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愛し子の帰還

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 瞳を開けたイオリは立ち上がると、子供達とエドバルドの元に向かった。
 イオリ達が祈りを終えるのを静かに待っていた神父エドバルドはニッコリとした。

「お疲れ様でした。 
 リュオン様もお喜びでしょう。」

 イオリはニッコリと頷くと、腰バックから麻袋を取り出した。

「魔の森の花やハーブを使ったブレンドティーです。
 皆さんでどうぞ。
 図書館とかは順調ですか?」

 エドバルドはイオリから受け取った麻袋を開け香りを楽しんだ。

「あぁ、素晴らしい香りです。
 有難うございます。
 図書館はイオリさん達がお立ちになって半年後に開館しました。
 公爵夫人のお力添えで、その後も保育施設含めて順調でございます。
 イオリさんの言った通り、文字を読める子供が増え親達にも好評ですよ。
 お時間できましたら、お立ち寄り下さい。」

「えぇ、我が家にも図書館に興味がある子がいますんで、是非お伺いします。」

 図書館と聞いて、ソワソワしているナギの頭を撫でると、イオリは微笑んだ。
 再び訪れると約束してイオリ達はエドバルドに別れを告げた。

_ _ _ _ _ _


 その後、イオリは子供達に急かされながら冒険者ギルドに行った。

「確かに以前よりも人が多いですね。
 一応、受付に行きましょうか。」

 イオリが声をかけると、ヒューゴは柔かに2階を指さした。
 そこには受付嬢の制服を着たラーラがブンブンと手を振っていたのだ。

 子供達は嬉しそうに受付裏の階段を駆け上がって行く。
 イオリ達は人の視線を感じながらも、後について行った。

「お帰りなさい!!」

「「「「ただいま!!」」」」

 悶えるラーラはイオリとヒューゴに手を振ると、ギルマスの部屋に誘った。

「「「「ただいまー!!」」」」

 子供達の声にエルノールと話していたギルマスであるコジモは嬉しそうに笑った。

「ガハハハハ!
 帰ってきて早々に元気そうで何よりだ。
 おう、イオリ土産出せ。」

 相変わらずのギルマスにイオリは苦笑した。

「ギルマスってデリカシーがないですよね?
 お久しぶりです。
 ただいま帰りました。
 お変わりなく何よりです。
 キマイラとかコカトリスとかありますけど、ココで出しますか?」

 ご機嫌なギルマスはひとしきり笑うと急に真面目な顔をした。

 イオリ達はラーラにソファを勧められるとエルノールの反対側に座った。

「詳しい事はポーレット公爵から聞くだろうが、此処では冒険者に感する話をする。
 各地でダンジョンの消滅か確認されている。
 勿論、ダンジョンとは現れもするし消えもする。
 しかし、最近の消滅の量は異状だ。
 各地でダンジョンに挑んでいた冒険者達も消えてしまって問題になってるんだ。」

 コジモの話は思った以上に深刻そうだった。

「人為的と考えているんですか?」

「それすら分からない。
 元からダンジョンとは、そんなものだが・・・。
 同時に“エルフの里の戦士”も確認されているんだ。」

 イオリは静かに頷くと溜息を吐いた。

「天空のダンジョンも消滅したと聞きました。
 スカイヤに会いたいと思っていた俺にとっては残念な話です。」

 ギルマス・コジモはイオリの言葉に驚いていた。
 何故なら、“天空のダンジョン”の消滅の報告は届いたばかりだった。
 魔の森に篭っていたイオリが知っているはずがないのである。
 しかし、コジモは問い詰めるのをやめた。
 目の前の青年の不思議な力など過去に何度も見ている。
 だからこそ信頼しているのだ。
 彼の真面目さと優しさを・・・。

「ダンジョンがあった領地も混乱しているらしい。
 当然だ。
 ダンジョンにより冒険者が集まれば自領に儲けが出るからな。
 しかしな、それはギルドが口を出す話じゃ無いから公爵に聞いてみろ。」

「はい。分かりました。
 長い間、エルノールさんをお借りしました。
 有難うございます。
 ナギやニナだけでなく、俺達も色々と学ばせてもらいました。」

 イオリの言葉にギルマスは嬉しそうに頷いた。

「エルノールご苦労だった。
 イオリ達の修行の成果は?」

「えぇ、力だけあったSランクでなく経験値も上がったベテラン冒険者になりましたよ。
 イオリさんだけでなく、子供達もヒューゴさんも立派に成長されました。」

 エルノールの報告にギルマスは満足そうだった。

「それじゃ、これから仕事に戻れるな。
 こっちは大丈夫だったが、エルノールに頼みたい仕事もある。
 お前らも公爵邸に戻るんだろう?」

「はい。この後、ご挨拶に向かいます。」

 イオリとギルマスの会話を立っていたラーラが咳払いして止めた。

「ゴホンッ!
 問題なかった訳ないじゃ無いですか!!
 サブマスー!
 ギルマスに仕事してもらうの大変だったんですよ!
 ギルドは大丈夫です。サブマスに教えてもらった通りにみんなで頑張りました。
 でも、ギルマスの補佐はサブマスしか出来ませーん!!」

 半泣き状態のラーラの悲鳴にエルノールは氷の様な笑顔でギルマスを見つめた。

「ラーラを困らせていたんですね?
 大丈夫ですよ。ラーラ。
 明日から職務に戻ります。
 私に任せなさい。」

 ラーラを諌めるエルノールを横目に気不味い顔するギルマスに子供達はゲラゲラと笑った。
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