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旅路〜デザリア・ガレー〜
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薄暗い部屋で明かりが灯っている。
その明かりに反射しキラキラと金貨が輝く。
「クククっ。
悪くない売上だな。」
1枚1枚金貨を数え、醜悪な顔で笑っているのはカズブール商会の会頭。
名をシャカン・カズブールという。
元の名はシャカン・ラート
アースガイル国のオンリールの地にて男爵家の三男として生まれた男は、家督とは無縁の期待などされない穀潰しだった。
そんな男の人生を変えたのは、かの悪名高いオンリール伯爵家の嫡男フォダン・オンリールの存在だった。
若いシャカンにとって華やかで贅を楽しむフォダン・オンリールは憧れであった。
同じ貴族家に生まれても領主の嫡男と弱小男爵家の三男では財力も周りの人気も全く違った。
あの人の側に居たいと男はフォダン・オンリールの取り巻きに加わった。
いや、フォダン・オンリールにとってシャカンなど目にも入っていなかったかもしれない。
それ程に当時のフォダン・オンリールには人が集まったのだ。
何かと話題をさらうフォダン・オンリールに近づいた息子にラート家の両親は良い顔をしなかった。
大人から見ればフォダン・オンリールのあり様は決して誉められるものではなかったからである。
案の定、フォダン・オンリールは父である領主の手によって僻地へ送られ、オンリールの繁華街から姿を消したのだった。
その後のフォダン・オンリールの取り巻き達の行く末は様々だった。
彼らはフォダン・オンリールの名で悪事を行い、事が露見すると裁きを受けていた。
逮捕された者、廃嫡された者、時には恨みを買い死んだ者もいた。
その最中のシャカンは年若い事もあり、父である男爵に謹慎を申し付けられた。
男爵のその判断が遺恨を残す事になる。
ラート男爵家の後継であった長兄が罰が手ぬるいと次兄と手を組み、シャカンを家から追い出したのだ。
フォダン・オンリールに組みし、オンリールの街で犯罪紛いな事に手を出した弟を見限ったのである。
シャカンは長兄の伝手で商会に預けられる事となった。
当初こそ、不貞腐れていたシャカンであったが、持って生まれた商才が開花し数年も経たずに商会にて昇格をしていった。
調子に乗ったシャカンは勤めていた商会を飛び出し、自ら小物を取り扱う商会を立ち上げたのだ。
しかし、雇われ立場と会頭の立場は全くと言って違う物だった。
最初こそ評判も良く、売り上げも上々。
かつて自分を捨てた実家を見返す事も出来たと鼻高々だったが、流行りとは鬱ろう物である。
瞬く間に客足が遠のき、赤字だらけの泥舟商会となっていった。
一度でも成功を味わった男は這い上がる為に成り振りなど構っていられなかった。
いつしか他人の仕事を奪い、脅し、次第に悪徳商人のレッテルを貼られるまでとなった。
「海を渡って正解だったな。
アースガイルの品がこっちでは目新しいから、儲け放題だ。
クククッ。
今頃、アッチは面倒になっているだろう。
やはり、早めに国を出た私の目に狂いはない。」
デザリアに渡ってから“カズブール”と名乗り始めた男は、アースガイルでの身元を隠した。
月日が男を醜悪な顔へと変貌させ、故郷の者は誰も男を判別出来ない程にテカった浮腫み顔が灯りを浴びている。
コンコンコン。
扉がノックされると、シャカン・カズブールはテーブルに広げていた金貨を急いで集め、宝石が散りばめられた箱に仕舞い大切そうに抱え込んだ。
「なんだ!?」
呼び込めば、胡散臭い笑顔を浮かべた男が顔を出した。
「ハマジィか。用はなんだ?」
シャカン・カズブールは金貨を数える楽しもを奪われ機嫌が悪くなった。
「あ~。
ラバン商会の会頭がガレーに来たって言ったろう?
あちらさん、俺達を新参者って言って、挨拶ないってキレてるらしいよ。」
「何っ!?」
「目をつけられても面倒だから、一応報告しとこうと思ってさ。」
それを聞くとシャカン・カズブールは顔を歪め、抱えていた箱を握る手が震えるのだった。
その明かりに反射しキラキラと金貨が輝く。
「クククっ。
悪くない売上だな。」
1枚1枚金貨を数え、醜悪な顔で笑っているのはカズブール商会の会頭。
名をシャカン・カズブールという。
元の名はシャカン・ラート
アースガイル国のオンリールの地にて男爵家の三男として生まれた男は、家督とは無縁の期待などされない穀潰しだった。
そんな男の人生を変えたのは、かの悪名高いオンリール伯爵家の嫡男フォダン・オンリールの存在だった。
若いシャカンにとって華やかで贅を楽しむフォダン・オンリールは憧れであった。
同じ貴族家に生まれても領主の嫡男と弱小男爵家の三男では財力も周りの人気も全く違った。
あの人の側に居たいと男はフォダン・オンリールの取り巻きに加わった。
いや、フォダン・オンリールにとってシャカンなど目にも入っていなかったかもしれない。
それ程に当時のフォダン・オンリールには人が集まったのだ。
何かと話題をさらうフォダン・オンリールに近づいた息子にラート家の両親は良い顔をしなかった。
大人から見ればフォダン・オンリールのあり様は決して誉められるものではなかったからである。
案の定、フォダン・オンリールは父である領主の手によって僻地へ送られ、オンリールの繁華街から姿を消したのだった。
その後のフォダン・オンリールの取り巻き達の行く末は様々だった。
彼らはフォダン・オンリールの名で悪事を行い、事が露見すると裁きを受けていた。
逮捕された者、廃嫡された者、時には恨みを買い死んだ者もいた。
その最中のシャカンは年若い事もあり、父である男爵に謹慎を申し付けられた。
男爵のその判断が遺恨を残す事になる。
ラート男爵家の後継であった長兄が罰が手ぬるいと次兄と手を組み、シャカンを家から追い出したのだ。
フォダン・オンリールに組みし、オンリールの街で犯罪紛いな事に手を出した弟を見限ったのである。
シャカンは長兄の伝手で商会に預けられる事となった。
当初こそ、不貞腐れていたシャカンであったが、持って生まれた商才が開花し数年も経たずに商会にて昇格をしていった。
調子に乗ったシャカンは勤めていた商会を飛び出し、自ら小物を取り扱う商会を立ち上げたのだ。
しかし、雇われ立場と会頭の立場は全くと言って違う物だった。
最初こそ評判も良く、売り上げも上々。
かつて自分を捨てた実家を見返す事も出来たと鼻高々だったが、流行りとは鬱ろう物である。
瞬く間に客足が遠のき、赤字だらけの泥舟商会となっていった。
一度でも成功を味わった男は這い上がる為に成り振りなど構っていられなかった。
いつしか他人の仕事を奪い、脅し、次第に悪徳商人のレッテルを貼られるまでとなった。
「海を渡って正解だったな。
アースガイルの品がこっちでは目新しいから、儲け放題だ。
クククッ。
今頃、アッチは面倒になっているだろう。
やはり、早めに国を出た私の目に狂いはない。」
デザリアに渡ってから“カズブール”と名乗り始めた男は、アースガイルでの身元を隠した。
月日が男を醜悪な顔へと変貌させ、故郷の者は誰も男を判別出来ない程にテカった浮腫み顔が灯りを浴びている。
コンコンコン。
扉がノックされると、シャカン・カズブールはテーブルに広げていた金貨を急いで集め、宝石が散りばめられた箱に仕舞い大切そうに抱え込んだ。
「なんだ!?」
呼び込めば、胡散臭い笑顔を浮かべた男が顔を出した。
「ハマジィか。用はなんだ?」
シャカン・カズブールは金貨を数える楽しもを奪われ機嫌が悪くなった。
「あ~。
ラバン商会の会頭がガレーに来たって言ったろう?
あちらさん、俺達を新参者って言って、挨拶ないってキレてるらしいよ。」
「何っ!?」
「目をつけられても面倒だから、一応報告しとこうと思ってさ。」
それを聞くとシャカン・カズブールは顔を歪め、抱えていた箱を握る手が震えるのだった。
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