続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜デザリア・ダンジョン〜

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「あれが冒険者ギルドです。」

 ゴヴァンが示す方に目をやれば、これまた派手な看板が見てとれた。

「これは迷子になっても見失わないな。」

 緑や紫で縁取られた看板に大きく《冒険者ギルド》と書かれ下に《どんな小さな仕事受注します。》と宣伝が書かれ、冒険者宛てには《死にたくない弱虫は失せな。》と殴り書きがされていた。

 ヒューゴが苦笑するとイオリも笑い出した。

「看板に注意書きがされているのは初めて見ました。
 面白そうですね。」

「まあな。
 お前らも気をつけろよ。」

 初めて入るギルドは毎回品定めをされる。
 子供連れの若き冒険者達は目をつけられる事も多い。
 それもアースガイルではポーレット公爵家やギルマスからもらった指輪を見せれば逃げ出して行くが、他国ではどう転ぶか分からない。
 子供達も分かっているのか、真剣な顔で頷くと双子がナギとニナを囲むように移動した。

「さて、行きますか。」

 イオリが扉を開けば、朝の冒険者ギルドというのに静寂に包まれていた。

_________

「ふわぁぁぁ。」

 砂漠の国デザリアの王都バッカスに拠点を置く冒険者ギルド本部の受付に座るエリーヌは大きな欠伸をした。

「おい。
 仕事中だぞ。」

 先輩職員のウパに睨まれると肩をすくめた。

「だって、どうせ誰も来ないじゃないですかー。
 ここ1週間は仕事っていう仕事していないですよー。」

「仕方ないだろう。
 ダンジョンの問題が起こっているんだから。
 それに、仕事ならあるぞ。」

「備品の在庫整理でしょう?
 そんなの一昨日に終わってますよ。
 品物が入ってこないんじゃ、片付ける物もありませんって。」

「うーむ。」

 唸るウパを放って、エリーヌは階段を見上げた。

「それより。ウパさん。
 さっきギルマスの部屋に入ったのって・・・。」

「筆頭魔法使いのシモン・ヤティム様だろう。
 ヤティム様ならギルマスと仲が良いから時々やってくるじゃないか。」

「そんな事は分かってるんですよ。
 私が言っているのはヤティム様が連れて来た2人組の事ですよ。
 新顔さんです。
 誰だか知ってます?」

 目をギラつかせるエリーヌにウパは顔を顰めた。

「・・・いや。
 ヤティム様とギルマスの客だ。
 無用な詮索はやめとけ。
 いつもお前は問題事を大きくするんだからな。」

「失礼な!
 私はいつも一生懸命なだけですよ!
 そんな事よりもウパさん呼ばれてますよ。」

 2階から見下ろしてきたサブマスのアールの形相にギクリとしてウパは慌てて階段を登って行った。

 1人残されたエリーヌは他にも暇そうな職員を観察しつつ、面倒臭そうに受付のファイルを片付け始めた。

ギギー・・・。

 ギルドの扉が開かれると真っ黒な戦闘服に包み込まれた若者が現れた。
 その後ろから、ゾロゾロと子供やら大きな男やらエルフやら熊の獣人やら入ってくる。

 真っ直ぐに受付にやってくる彼らにエリーヌは慌てて笑顔を作った。

「ようこそ。
 バッカスの冒険者ギルドへ。
 御用はなんでしょう?」

「アースガイルから来たんですけど、門兵さんに冒険者ギルドに行っておけって助言されまして。」

 その彼が出した冒険者のギルドカードを見てエリーヌはギョッとした。

「・・・えっ。Sランクー!!」

 自分の出しだ声に驚き口を抑えるエリーヌを真っ黒な若者は困った顔をしていた。
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