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旅路〜デザリア・王宮〜
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「風邪か?」
クシャミした事に心配するヒューゴに顔を覗き込まれイオリは苦笑した。
「いいえ。
大丈夫です。」
晴れて砂の国デザリアにもホワイトキャビンが進出する事になり、目の前では怒涛の話し合いが行われていた。
大方、グラトニー商会の会頭ロスとラバン商会の会頭タージが言い争っているのだが、当のイオリは姿を消す様に部屋の隅でゼンの毛繕いをしていた。
「・・・どちらにせよ。
ホワイトキャビンの運営はバートに任されている。
こちらにも代理を置けば良いだろう。」
「だから!
その代理が難しいんでしょうが!
大体ね。
商人の中で非営利を考える人間なんていないんですよ。」
「ほう。
お前の商会は人材不足か。」
「そういう事を言っているんじゃないの。
商売の世界に飛び込んでくる人間は根底の考えが利益を欲しているって言っているの。」
「バートはやっている。」
「アイツはグラトニー一族のボンボンの癖に、変わってるんだよ。」
「お褒めいただき、有難う御座います。」
呆れた様に言うタージにロスの秘書でありバートの父のリロイが嬉しそうに口を開いた。
「褒めてるわけじゃないですよ?
リロイさん。
まぁ、大切な個性だとは思います。
バートは素晴らしい仕事をしているんでしょう。
でも、アイツと同じ人材をデザリアで見つけるとなると大変なんですよ。」
疲れた様に溜息を吐くタージは天井を見上げた。
「でしたら。」
それまで静かに見守っていたリルラが微笑んだ。
「それでしたら、サミーを推薦いたしましょう。」
リルラは後に控えるクマの獣人サミーを手で示した。
「事は我らホワイトキャビンの事。
我らの旅団から選出しても問題ないはずです。
サミーは多くの国で商売をしてきて経験も豊富。
加えて、絶対的に他の人材には負けない要因があります。」
「ほう、それは?」
興味深そうに口を緩めたロスに問いかけられるとリルラは目に力を込めた。
「イオリ様を裏切らない。
その一点において、我々旅団はどんな人材にも負けません。」
そう、タージが心配しているのは、そう言う事なのだ。
どんなに自分が命令しても非営利の慈善事業に嫌気が膨らみ、問題を起こすのではないかと考えていた。
だから、無条件でイオリを信頼して働いているバートがおかしいと言っていたのだ。
それがホワイトキャビンの中で人材を置いてくれるのは有り難い。
サミーが代理としてデザリアに商会を立ち上げラバン商会が後ろ盾となって支えれば、周りの商会も文句はないだろう。
「適任だな。
タージ。
お前はどうだ?」
「願ってもないよ。ロス兄さん。
サミーさんは旅団を離れる事に文句はないのかい?」
タージに話しかけられれば、サミーは笑顔で頷いた。
「喜んでお引き受け致します。
どうぞ、宜しくお願い致します。」
トントンと話が決まっていく様をイオリは感心して見ていた。
「・・・分かってるか?
お前の商会の事だぞ?」
ポケッと見ていたイオリにヒューゴが囁いた。
「・・・えぇ、まぁ・・・はい。
分かっていますが・・・好きにしてくれれば良いかと。
心配なく旅を続けられるのなら、俺は文句ないです。」
経営を放棄しているイオリにとって、力になってくれる人間は大切な存在だった。
そんな大切な存在であるバートがチョコレートを口に出来なく、しょぼくれている事など知りもしないイオリであった。
クシャミした事に心配するヒューゴに顔を覗き込まれイオリは苦笑した。
「いいえ。
大丈夫です。」
晴れて砂の国デザリアにもホワイトキャビンが進出する事になり、目の前では怒涛の話し合いが行われていた。
大方、グラトニー商会の会頭ロスとラバン商会の会頭タージが言い争っているのだが、当のイオリは姿を消す様に部屋の隅でゼンの毛繕いをしていた。
「・・・どちらにせよ。
ホワイトキャビンの運営はバートに任されている。
こちらにも代理を置けば良いだろう。」
「だから!
その代理が難しいんでしょうが!
大体ね。
商人の中で非営利を考える人間なんていないんですよ。」
「ほう。
お前の商会は人材不足か。」
「そういう事を言っているんじゃないの。
商売の世界に飛び込んでくる人間は根底の考えが利益を欲しているって言っているの。」
「バートはやっている。」
「アイツはグラトニー一族のボンボンの癖に、変わってるんだよ。」
「お褒めいただき、有難う御座います。」
呆れた様に言うタージにロスの秘書でありバートの父のリロイが嬉しそうに口を開いた。
「褒めてるわけじゃないですよ?
リロイさん。
まぁ、大切な個性だとは思います。
バートは素晴らしい仕事をしているんでしょう。
でも、アイツと同じ人材をデザリアで見つけるとなると大変なんですよ。」
疲れた様に溜息を吐くタージは天井を見上げた。
「でしたら。」
それまで静かに見守っていたリルラが微笑んだ。
「それでしたら、サミーを推薦いたしましょう。」
リルラは後に控えるクマの獣人サミーを手で示した。
「事は我らホワイトキャビンの事。
我らの旅団から選出しても問題ないはずです。
サミーは多くの国で商売をしてきて経験も豊富。
加えて、絶対的に他の人材には負けない要因があります。」
「ほう、それは?」
興味深そうに口を緩めたロスに問いかけられるとリルラは目に力を込めた。
「イオリ様を裏切らない。
その一点において、我々旅団はどんな人材にも負けません。」
そう、タージが心配しているのは、そう言う事なのだ。
どんなに自分が命令しても非営利の慈善事業に嫌気が膨らみ、問題を起こすのではないかと考えていた。
だから、無条件でイオリを信頼して働いているバートがおかしいと言っていたのだ。
それがホワイトキャビンの中で人材を置いてくれるのは有り難い。
サミーが代理としてデザリアに商会を立ち上げラバン商会が後ろ盾となって支えれば、周りの商会も文句はないだろう。
「適任だな。
タージ。
お前はどうだ?」
「願ってもないよ。ロス兄さん。
サミーさんは旅団を離れる事に文句はないのかい?」
タージに話しかけられれば、サミーは笑顔で頷いた。
「喜んでお引き受け致します。
どうぞ、宜しくお願い致します。」
トントンと話が決まっていく様をイオリは感心して見ていた。
「・・・分かってるか?
お前の商会の事だぞ?」
ポケッと見ていたイオリにヒューゴが囁いた。
「・・・えぇ、まぁ・・・はい。
分かっていますが・・・好きにしてくれれば良いかと。
心配なく旅を続けられるのなら、俺は文句ないです。」
経営を放棄しているイオリにとって、力になってくれる人間は大切な存在だった。
そんな大切な存在であるバートがチョコレートを口に出来なく、しょぼくれている事など知りもしないイオリであった。
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