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旅路〜ルーシュピケ〜
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足を踏み入れた“ルーシュピケ”の入り口で足止めをされているイオリ達は戸惑っていた。
分厚い壁の向こう側に入ると再び丸太の壁が現れる。
荒ぶる魔獣達の侵入を遮る為とも考えられるが、見ていれば無許可な人間が入るのを防ぐ為とも考えられる。
壁と壁の間。
今はそこで立ち止まっていた。
何故なら・・・。
「だから!
先にハニエル様の所に行くのよ!」
「駄目。
大将が先。」
「イオリ様は私がお連れしたのよ?
先ずはエルフの代表者に合わせるのが筋でしょう?」
「違う。
大将が俺を迎えに寄越した。
大将は待ってる。」
先にエルフの代表者に会わせるか獣人の代表者に会わせるかでリルラとホワンが揉め始めたのだ。
アズゥを始めとしたデフテラのメンバーは我関せずとばかりに2人の言い合いをニヤニヤと見つめていた。
門を守っていたエルフや獣人すら、どうでも良いとばかりにイオリ達が“ルーシュピケ”に入る手続きを進めていた。
「ハニエル様!」
「大将。」
リルラとホワンの言い合いが終わらない。
イオリは側で困っていたゴヴァンとコナーを手招きした。
「御2人に一緒に会う事は出来ないんですか?」
2人は顔を見合わせると肩をすくめた。
「出来ない事はないんですが・・・。」
言い淀むゴヴァンだったが、覚悟を決めたように話し始めた。
「基本的にエルフはエルフの集落があり、獣人には獣人の集落があります。
その間に町があり、町は種族が入り乱れているんです。」
「お互いの集落に行ってはいけないんですか?」
「いいえ、特別な決まりはありません。
せいぜい自分の居場所じゃないと感じる程度かと思います。
しかし、代表者達は違います。
片方の代表者が、もう片方に会いに行けば相手より格下に見られてしまうんです。
それでは種族に序列がついてしまう。
この国では、そう考えているんですよ。」
相手に合わせれば、従ったとみなされる。
「成程・・・・。」
価値観が違うのだと、イオリは納得した。
「確か、人間もいるんですよね?」
「少数ですが・・・。
彼らは町にいる事が多いですね。
要は、仕事で“ルーシュピケ”に腰を据えていると考えてください。
ドワーフ達も同じですね。」
「専門職って事ですか?」
「そうですね・・・。
例えばですが、神官や武器職人・商人・・・後はギルド職員とかですかね。
どれもが許可制です。」
一通り聞いて、イオリは溜息を吐いた。
要はエルフの代表者も獣人の代表者も互いに譲れば同種に示しがつかないと考えているのだ。
それは代表者だけに適応し、その他の者は自由に行動していると考えれば、厄介な立場である。
「話の分からない、男ね。」
「そっちも意固地だ。」
リルラとホワンの言い争いが終わらない。
2人が不満そうに睨み合っている所に、決意を込めてイオリが近づいた。
「“ルーシュピケ”における、代表者さんの互いの立場について理解しました。
だから、リルラさんとホワンにお願います。」
2人は不思議そうにイオリの顔を見つめた。
怒気が薄まったのを確認しイオリは一気に伝えた。
「アースガイル国王に頂いた指輪を持つ俺が要請します。
エルフの代表者、獣人の代表者の御2人と面会させて下さい。
2人とも一緒に・・・。」
それにはルーシュピケの一同が息を呑んだ。
人間がエルフの代表者と獣人の代表者を呼びつけたのだ。
しかし、イオリの素性を知っている2人はニッコリと頷いた。
「承りました。」
「承知。」
それぞれが報告に向かったのを確認するとイオリは手に収まった指輪を見つめた。
「・・・役に立ったな。」
アースガイルで最も貴ばれている男の得意気な顔が思い浮かばれ、イオリが振り向けば、子供達とヒューゴも苦笑していた。
分厚い壁の向こう側に入ると再び丸太の壁が現れる。
荒ぶる魔獣達の侵入を遮る為とも考えられるが、見ていれば無許可な人間が入るのを防ぐ為とも考えられる。
壁と壁の間。
今はそこで立ち止まっていた。
何故なら・・・。
「だから!
先にハニエル様の所に行くのよ!」
「駄目。
大将が先。」
「イオリ様は私がお連れしたのよ?
先ずはエルフの代表者に合わせるのが筋でしょう?」
「違う。
大将が俺を迎えに寄越した。
大将は待ってる。」
先にエルフの代表者に会わせるか獣人の代表者に会わせるかでリルラとホワンが揉め始めたのだ。
アズゥを始めとしたデフテラのメンバーは我関せずとばかりに2人の言い合いをニヤニヤと見つめていた。
門を守っていたエルフや獣人すら、どうでも良いとばかりにイオリ達が“ルーシュピケ”に入る手続きを進めていた。
「ハニエル様!」
「大将。」
リルラとホワンの言い合いが終わらない。
イオリは側で困っていたゴヴァンとコナーを手招きした。
「御2人に一緒に会う事は出来ないんですか?」
2人は顔を見合わせると肩をすくめた。
「出来ない事はないんですが・・・。」
言い淀むゴヴァンだったが、覚悟を決めたように話し始めた。
「基本的にエルフはエルフの集落があり、獣人には獣人の集落があります。
その間に町があり、町は種族が入り乱れているんです。」
「お互いの集落に行ってはいけないんですか?」
「いいえ、特別な決まりはありません。
せいぜい自分の居場所じゃないと感じる程度かと思います。
しかし、代表者達は違います。
片方の代表者が、もう片方に会いに行けば相手より格下に見られてしまうんです。
それでは種族に序列がついてしまう。
この国では、そう考えているんですよ。」
相手に合わせれば、従ったとみなされる。
「成程・・・・。」
価値観が違うのだと、イオリは納得した。
「確か、人間もいるんですよね?」
「少数ですが・・・。
彼らは町にいる事が多いですね。
要は、仕事で“ルーシュピケ”に腰を据えていると考えてください。
ドワーフ達も同じですね。」
「専門職って事ですか?」
「そうですね・・・。
例えばですが、神官や武器職人・商人・・・後はギルド職員とかですかね。
どれもが許可制です。」
一通り聞いて、イオリは溜息を吐いた。
要はエルフの代表者も獣人の代表者も互いに譲れば同種に示しがつかないと考えているのだ。
それは代表者だけに適応し、その他の者は自由に行動していると考えれば、厄介な立場である。
「話の分からない、男ね。」
「そっちも意固地だ。」
リルラとホワンの言い争いが終わらない。
2人が不満そうに睨み合っている所に、決意を込めてイオリが近づいた。
「“ルーシュピケ”における、代表者さんの互いの立場について理解しました。
だから、リルラさんとホワンにお願います。」
2人は不思議そうにイオリの顔を見つめた。
怒気が薄まったのを確認しイオリは一気に伝えた。
「アースガイル国王に頂いた指輪を持つ俺が要請します。
エルフの代表者、獣人の代表者の御2人と面会させて下さい。
2人とも一緒に・・・。」
それにはルーシュピケの一同が息を呑んだ。
人間がエルフの代表者と獣人の代表者を呼びつけたのだ。
しかし、イオリの素性を知っている2人はニッコリと頷いた。
「承りました。」
「承知。」
それぞれが報告に向かったのを確認するとイオリは手に収まった指輪を見つめた。
「・・・役に立ったな。」
アースガイルで最も貴ばれている男の得意気な顔が思い浮かばれ、イオリが振り向けば、子供達とヒューゴも苦笑していた。
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