかりなの⁉
陣ノ内猫子
ファンタジー
神様の使い魔を助けて死んでしまった主人公。
お詫びにと、ずっとなりたいと思っていたテイマーとなって、憧れの異世界へ行けることに。
チートな力と装備を神様からもらって、助けた使い魔を連れ、いざ異世界へGO!
ーーーーーーーーー
これはボクっ子女子が織りなす、チートな冒険物語です。
ご都合主義、あるかもしれません。
一話一話が短いです。
週一回を目標に投稿したと思います。
面白い、続きが読みたいと思って頂けたら幸いです。
誤字脱字があれば教えてください。すぐに修正します。
感想を頂けると嬉しいです。(返事ができないこともあるかもしれません)

辺境の街で雑貨店を営む錬金術士少女ノヴァ ~魔力0の捨てられ少女はかわいいモフモフ聖獣とともにこの地では珍しい錬金術で幸せをつかみ取ります~
あきさけ
ファンタジー
とある平民の少女は四歳のときに受けた魔力検査で魔力なしと判定されてしまう。
その結果、森の奥深くに捨てられてしまった少女だが、獣に襲われる寸前、聖獣フラッシュリンクスに助けられ一命を取り留める。
その後、フラッシュリンクスに引き取られた少女はノヴァと名付けられた。
さらに、幼いフラッシュリンクスの子と従魔契約を果たし、その眠っていた才能を開花させた。
様々な属性の魔法が使えるようになったノヴァだったが、その中でもとりわけ珍しかったのが、素材の声を聞き取り、それに応えて別のものに作り替える〝錬金術〟の素養。
ノヴァを助けたフラッシュリンクスは母となり、その才能を育て上げ、人の社会でも一人前になれるようノヴァを導きともに暮らしていく。
そして、旅立ちの日。
母フラッシュリンクスから一人前と見なされたノヴァは、姉妹のように育った末っ子のフラッシュリンクス『シシ』とともに新米錬金術士として辺境の街へと足を踏み入れることとなる。
まだ六歳という幼さで。
※この小説はカクヨム様、アルファポリス様で連載中です。
上記サイト以外では連載しておりません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる