神の使徒は闇を走り、道化師は戯れる。ー 異世界、世直し道中記 ー

久遠 れんり

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漁師。ダナ

第61話 おやぁ?

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「お口に合いませんか?」
 カシアが、パンとともに持って来た煮物。

 一口すすると、スープカレーそのもの。
 具は主に芋だが、雑穀団子も入っていた。

「私たちは普段食べ慣れていますけれど、余所から来た方には少し辛いですよね…… えっ、どうして泣いて? そんなに、辛かったですか?」
 カグラは、涙をこぼしながら、顔を上げる。

 その表情に、カシアは胸をえぐられる。
 そしてその口から、静にそして、とんでもない言葉が飛び出してくる。
「好きだ……」
 その言葉に彼女は、当然の様に反応をする。
「はっ、えっ。本当に?」
 カシアは真っ赤になり、思わず周りを見回す。
 どの娘も、チラチラとカグラを見ている。

「あのっ、助けて貰ったときから…… わっ、わた」
「このスープを…… よければ作り方を教えてくれ」
 カグラは、椀を彼女に向かって突き出しながら、キラキラした顔でお願いをする。
 その時、周囲で何かが砕けるような音が幻聴された。当然だが、カシアは固まる。

「あー。はい。スープ。ですよね。そうですよねぇー。好きですかぁ。お口に合ったようでよかったです」
 そう言って彼女は、ふらふらよたよたと、どこかへ行ってしまった。

 それはさておき……
 だがしかし、カレーが普通に食われていた。
 そもそも、日本では普通に食べられているが、インドで食われていた料理が、十六世紀にヨーロッパに渡ったもの。
 
 現地では、そんなに特殊な物じゃない。
 そうなんだよ。
 この国は、スパイス大国。
 日常的に食われていてもおかしくはない。

 スパイスの調合比をざっと教えて貰い、彼は現物を把握した。
 彼が右手を突き上げると、どこかでファンファーレが鳴り響く。
 気がした。

 まあとにかく、スパイスはできた。
 後は、肉以外全部が揃えば、作ることができる。
 タマネギと、ニンジン、ジャガイモ。
 特にジャガイモは、毒芋に分類されるだろうが、きっと皆に喜ばれるはず。
 それに、サツマイモだ。
 急に、大学芋が食いたくなった。

 あーでもそれなら、食用油が必要。
 菜種系ならだいこんとか?

 まあいい。
 自分からしたいことを見つけて、ドンドン忙しくなっていくカグラ、彼は一体どこへ向かうのか?

 とりあえず、岬の秘密工場へ向かった。

「どう、調子は?」
「あっ、カグラさんだ」
 わーっと集まってくるのは、カイサやアウラのちびっ子グループ。
 彼女達は、十一歳とかで親に売られた口だ。

「カビは生えたか?」
「生えた。でもカビだらけだから、もう食べられないよ」
 鰹節に付けているカビの種類はユーロティウム。
 日本では、カワキコウジカビとかカツオブシコウジカビと呼ばれている、カビ毒を産生しない優良カビである。乾燥工程で、こいつを噴霧して選択的に増殖させる。
「大丈夫。あのカビは悪さをせず、ひたすら乾燥させるだけだから」
「へー」
 彼女達は、色々なことに興味芯々で、勉強も教えている。
 まあ記憶にある小学生程度だが。

 だけど、先生の責任で、たまに計算式の中にx独立変数が入っていたり、y従属変数が使われたりするのはご愛敬だ。
 使った方が簡単なんだよ。
 生活に使える物とかって言うと、三平方の定理とか、皆大好き支点、力点、作用点。
 そう、てこの原理。

 まあそんな、実用的なことを教えている。
 後は最低限の読みか書きだ。
 この世界、知らない方が悪いという考えが主力だからな。

 そしてまあ、レオニー十七歳と、ローデ十五歳、ジェンカ十五歳。
 彼女達は、冒険者になるために村を出たら、途中で宿にいた男に騙されて売られた。訳も分からずサインをした口だ。

 あとは、ロゼール二十歳。
 アンナ十九歳、リーナ十九歳。二人とともに冒険者。輸送依頼を受けて、ミスって輸送していたブツを破壊。違約金を払う羽目になって、売られた。

 ルースは十八歳。飲み屋で働いていて、尻を触ってきた男を蹴ったら、打ち所が悪く、怪我の弁済をするために借金。
 まともに、聖魔法で治療を受けるとバカ高いらしい。
 だけど金貨数枚で、体を売るのかと聞くと、言わば労働奴隷的な物らしい。
「他の仕事だと、結構お勤めが長くなるのよ。だったら我慢をしてすぐ借金を返した方が良いじゃ無い」
 と言う事だそうだ。

 ある程度以上の金額になると、大抵強制労働となるようだ。
 まあこの世界、逃げたら見つけるのは難しいからな。

 毒性のある避妊薬は、病気予防にもなっているとのことだ。

 皆に食料の説明と、不自由なところはないかを聞く。
「不自由ねぇ。カグラがたまに相手をしてくれれば嬉しいけれど」
「それ、良いわね」
 ルースが言った言葉に、アダルト組のロゼール達が賛同する。

 彼女達は大陸中央部と違い、赤毛でブラウンの目が多い。
 色白で日焼けをすると、赤くなるタイプ。
 彫りが深く鼻筋が通って、すこし上唇は薄めで輪郭は卵形。

 そう、美人が多い。
 冗談でもそう言われると、すこし嬉しくなってしまう。

「ははっ、ありがとう。じゃあ食料は補充しておいたから」
 そう言って、カグラは工場を後にする。

「ちぇー、本気なのにねえ」
「そうね」

 ただ、彼女達も、助けられたときにカグラの横にいたディアナとヴァイオレットのことは覚えているので、無理矢理とかはしない。
 特に、ヴァイオレットの振る舞いは貴族ぽい。
 そのため、カグラも貴族の子弟ではないかと思われている。

 その日、夜のうちに必要野菜の改良ダンスが終わり、翌日には空き地を借りて畑にする。

「こちらは、サツマイモ。こっちはジャガイモ。長芋」
 そしてまた別の所に、種をばらまき薄く土をかぶせる。

「菜種、そしてだいこん」
 また耕し、種を植える。

「ここはトウモロコシ。ハニーバンタム系とサトウキビそして、テンサイ。これで良し」
 そう言って、ダナの家に帰ると少し休む。

 寝ていて、ディアナが覆い被さろうとしたときに、跳ね起きるカグラ。
「また大豆を植えるのを忘れた」
 もう、日が落ちそうなのに、外へ飛び出していく。

 その家の中では、なぜかデルデンが料理をしながら、子守りをしていた。
 
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