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本編
第53話 『逃亡の黒幕と』 ②
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「アイザイア様!」
「……ルーサー、何か進展は?」
そして、ベアリング元伯爵家のお屋敷を出ていくと、アイザイア様と私の元にほかでもないルーサーさんが駆け寄ってきました。ちなみに、もう招待客はまばらになっています。どうやら、騎士の方々が本日のお茶会は終了だと通達をされたようです。そして、本日の本当の目的も。
「いいえ、申し訳ございません。居場所を掴むことは……できませんでした」
「そうか。まぁ、いい。どうせ大した場所には行けないからな。モニカ、ちょっといいかな?」
「……はい?」
アイザイア様が、ふと私に視線を向けてこられます。先ほどまでの厳しい視線は何処かにやり、私に向ける視線はとても優しいものでした。それに、少しばかり安心しながら私は何があったのかと思考回路を張り巡らせます。
「……今回の黒幕は、アラン・ベアリングだ。……それが分かっていたからこそ、モニカにもきつく当たってしまった。……ってことかな、一応」
「一応?」
「あぁ、そうだね。嫉妬をしたのは本当だし、あの時モニカに言ったことは間違いなく本当の気持ちだった。……俺はね、モニカを愛しているの。分かってくれる?」
そうおっしゃって、アイザイア様が私の顔を覗き込んでこられます。……すべて、今日のための演技だったというわけでは、ないのですね、なんて。でも、嬉しかった。だって、アイザイア様が心の底から嫉妬してくださったこと、さらにはあの時私のことを「愛している」とおっしゃってくださったこと。……それは、私にとってとても嬉しいことでしたから。
「レノーレ嬢に近づいて、モニカに嫌な思いもたくさんさせてしまった。レノーレ嬢に攻撃されるモニカを、正面から守ることも出来なかった。……でも、これからはきちんと守るよ。俺は、モニカだけが好きだから」
「……アイザイア様」
そのお言葉が、嬉しかった。もう、今までのことはすべてどうでもいいや。そう思えるぐらい、嬉しかった。だけど、そう言うわけにはいきません。だって、まだすべてが終わったわけではありませんから。アラン様のことが、まだ残っているのだもの。
「わ、私、私も、アイザイア様のことが好き、です。お慕いしております。……ですから、その……」
でも、これぐらいは伝えてもいいでしょう? そう自らに言い聞かせて、私はアイザイア様を見つめる。なんて言えばいいのかは、よくわからない。でも、でも。私の気持ちが伝われば、言葉なんてどうでもいい……と思う。
「……そっか。嬉しいよ。『粛清』がある程度終わったら、モニカと正式に婚姻しようと思っている。挙式も盛大に挙げてね。……まぁ、それまでにいろいろとあるだろうけれどさ」
「は、はいっ!」
こんな大切な時に、こんな風に想いを伝えあうなんて。普通からしたら、ありえないことかもしれない。それでも、少しくらいいじゃない。私はそう自分に言い聞かせて、アイザイア様に微笑みました。
「モニカ。俺は、ずっとモニカが好きだったよ。……出逢った日から、なんて言えるわけじゃないけれど……それでも、ずっと、ずっとモニカのことを想ってきた。……こんな婚約者で、嫉妬深い婚約者でも、いいかな?」
不安そうに、アイザイア様がそうおっしゃる。アイザイア様は、良いかな? なんて問いかけてこられるけれど……違うの。良いわけじゃないの。アイザイア様じゃなきゃ、ダメなの。私は、アイザイア様と一緒じゃないと嫌だから。
「私、アイザイア様じゃないと、嫌です。私……気が付いたのです。ずっと、アイザイア様のことが大好きだったって。アイザイア様だけを、慕っていたのだって」
「……モニカ」
嬉しくて、涙が零れてくる。でも、それを拭いながら必死に笑みを浮かべて、アイザイア様に応えた。すると、アイザイア様がふわりと私のことを抱きしめてくださる。それも嬉しくて、私もアイザイア様の背に手を回した。
「……じゃあ、最後の処理に行こうか。ルーサー、頼める?」
「はい、承知いたしております」
そんな声が、頭の上から聞こえてくる。最終決戦。世に言うそれが、今――始まる。
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