続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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愛し子の帰還

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『お帰りなさい。相沢さん。』

 虹色の髪をきらめかせ、絶対神リュオンは微笑みを持ってイオリを迎えた。

「ただいま帰りました。」

『えぇ、お久しぶりですね。
 貴方だけでなく、子供達やヒューゴさんの成長を喜ばしく思います。』

 そんなリュオンの側にゼンが走り寄った。

『ゼンも大きくなりましたね。
 相沢さんを守ってくれて有難う。』

 微笑むリュオンにゼンは甘えるように擦り付いた。

『僕、イオリと一緒が一番嬉しい!』

 リュオンはゼンの反応に嬉しそうに頷いた。

「暫くポーレットでゆっくりてから、スカイヤを会いに行こうと思います。」

 イオリは大きな真っ白なドラゴンを思い出しながらニッコリした。
 そんなイオリにリュオンは眉を下げた。

『・・・えぇ。
 彼も貴方を待っているでしょう。』

「・・・何かありましたか?」

 イオリはリュオンが苦しそうにしているのに気づき困惑したように聞いた。

がスカイヤの元に行きました。」

 イオリはリュオンの言っている事を瞬時に理解して目を見開き、囁いた。

「スカイヤは無事なのですよね?」

 ドラゴンのスカイヤが例え、エルフの里の戦士と言えども簡単にやられるとは考えられない。
 
『無事です。
 しかし、彼の神殿は破壊されてしまいました。
 今は、別の場所で不貞腐れています。
 再び、彼の寝床とダンジョンが繋がるかは不明です。』

「そんな・・・。」

 絶句するイオリにリュオンは申し訳なさそうに言った。

『私は貴方に言いました。
 自由に生きて欲しいと・・・。
 今も偽りなく願っています。
 しかし・・・が動き出した今、いつ貴方に災いが降りかかるか分かりません。』

「ルミエールが動き出した?
 魂が蘇ったのですか?」

 渋い顔をしたイオリにリュオンは首を横に振った。

『魂が蘇る事などないのです。
 彼は1度、私の元に現れました。
 全世界に宣戦布告をすると・・・。
 しかし、貴方は知っているはずです。
 魂とはコントロール出来る物ではなく、してはならないのです。』

「ドミトリー・ドナードですね。
 かつて“悪魔の魔術師”と呼ばれた男・・・。 
 人の魂を掌握しようとすれば、自らの魂を疲弊し己の身を滅ぼしていきます。
 ドミトリー・ドナードはです。」

 リュオンはイオリの言わんとする事を理解し頷いた。

『人は脆弱で欲深く、愚かな間違いを起こしますが、同様に強靭さも見せる事もあれば、愛情深く道義的な考えを持ち合わせています。
 この矛盾こそが人間であり、愛おしいのです。

 ルミエールもかつては人間でした。
 そんな彼をこの世界に送り出し、エフルとして転生させたのは私です。
 彼がこの世界に与える影響を読み間違えた私の罪です。
 
 再び、彼が何らかの方法で蘇り、神の理を破るのであれば相沢さん。
 貴方にも闇が降りかかる可能性があります。
 それこそ、貴方の愛する自由を奪ってしまうかもしれません。』

 虹色の髪を靡かせる男にイオリはニッコリ微笑んだ。

「リュオン様。
 俺はリュオン様に送られた、この国が好きです。
 自分1人で生きるのは守る物が無く楽です。
 そして、そんな人間は死にいく時にすら何もなく死んでいくのだと思うんです。 
 俺はそんな人間でした。
 
 世界の平和に責任は持てません。
 だから、俺は出会った人達の笑顔を守るくらいとして選択したい。

 同じ様に思うんです。

 執着するものが無ければ、人はすんなりと死を受け入れます。
 それを拒む彼は・・・。

 エルフという魔力量の多い転生を果たしたルミエールが生きる上で執着している物は何なのか?

 特別、彼に思い入れは無いけれどポーレット・・・いやアースガイルに危険が及ぶのなら、俺が心安らかに旅が出来ないので止めることにします。」

 イオリの話を聞いていたリュオンとゼンは笑い出した。
 良い話をするかと思えば、最終的に自分勝手に話を締めたイオリに安心したのである。
 
『私は貴方を誇りに思います。
 良いでしょう。
 これ以上、私が沈む訳にはいきません。
 と出会うのなら、それもまた必然なのかもしれません。
 ならば、私は全力で貴方をサポートしましょう。
 
 再びルミエールが世界を混沌に追い込むとしても、私は愛する全ての生命を信じます。
 休んだらスカイヤに会いに行ってください。
 
 どうか、貴方の旅に誠の平和がありますように。』

「行ってきます。リュオン様。」

 手を振り去っていくイオリとゼンにリュオンは微笑んだ。

 リュオンは、年月を通しても変わらぬイオリに救われた気分だった。


「けして・・・けして、貴方の思い通りにはなりませんよ。
 ルミエール。」 

 愛する“愛し子”が進む先に待つにリュオンは呟いた。
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