続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜デザリア・ダンジョン〜

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「危なかった・・・。
 何やってんだ。イオリは!」

 砂に潜り込んだジョムシードがイオリを襲うのを見てヒューゴはハラハラしていた。

「ゼンが機転を効かせたから助かったものの、あのままだと今頃は巨大サソリの口の中だぞ。
 アイツに限って油断なんてないと思うが・・・って、ゼン?」

 ゼンの変化に気づいたのはヒューゴだけではない。
 子供達もゼンが空を駆けているのをポカンとして見ていた。
 
「素晴らしいな!
 フェンリルは空まで飛ぶのか!?
 伝説ゆえに、未だに彼らの生態は解明されていないのだろうが、まさか空を駆け上がるとは・・・。
 こんなに間近で見る日がくるとは思わなかったぞ。」

 どこか興奮気味のシモン・ヤティムに子供達は一斉に振り返って首を振った。

「フェンリルって、空飛ぶの?
 ゼンちゃん、空飛べなかったよ?」

「うん。ジャンプ力はあるけど、空は飛ばない。」

「ねー、何でゼンちゃん空飛んでるの?」

「兄様、何でー?」

 そう言われてもシモン・ヤティムもヒューゴも答えを持ち合わせていない。

 困ったように顔を見合わすと、お互いに深い溜息を吐いた。

「見て下さい。本人も戸惑ってる様子です。
 この旅で新しい能力に目覚めたのでしょうか・・・。」

「君達が知らないとなると、そうなのだろう。
 しかし、他のフェンリルとは違うの特性かもしれない。
 確かな事は後ほど、彼らに聞くとしよう。」

 今、考えたところで無意味と悟ったシモン・ヤティムは短い間であるがイオリ達と過ごした事でを学んだようだ。

 再びイオリ達の戦闘に集中すれば、イオリが頭上に向けて銃を向けている。

「敵を狙うのではなく、何を・・・。」

 ヒューゴが呟くと、イオリが構えたスナイパーライフルから瞬く間に巨大な水の球体が出来上がっていた。

 イオリは迷いなく、その大玉の水を渦の中に撃ち込んだ。

ギャッ!!

 攻撃が当たると短い悲鳴が聞こえ、ジョムシードが砂から顔を出した。
 今にもイオリ達に向けて毒を吐き出しそうな構えだ。

 その隙を与えないのがイオリであった。

 即座に雷の銃弾を連続して撃ち込むイオリの姿にシモン・ヤティムは目を見開いた。

「砂に雷は効かんと言ったはずだが・・・。」

 しかし次の瞬間、シモン・ヤティムの常識を覆してジョムシードが絶叫をあげて飛び出してきた。

ギャババババ!!!

「出てきたな。
 そこから、どうする?イオリ。
 相手は全身が鎧で守られている防御力もある魔獣だぞ。」

 イオリに語りかけるように呟くヒューゴは、どこか楽しそうだった。
 緊迫した状況であるにも関わらず、それでもイオリがどうにかすると信じているのだ。

 ヒューゴの言葉が届いたかのように、間髪入れずにイオリとゼンは急降下してジョムシードに襲いかかったのだった。
 
 
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