続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜デザリア・ダンジョン〜

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「イオリ殿が1人で戦うと!?
 危険すぎる!」

 戸惑うシモン・ヤティムとは違って、イオリの真意を図ろうとジッと見つめていたヒューゴが溜息を吐いた。

「わかった。
 手が欲しかったら、すぐに言えよ。」

 自分はシールドで子供達を守る事に徹すると決めたヒューゴの言葉にイオリは感謝の笑みを浮かべた。

「オレも戦いたかった・・・。」

 がっかりするスコルの頭をイオリは撫でた。

「分かってるさ。
 でも、今回ばかりは譲ってよ。」

 子供の言う事は基本的に聞いてあげるイオリが何故が退く様子がない。
 スコルは納得するとニッコリと頷いた。

「いいよ。
 その代わり、あの硬いっていうハサミを持って帰ろう。
 カサドさんのお土産ね。」

 いたずら顔のスコルはニヤリとした。

 『こんなもん、どーしろってんだ!
  馬鹿野郎!』

 怒鳴り散らすポーレットの鍛治屋のオヤジを想像し、イオリはクスッと笑った。

「分かったよ。
 あのハサミの部分は傷つけないよ。」

 イオリは子供達の頭を1人1人撫でると、ゼンを連れてヒューゴのシールドから出て行った。

「ジョムシード相手に1人でなんて無茶だ・・・。」

 青褪めているシモン・ヤティムに子供達が笑いかけた。

「大丈夫。
 イオリは1人じゃないもん!」

「そうだよ。
 ゼンちゃんがいるよ。」

「それに、イオリってすっごい強いんだよ。」

「うん。
 絶対に大丈夫!」

 それでもシモン・ヤティムの心配は消え去る事がない。

「恐らく・・・恐らく、イオリはジョムシードの強さが分かっているんでしょう。
 本来、イオリの戦い方は1人です。
 俺や子供達に合わせる器用さを持っているだけの事。
 アイツが1人で戦うとなったら、俺達は邪魔にならないようにする。
 それが最善の戦略なんですよ。」

 普段と違い、心の底から優しく微笑むヒューゴにシモン・ヤティムは息を呑んだ。
 彼は仲間の力を一寸も疑っていないのだ。
 

 イオリとゼンが走り出したのを見送った直後の事だった。

ドカンっ!!

 一国の魔法使いの不安を吹き飛ばすかのように、イオリの放った一撃がジョムシードの尾を吹き飛ばした。

 ジョムシードの体は鎧のように幾重にも硬い甲羅で覆われている。
 毒を貯蔵する尾も例外ではなく、誰もが狙い定め挑み、そして散って行く難関な部位でもある。
 尾が短くなり、怒りに染まったジョムシードは紫だった体の色を真っ赤に染めて威嚇し始めた。

 目の前で繰り出された攻撃が一瞬で形勢を変えた事にシモン・ヤティムは驚愕していた。
 
 誇らしげに見上げてくる子供達の視線から顔を背け咳払いをした。

「コホンっ。
 どうやら、大丈夫のようだね。」
 
 1人で戦うと言ったイオリは強さの底力を見せていない。
 いや、未だかつて誰にだって見せたの事などないのだろう。

 自国の救世主となった若者はダンジョン攻略者にも名乗りを上げるようだと、シモン・ヤティムは驚嘆するのだった。

 



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