続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜デザリア・ダンジョン〜

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「ゼン。
 やろうか。」

『いつでもいいよ。』

 相棒のゼンは実に楽しそうである。

「ハサミより、あの毒の尻尾の方が面倒だよね。」

 イオリが呟くとゼンが頷いた。

『あれさえなければ、あとは楽かな。
 イオリがどうにかしてよ。』

 簡単に言ってくれる。

 イオリはゼンの物言いに苦笑しながら、スナイパーライフルを担いだ。

「それじゃ、まずは尻尾ね。
 ゼンはジョムシードの視線を惹きつけて。」

『了解!
 行くよ!』

 2人は走り出した。
 
 ゼンがイオリより前を走り威嚇をするとジョムシードは自然にゼンに狙いを定めてハサミを振り下ろしてきた。
 状態を捻るように攻撃してきたジョムシードの尾が頭上に振り上がったのを確認すると、イオリは走りながら狙いを定めた。

「まずは1つ。」

ドカンっ!!

 鋼鉄弾を撃ち込むと、ジョムシードの尾は弾けるように体から吹き飛ばされていった。

「ギャァァァ!!」

「よしっ!」

 弾けた毒が飛び散るのを器用に避け、ゼンと合流したイオリはニッコリと笑った。

「命中!」

『流石だね。
 あっ・・・やっぱり、あの子怒ってるよ。』

 当たり前の事ではあるが、怒ったジョムシードは紫の体を真っ赤に染めて殺気を込めて威嚇をしている。
 ハサミをガチンッガチンッと鳴らし、牙が生えた口からは緑色の液体が流れ出ている。

「あれ?
 口から出てる緑の液体って・・・毒じゃない?
 えーーーー!!
 尻尾だけじゃなくて口からも出てるじゃん!!
 シモンさん、話が違うよ・・・。」

 イオリとゼンはヨダレのように流れ出る毒が砂に落ちて蒸気を発しているのを目にして顔を顰めて後退りをした。

 ジョムシードはハサミを使い、砂の中に潜り込んでいく。
 イオリとて砂の中では簡単に攻撃をする事ができない。 

 どこから出てくるのか、目を凝らすイオリをゼンが咥えて飛び上がった。

『イオリ!!』

ドーン!!

 直後、足下に渦の模様ができ、ジョムシードが大口を開けて飛び出てきた。

「おっと!」

 思った以上に動きの速い相手に反応の遅れたイオリは身を捩りながらゼンに跨った。
 
『危ないよ!
 気をつけて!』

「ごめんごめん。」

 ゼンの叱責にイオリは苦笑した。
 
 狙いが外れたと再び砂に潜るジョムシードは完全にイオリに狙いを定めている。

「あの砂の中から引き摺り出したいね・・・って、ゼン!?
 飛んでるの?」

『あれ?』

 ジョムシードの攻撃からイオリを引き離したゼンは、何故だか空中を駆けていた。
 どうやら自分でも意識をしていなかったらしい。

 これまでだって空中戦はやってきた。
 しかし、それは木や瓦礫などの足場があってこその話だ。
 今のゼンは空間を蹴り上がるように走っている。

『本当だ!
 なんで!?
 ねー!なんで!?』

 驚くゼンは空中でアタフタと身を捻り始めた。
 イオリは振り落とされないように必死だ。

「わっ!
 待って!落ち着いて!
 きっと、リュオン様が言ってた新しい力ってやつだよ。
 ほら、ダグスクの教会で会いにいった時に新しい力を授けるって言ってたじゃないか。」

 キョトンとしたゼンは思い出したように頷いた。

『あぁ、言ってたね。
 アレって空を飛べる力のことだったのかぁ。』

 自分の事なのに、どこかピンときていない様なゼンは確かめるように空中で飛び跳ねて見せた。

「なるほどね。
 蟻地獄のようなジョムシードの罠にはゼンの飛行能力は強みだね。
 驚かされてばかりだけど、そろそろ俺の番だな。」

 そう言うとイオリはスナイパーライフルを頭上に向け銃弾を撃ち放った。
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