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旅路〜デザリア・ガレー〜
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会頭がガレーに到着して以来、何かと騒がしいラバン商会は今日も従業員が忙しくしていた。
しかし何故だか会頭が執務室代わりに使っている応接室は落ち着いている。
「使える手駒を使い、噂を流して来ました。」
帰ってきたユーフとルトゥが報告するとタージ・ラバンは楽しそうに扇子で顔を仰いだ。
「さてさて、どっちが喰いつくかな?」
「カズブール商会に関しては本人が姿を現してくれると話は楽なんですけどね。」
どこか馬鹿にしているユーフにタージ・ラバンはクスクスと笑う。
「それはないでしょう。
この手の輩はめっぽう臆病だ。
勝てない勝負はしないのさ。」
「でしたら、ギルドですか・・・?」
伺うよなルトゥにタージ・ラバンは頷いた。
「ルトゥもギルドに苦労してたんじゃないか?
そろそろ面倒になっていただろう。」
「正直、最近のギルドとは距離を置いていたんです。
スパイスの売買で揉めた事についての報告はさせて頂いたかと思いますが・・・。」
真剣な顔のルトゥは主人から叱りを受けていたのとは別人の様に鋭い目をしていた。
「元々、自由契約していたスパイス畑の所有者達に商人ギルドが決めた特定の商会と専任契約を結ぶといったアレか?
ハッ!
あんなもの契約でもなんでもない。
何が平等の商売だ。
単なる囲い込みで脅しているだけだろうが。」
「その通りです。
抗議もしましたし、スパイス畑の所有者達も我らとの契約を継続したいと申し出てくれました。
それが全て却下です。
新たに契約した商会に安く叩かれていると農家が嘆いていますよ。
ウチとしたら、良質なスパイスの取引窓口が減らされて苦渋を飲まされた事案です。
それを担当していたのが、例の裏切り者達とあれば、余計に腹が煮えくりかえりますよ。」
久々にルトゥの怒りの顔を見て、タージ・ラバンは微笑んだ。
「良かった。
ルトゥは勝負をやめたのかと思ってた。
まあ、見てなよ。
成り上がりのタージ・ラバン。
正々堂々と文句を言ってやろうではないか!」
そんな太々しい主人にユーフとルトゥは微笑んだのだ。
「・・・主。
来たようだ。」
ずっと窓から外を見ていた護衛ネイルが客人の存在を教えた。
「さてさて、俺は今日も麗しい男かな?」
鏡を覗き込みに行った主人に残念な視線を送る3人だった。
コンコンコン
「商人ギルドのギルマスがお越しです。
お通しても宜しいですか?」
「うん。
良いよ。」
顔を出した女性従業員が頬を染めたのを確認して機嫌が良くなったタージ・ラバンは楽しそうに頷いた。
応接室に案内された客人は迎え出たタージ・ラバンに瞠目した。
「これはこれは、ギルマス。
お久しぶりです。
わざわざ来られなくても、此方から参りましたのに。」
扇子で口元を隠し、首を傾げるタージ・ラバンは、まるで何処ぞの姫君のような微笑みでソファーに座っていた。
やって来た商人ギルドのギルマス・カビスと初対面の女性のギルド職員は誰もが惚れる男、タージ・ラバンと対峙する事になる。
しかし何故だか会頭が執務室代わりに使っている応接室は落ち着いている。
「使える手駒を使い、噂を流して来ました。」
帰ってきたユーフとルトゥが報告するとタージ・ラバンは楽しそうに扇子で顔を仰いだ。
「さてさて、どっちが喰いつくかな?」
「カズブール商会に関しては本人が姿を現してくれると話は楽なんですけどね。」
どこか馬鹿にしているユーフにタージ・ラバンはクスクスと笑う。
「それはないでしょう。
この手の輩はめっぽう臆病だ。
勝てない勝負はしないのさ。」
「でしたら、ギルドですか・・・?」
伺うよなルトゥにタージ・ラバンは頷いた。
「ルトゥもギルドに苦労してたんじゃないか?
そろそろ面倒になっていただろう。」
「正直、最近のギルドとは距離を置いていたんです。
スパイスの売買で揉めた事についての報告はさせて頂いたかと思いますが・・・。」
真剣な顔のルトゥは主人から叱りを受けていたのとは別人の様に鋭い目をしていた。
「元々、自由契約していたスパイス畑の所有者達に商人ギルドが決めた特定の商会と専任契約を結ぶといったアレか?
ハッ!
あんなもの契約でもなんでもない。
何が平等の商売だ。
単なる囲い込みで脅しているだけだろうが。」
「その通りです。
抗議もしましたし、スパイス畑の所有者達も我らとの契約を継続したいと申し出てくれました。
それが全て却下です。
新たに契約した商会に安く叩かれていると農家が嘆いていますよ。
ウチとしたら、良質なスパイスの取引窓口が減らされて苦渋を飲まされた事案です。
それを担当していたのが、例の裏切り者達とあれば、余計に腹が煮えくりかえりますよ。」
久々にルトゥの怒りの顔を見て、タージ・ラバンは微笑んだ。
「良かった。
ルトゥは勝負をやめたのかと思ってた。
まあ、見てなよ。
成り上がりのタージ・ラバン。
正々堂々と文句を言ってやろうではないか!」
そんな太々しい主人にユーフとルトゥは微笑んだのだ。
「・・・主。
来たようだ。」
ずっと窓から外を見ていた護衛ネイルが客人の存在を教えた。
「さてさて、俺は今日も麗しい男かな?」
鏡を覗き込みに行った主人に残念な視線を送る3人だった。
コンコンコン
「商人ギルドのギルマスがお越しです。
お通しても宜しいですか?」
「うん。
良いよ。」
顔を出した女性従業員が頬を染めたのを確認して機嫌が良くなったタージ・ラバンは楽しそうに頷いた。
応接室に案内された客人は迎え出たタージ・ラバンに瞠目した。
「これはこれは、ギルマス。
お久しぶりです。
わざわざ来られなくても、此方から参りましたのに。」
扇子で口元を隠し、首を傾げるタージ・ラバンは、まるで何処ぞの姫君のような微笑みでソファーに座っていた。
やって来た商人ギルドのギルマス・カビスと初対面の女性のギルド職員は誰もが惚れる男、タージ・ラバンと対峙する事になる。
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