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本編
第43話 『どっちが……いいの?』 ①
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「モニカ様。お手紙が届いておりますよ」
その日の夜。私は自室にて普通に寛いでおりました。膝の上には読みかけの小説があり、その本にしおりをはさんでヴィニーからお手紙を受け取ります。王宮にやってくるお手紙はすでに検問されています。もちろん、私信なども検問されてしまうため、親しい人と営業以外はあまり送って来ません。
私はいつものようにまずは差出人の名前を見てみます。これは、お母様からですね。こっちは……御用達の仕立て屋に新作の生地が入荷したのでどうかというもの。こちらの仕立て屋、結構好きですから今度行ってみましょうか……。
そんな風に考えながら、私は手紙を一通一通見てみました。セールスと、仲のいい人からのお手紙。お茶会への招待状。そんな物眺めていると、ふと二つの封筒が視界に入りました。……これ、どちらも見たことがない封筒だわ。
「アイザイア様、から?」
そのうちの一通の差出人を見てみると、そこには「アイザイア・フェリシタル」と書かれていました。もしかして、本日のことかしら? そう思いながら、私はお手紙の中身を取り出して読んでみることにしました。アイザイア様は、お会いできない時間が続くと度々お手紙を下さるけれど……なんというか、普段と便箋も封筒も違うわ。新しいものに変えられたのかしら?
アイザイア様からのお手紙は、なんてことない世間話から始まっておりました。ゆっくりと続きを見てみると、一週間後に開かれるお茶会に一緒に参加しないか? とも書かれていました。どうにも、それ以前はまとまった時間が取れないそうです。……ほんの、五分でもいいのに。そう思いましたが、アイザイア様は多忙なお方。えぇ、そう。そう思って、自分を納得させます。
「ねぇ、ヴィニー。一週間後に開かれるお茶会って、何処の家が主催だったかしら?」
「えーっとですね……一週間後に開かれるお茶会で、モニカ様が参加できる規模のものは……ベアリング伯爵夫人が主催のお茶会ですね」
「……ベアリング、伯爵家」
そこは、アラン様のお家ではありませんか。主に王家に連なるものが参加できるお茶会は、伯爵以上の爵位のお家が主催するもののみです。だから、ヴィニーはそのお茶会を教えてくれたのでしょう。あ、そう言えば先ほどベアリング伯爵家から何か来ていたような……。まだ、見ていないのだけれど。
私は一旦思考回路をストップさせ、アイザイア様のお手紙の続きを読むことにしました。お茶会のことが書かれていた後に、紡がれていたお言葉は「きっと、そこで全てが終わるから」でした。……何が、終わるのでしょうか? そう思いましたが、きっとアイザイア様のことですから、アイザイア様なりの考えがあるのでしょう。私は、そう思い込み半ば無理やり自分を納得させました。……信じたい。信じなくちゃ。そう、自分自身に言い聞かせる。
そして、最後の最後に書かれていたお言葉。
――この間は、言い過ぎたと思っている。申し訳ない。
そう、書かれていました。その字は軽く震えているようにも見え、アイザイア様の想いが伝わってくるような気もしました。だから、私もお手紙にお返事を書くことを決めます。ヴィニーに便箋と封筒を持ってくるように指示を出し、その間に別の封筒の中身を見てみます。あ、これがベアリング伯爵夫人が主催のお茶会の招待状ね。確かに、一週間後だわ。……アイザイア様は、これに参加しようとされているのね。私と、一緒に。
(でも、ベアリング伯爵家で開かれるということは……レノーレ様も、いらっしゃるわよね)
そう思うと、一気に気分が下がってしまいました。だって、ベアリング伯爵家とビエナート侯爵家が治めている領地はお隣同士。そのため、お二人は幼馴染なのです。
いいえ、そんな暗いことばかり考えていてはだめです。明るいことを考えなくちゃ。そう思い、私はもう一通の見慣れない封筒に手を伸ばしました。検問は通っているということは、きっと安全なのでしょうが……。でも、やはり見たことがありませんね。そう思い、差出人を見てみます。そこに書かれていたお名前は――アラン・ベアリング。
「……アラン様?」
アラン様からお手紙を受け取ったことなど、一度もありません。だから、怪訝に思いながら私はアラン様のお手紙の中身を見てみることにしました。そこに書かれていたことは、レノーレ様の最近の行動について。それから、ベアリング伯爵家で開かれるお茶会にぜひとも参加してほしいというもの。そんなことが主でした。そして……レノーレ様に、気を付けた方がいいということも書いてありました。
(レノーレ様に、気を付ける? いつも気を張って応対しているけれど……でも、どうして?)
そう思いますが、ううんと首を横に振ります。レノーレ様はあんな過激な性格のお方。いつ何をされるか分かりません。そのため、気を付けるに越したことはないのです。人を疑うのは、好きじゃない。しかし、こういう立場にいるのですから、きちんとしなくては。
「モニカ様。便箋と封筒、ペンの用意が整いましたよ」
そんなことを考えていると、ヴィニーがそう声をかけてきます。なので、私は用意してもらった便箋などがある机に、向かったのです。
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