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旅路〜デザリア・ガレー〜
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「ラバン商会が・・・なんだと?」
怒りなのか怯えなのか、震えているシャカン・カズブールの真意は自分さえ分かっていない。
ただ面倒事が発生した事は理解していた。
「だからぁ~。
ラバン商会の会頭が・・・」
「聞こえとったわ!!
ったく、なんだって今頃に!」
アースガイルから逃げて来たシャカン・カズブールは、ガレーの地を気に入っていた。
ガレーは農作物が採れるだけではない。
スパイスが豊富に栽培されているのだ。
それらは魔獣除けに使ったり、罠にも用いる為に冒険者によく売れる。
しかも、ガレー特産の品種はアースガイルで高く取引されているのだ。
目をつけたシャカン・カズブールは、農家から安く買い叩き他国に暴利な価格で売りつけているのだ。
「ラバン商会はデザリアでは一目置かれてるから、目をつけられると面倒だよ?
どうするの?」
シャカン・カズブールは苦渋に満ちた顔でハマジィを睨みつけた。
「ここまできて、コッチの商売に影響あるのはマズイ。
ラバン商会か・・・まあ、グラトニーに比べれば何とかなるだろう。
誰か、人でもやって代わりに挨拶して来い!」
「へーい。
あっ!
そう言えばさぁ、アースガイルの商会の旅団が来てるらしいよ?」
「・・・アースガイルの商会。
益々、外を出るのに気を配らんとならんな。
旅団なら数日で旅立つだろう。
おい!
ハマジィ。
アースガイルの商会の事、調べておけよ。
アッチは俺の事知ってる可能性があるからな。
俺は引きこもるぞ。」
「へーい。」
「チッ。
ノロマめが。」
どこか気の抜けた返事をしながら扉を閉めて行ったハマジィにシャカン・カズブールも舌打ちをした。
シャカン・カズブールがハマジィと出会ったのは・・・いや、拾ったのはデザリアの王都バッカスに辿り着いた日だった。
アースガイルに何もかも捨ててきたシャカン・カズブールは金だけ持って海を渡って来た。
それまで付き従ってきた部下達とも別れ、騒ぎが起こる前にグダスクから脱出したのだ。
バッカスについて早々にシャカン・カズブールの荷物を盗もうとした男がいた。
それがハマジィだった。
とっ捕まえて、怒鳴り散らすとハマジィは年老いた観光客だと鷹を括っていたのか仰天してポカンとしていた。
ズタボロの姿をしたハマジィであったが、体が大きく腕っぷしはありそうだった。
知らぬ土地で再起を目論むシャカン・カズブールはハマジィの髪を掴んで瞳を覗いて囁いた。
『若造。商売ってのを教えてやるよ。』
恐怖。憧れ。様々な感情が読み取れたハマジィの顔をシャカン・カズブールは鼻で笑った。
『ついて来い。』
この出会いはシャカン・カズブールにとって幸運と言って良かった。
デザリアに詳しくないシャカン・カズブールに地理や情報を与え、ガレーの事を教えたのもハマジィだった。
ガレーに着いて、この地は物になると納得したシャカン・カズブールは軌道に乗るとほくそ笑んだ。
「良い拾い物だったが、ノロマなのが時折、腹が立つな。
・・・ギルマスにも探りをいれさせるか。」
シャカン・カズブールは宝石箱をさすると誰にも渡すものかと抱きしめるのだった。
怒りなのか怯えなのか、震えているシャカン・カズブールの真意は自分さえ分かっていない。
ただ面倒事が発生した事は理解していた。
「だからぁ~。
ラバン商会の会頭が・・・」
「聞こえとったわ!!
ったく、なんだって今頃に!」
アースガイルから逃げて来たシャカン・カズブールは、ガレーの地を気に入っていた。
ガレーは農作物が採れるだけではない。
スパイスが豊富に栽培されているのだ。
それらは魔獣除けに使ったり、罠にも用いる為に冒険者によく売れる。
しかも、ガレー特産の品種はアースガイルで高く取引されているのだ。
目をつけたシャカン・カズブールは、農家から安く買い叩き他国に暴利な価格で売りつけているのだ。
「ラバン商会はデザリアでは一目置かれてるから、目をつけられると面倒だよ?
どうするの?」
シャカン・カズブールは苦渋に満ちた顔でハマジィを睨みつけた。
「ここまできて、コッチの商売に影響あるのはマズイ。
ラバン商会か・・・まあ、グラトニーに比べれば何とかなるだろう。
誰か、人でもやって代わりに挨拶して来い!」
「へーい。
あっ!
そう言えばさぁ、アースガイルの商会の旅団が来てるらしいよ?」
「・・・アースガイルの商会。
益々、外を出るのに気を配らんとならんな。
旅団なら数日で旅立つだろう。
おい!
ハマジィ。
アースガイルの商会の事、調べておけよ。
アッチは俺の事知ってる可能性があるからな。
俺は引きこもるぞ。」
「へーい。」
「チッ。
ノロマめが。」
どこか気の抜けた返事をしながら扉を閉めて行ったハマジィにシャカン・カズブールも舌打ちをした。
シャカン・カズブールがハマジィと出会ったのは・・・いや、拾ったのはデザリアの王都バッカスに辿り着いた日だった。
アースガイルに何もかも捨ててきたシャカン・カズブールは金だけ持って海を渡って来た。
それまで付き従ってきた部下達とも別れ、騒ぎが起こる前にグダスクから脱出したのだ。
バッカスについて早々にシャカン・カズブールの荷物を盗もうとした男がいた。
それがハマジィだった。
とっ捕まえて、怒鳴り散らすとハマジィは年老いた観光客だと鷹を括っていたのか仰天してポカンとしていた。
ズタボロの姿をしたハマジィであったが、体が大きく腕っぷしはありそうだった。
知らぬ土地で再起を目論むシャカン・カズブールはハマジィの髪を掴んで瞳を覗いて囁いた。
『若造。商売ってのを教えてやるよ。』
恐怖。憧れ。様々な感情が読み取れたハマジィの顔をシャカン・カズブールは鼻で笑った。
『ついて来い。』
この出会いはシャカン・カズブールにとって幸運と言って良かった。
デザリアに詳しくないシャカン・カズブールに地理や情報を与え、ガレーの事を教えたのもハマジィだった。
ガレーに着いて、この地は物になると納得したシャカン・カズブールは軌道に乗るとほくそ笑んだ。
「良い拾い物だったが、ノロマなのが時折、腹が立つな。
・・・ギルマスにも探りをいれさせるか。」
シャカン・カズブールは宝石箱をさすると誰にも渡すものかと抱きしめるのだった。
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