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第五章
驚愕
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「なん…だ、一体何者だ此奴は?!」
唖然とした声が空気に溶けて消える。薄暗くとも絢爛さが分かる室内に佇むのは、豪華で重厚なローブを纏った高身長の男だった。
時は一刻ほど前に遡る。
「ぐっ?!」
男の頭に突如訪れた激痛が走る。
まるで、しっかりと収まっていたモノを無理矢理引き剥がされるようなそれは、およそ五秒程続いた。
こめかみを押さえていた男は重い息を吐き、次いでギリ…と歯を軋ませる。
痛みと共に消えた『何か』。それは他でもない、男が長火竜にかけた『魅了』そして『呪い』だった。
「どういうことだ!?私の『縛り』が…消えた…!火竜が死んだ…のか!?」
半日前、腹心の部下であるラシャドに命じて姫を迎えに行かせた。
砂漠の路には必須の火竜達と共に。もしや、別種の魔獣から奇襲を受けたかと考える。
ーーいや。だったら『魅了』も『呪い』も消滅するだけで、術者に激痛をもたらす筈などあり得ない。
ラシャドとの思念通信は火竜を通していた為、繋がりを絶たれてしまっては、何が起こったのか知る術がない。男は荒々しく手に持った杖を絨毯に突き刺し、苛立ちを示した。
「不味いぞ。姫が手に入らなければ、私の悲願が…!」
とにかく、不測の事態が起きたのは明白。
一刻も早くそれを把握すべく、男は使役した風魔鳥を己の『目』とし、砂漠へと放ったのだったが…。
ようやく我が国に向かっている一群を捉える。
それは間違いなく、人を乗せた火竜の群れだった。
はっきりは見えないが、騎乗しているのは服装から自国の者達だと知れた。だが、どこか違和感がある。
『姫は何処だ。ラシャドは…』
認識阻害は掛かっているが、念を入れて視力が届くぎりぎりの高さで飛び、先陣の一頭に注視する。
間違いなく、あれは自分が使役していた長火竜。ならば騎手はラシャドでなければならないのに。
『!!』
姫はいた。他ならぬ長火竜に乗って。
だが、共に乗っているのは腹心の部下ではなく、兄であるザビル将軍。そして、白い仮面を被った怪しい風体の男だったのだ。
「馬鹿な…!い、一体、どうやって…」
鳥の目を通して見た、信じがたい光景に男は唖然とする。
気づけば、長の直ぐ後ろにいる火竜にラシャドが騎乗していた。親衛隊も周りを囲むように後方に固まっている。
なのに、誰も何もしようとせず大人しくしているだと…?!
『っ…!!』
不意に、仮面の男が遥か頭上を飛翔している自分を…正しくは魔鳥を見上げた、ような気がした。
そんな訳がない、纏う風の魔力で認識を阻害しているのだから。
だが…どうしてだろう。
仮面の男は、確かに自分を認識していて、しかも『目』を合わせている。そう思わざるを得ない程の視線を感じた、その瞬間だった。
「――?!ッ!!ぐあっ!!」
バチン!と衝撃が双眼にかかり、思わず目を閉じる。
火竜に掛けた縛りが消えた時とは比べ物にならないが、似通った痛みを感じ、思わず小さな悲鳴を上げてしまう。
直ぐに収まったものの、同調させていた魔鳥の『目』は己のそれらから消失していた。
「魔鳥の『縛り』を、破っただと…?!」
男は漸く理解した。
あの仮面の男が、火竜にかけた『魅了』を『呪い』ごと破壊し、尚且つ使役し直したのだと。それが意味する事…。
「私と同じ、魅了師か…!」
能力は未知数、だが火竜に掛けた『魅了』と『呪い』を破れるならば、自分より力は上…!?
男はギリリと軋む程強く杖を握り締める。その手は白くなり、血管が浮き出た表皮に汗が滲んだ。
唖然とした声が空気に溶けて消える。薄暗くとも絢爛さが分かる室内に佇むのは、豪華で重厚なローブを纏った高身長の男だった。
時は一刻ほど前に遡る。
「ぐっ?!」
男の頭に突如訪れた激痛が走る。
まるで、しっかりと収まっていたモノを無理矢理引き剥がされるようなそれは、およそ五秒程続いた。
こめかみを押さえていた男は重い息を吐き、次いでギリ…と歯を軋ませる。
痛みと共に消えた『何か』。それは他でもない、男が長火竜にかけた『魅了』そして『呪い』だった。
「どういうことだ!?私の『縛り』が…消えた…!火竜が死んだ…のか!?」
半日前、腹心の部下であるラシャドに命じて姫を迎えに行かせた。
砂漠の路には必須の火竜達と共に。もしや、別種の魔獣から奇襲を受けたかと考える。
ーーいや。だったら『魅了』も『呪い』も消滅するだけで、術者に激痛をもたらす筈などあり得ない。
ラシャドとの思念通信は火竜を通していた為、繋がりを絶たれてしまっては、何が起こったのか知る術がない。男は荒々しく手に持った杖を絨毯に突き刺し、苛立ちを示した。
「不味いぞ。姫が手に入らなければ、私の悲願が…!」
とにかく、不測の事態が起きたのは明白。
一刻も早くそれを把握すべく、男は使役した風魔鳥を己の『目』とし、砂漠へと放ったのだったが…。
ようやく我が国に向かっている一群を捉える。
それは間違いなく、人を乗せた火竜の群れだった。
はっきりは見えないが、騎乗しているのは服装から自国の者達だと知れた。だが、どこか違和感がある。
『姫は何処だ。ラシャドは…』
認識阻害は掛かっているが、念を入れて視力が届くぎりぎりの高さで飛び、先陣の一頭に注視する。
間違いなく、あれは自分が使役していた長火竜。ならば騎手はラシャドでなければならないのに。
『!!』
姫はいた。他ならぬ長火竜に乗って。
だが、共に乗っているのは腹心の部下ではなく、兄であるザビル将軍。そして、白い仮面を被った怪しい風体の男だったのだ。
「馬鹿な…!い、一体、どうやって…」
鳥の目を通して見た、信じがたい光景に男は唖然とする。
気づけば、長の直ぐ後ろにいる火竜にラシャドが騎乗していた。親衛隊も周りを囲むように後方に固まっている。
なのに、誰も何もしようとせず大人しくしているだと…?!
『っ…!!』
不意に、仮面の男が遥か頭上を飛翔している自分を…正しくは魔鳥を見上げた、ような気がした。
そんな訳がない、纏う風の魔力で認識を阻害しているのだから。
だが…どうしてだろう。
仮面の男は、確かに自分を認識していて、しかも『目』を合わせている。そう思わざるを得ない程の視線を感じた、その瞬間だった。
「――?!ッ!!ぐあっ!!」
バチン!と衝撃が双眼にかかり、思わず目を閉じる。
火竜に掛けた縛りが消えた時とは比べ物にならないが、似通った痛みを感じ、思わず小さな悲鳴を上げてしまう。
直ぐに収まったものの、同調させていた魔鳥の『目』は己のそれらから消失していた。
「魔鳥の『縛り』を、破っただと…?!」
男は漸く理解した。
あの仮面の男が、火竜にかけた『魅了』を『呪い』ごと破壊し、尚且つ使役し直したのだと。それが意味する事…。
「私と同じ、魅了師か…!」
能力は未知数、だが火竜に掛けた『魅了』と『呪い』を破れるならば、自分より力は上…!?
男はギリリと軋む程強く杖を握り締める。その手は白くなり、血管が浮き出た表皮に汗が滲んだ。
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