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旅路〜王都〜

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 ーーーフルーツ飴。

 溶かした砂糖でコーティングしたフルーツのお菓子である。
 屋台で見かける事も多いが甘味の歴史が薄い、この世界では知られていない。

 ハミルトン等によって配られたフルーツ飴に目を奪われたのは子供達だけではない。
 王妃シシリアを始めとしたオーブリーやココと言った貴族令嬢達も目を煌めかせている。

「フルーツに飴を絡ませただけですが、見た目も綺麗でしょう?
 召し上がってください。」

 イオリが声をかけると待ってましたとばかりに手が伸びる。
 食べ進める一同の顔を見えれば満足しているのが分かり易い位に分かる。

「えへへへ。」
「あははは。」
「ふふふふ。」
「にゃはぁ。」

 子供達は変な笑い方をしてはイチゴの飴がけを頬張っている。

「なるほどな。
 飴の製造法を知っていれば、こんな利用法もあるのか。
 実に美味いな。」

「はい。
 今回は、りんごとイチゴに葡萄、柑橘を用意しました。
 飴が甘いのでフルーツは少し酸味のあるものを選んだ方が良いようです。」

 イオリが説明をすると甘過ぎる物が苦手なヒューゴを始めとした男性陣も頷いた。

「本当に美味しいわ。
 道中に作ったと言う事は、オルガちゃんも知らないんじゃない?」

「確かに、そうですね。」

 イオリが頷くとシシリアは嬉しそうに微笑んだ。

「お手紙に書いちゃおうっと。」

「母上。
 叔母上を煽らないでください。」

 ディビットが苦言するとシシリアはムッとした。

「だって!だって!
 いつも自慢してくるのはオルガちゃんだもの!
 今回は私が初めてのお菓子の話をしても良いでしょう?」

「ほどほどにお願いします・・・。」

 ポーレット公爵夫人オルガの剥れる顔を思い出しイオリは苦笑した。

「甘い物も良いが、私はイオリの料理が食べたい。
 城の料理人達の腕も良いが、イオリの味が忘れられんのだ。」

「滞在中に作りますよ。」

「そうか!よしっ!」

 納得したのか、アルフレッドは再びリンゴの飴がけに手を伸ばした。

「父上、そろそろ宰相との時間ではないですか?」

「もうか・・・。あいつとは朝別れたばかりだぞ。」

 ギルバートの声かけにアルフレッドはウンザリした顔をした。
 どうやら、あの後、本当に朝まで執務をこなしていたらしい。
 疲れた体には甘い物とばかりにフルーツ飴をほおばり子供達の不興を買っているが気にする王ではない。

「子供達は私が預かりましょう。 
 ココもいるのです。
 絵本の話に花が咲くのではないかしら?」

 シシリアの申し出にイオリは礼を言った。

「では、参ろうか。
 お前達も来なさい。」

 アルフレッドはディビットとオーブリーにも声をかけた。

「御馳走様でした。
 それでは、シシィ様、ココさん。
 よろしくお願いします。
 みんな良い子でね。」

「「「「はーい!行ってらっしゃーい。」」」」

 イオリは部屋を出て扉が閉まる瞬間にココに抱きつく子供達を見て微笑んだのであった。

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