38 / 62
本編
第38話 『アランの告白』 ②
しおりを挟む
「あっ、そうだ。モニカ様に一つ、お願いがあるのです」
「……お願い、ですか?」
そんなことを考えていた私に告げられた、一つのお言葉。それは、聞いた当初は意味が分かりませんでした。だって、どうして今のお話の流れで「お願い」になるのでしょうか? そもそも、その「お願い」を私が叶えられるかどうかも、分かりませんし……。でも、聞くだけ聞いてみましょうか。私は、そう思いました。
「とりあえず、聞くだけならば……」
私はそう言って、アラン様のお言葉の続きを待ちました。すると、アラン様は私から露骨に視線を逸らされて、頬を軽く染めていらっしゃいました。……その様子は、まるで恋する乙女のよう。……私も、アイザイア様の前ではこんな表情をしていたのかな、なんて思ってしまいます。
「……少しだけ、一緒にお話をしてほしいんです。あ、もちろん無理に、とは言いません。ほんの少しだけで、いいんです。……少しばかり、モニカ様とお話がしたくて……」
アラン様は、そんなことをおっしゃって次に私の瞳をまっすぐに見つめていらっしゃいました。……私と、お話? そんなことが「お願い」の内容なのですか? そう思った私の頭の中には、何故かアイザイア様が浮かんでおりました。
アラン様とお話をしていたことをアイザイア様が知れば、きっとお怒りになるでしょう。……ううん、私はお怒りになってほしいんだ。無関心だけは、止めてほしい。だって、無関心が一番辛いんだもの。それに、私ばっかりが嫉妬するなんて不公平でしょう? そう思った私は、アラン様の「お願い」を聞くことにしました。
「はい、それぐらいならば、いいですよ」
そう言った私でしたが、後ろに控えていたヴィニーが「モニカ様……」と呟いたのが、聞こえてきてしまいました。後ろを振り向けば、そこには渋い顔をしたヴィニーが。もしかして、私の気持ちが伝わっていないのかしら? 私の、アイザイア様に嫉妬してもらいたいという気持ちが。私ばっかりが、嫉妬して。それがとても嫌なんですもの。
そんなことを考えていた私の頭の中には、この間のビエナート侯爵家での夜会のことがすっかり抜け落ちていました。あの時、多分アイザイア様は嫉妬してくださっていたというのに。
「大丈夫よ、ヴィニー。少しばかりお話をするだけだから」
なのに、私はそのことを思い出すことが出来なかった。だから、ヴィニーにそう言って笑いかけていました。少しだけ、ほんの少しお話をするだけ。たまには、いいじゃない。王宮の人以外の異性と会話をするのも、ちょっとは刺激になるじゃない。そんな、好奇心からの行動でした。好奇心は人を殺してしまうかもしれないのに。そんな言葉を、思い出すこともなかった。
それから、私とアラン様はほんのしばしお話をすることになりました。立ち話なんて……とも思いましたが、ほんの少しだけという条件が付いていたので、私はその場で立ち話をすることを選びました。ただ、アラン様のお話に相槌を打ち、時折私の意見も言う。お話の内容は多岐にわたりましたが、メインは最近読んだ本のことでした。アイザイア様とは出来ない会話の数々。……それでも。
(……アイザイア様、だったらなぁ……)
そう、思ってしまう私もいました。もしも、目の前の男性がアラン様ではなくて、アイザイア様だったら。そう思って、しまうのです。心の中にいらっしゃる男性は、いつだってアイザイア様。それ以外のお方なんて、想像もできない。今、アラン様と一緒に居るというのに。アラン様のことを、考えるべきなのに。
「……モニカ様?」
そんな私のことを怪訝に思われたのか、アラン様がそんなお言葉を投げかけていらっしゃいました。だから、私は苦笑を浮かべることしか出来ませんでした。それを見られたアラン様は、何故かくすっと声を上げられて笑われます。……いったい、何がおかしいとおっしゃるのでしょうか?
「……いえ、アイザイア様のことを、考えていらっしゃいましたよね?」
「……えぇ、まぁ」
アラン様のお言葉は、真実で。なんでバレてしまったのかは分からないものの、それでもそのお言葉を否定する気にはなれませんでした。だから、私は素直に認めたのです。アイザイア様のことを、考えていたということを。
すると、アラン様は何処か少しばかり寂しそうな表情になってしまわれる。……いったい、どうなさったと言うのだろうか? どうやら、私は人の感情にかなり鈍いらしいです。だからこそ……アイザイア様を、怒らせてしまう。だからこそ、こうやって人を困らせてしまうのかもしれない。
「羨ましいんです」
ポツリ、とアラン様からこぼれたお言葉は、そんなお言葉でした。羨ましい? いったい、何が? そう思ってしまいました。だって、アラン様だって恵まれたお生まれで、恵まれた育ちじゃない。確かに、お家のことはあるとは思うけれど……それでも、羨ましがることなんて私が知る限りでは、ないはずだ。
「……貴女に、そんなにも想っていただけるアイザイア様が、とても羨ましい。僕も……貴女に、そんな風に想ってほしいと思うのに」
だから、私はアラン様のそのお言葉の意味を、すぐに理解することが出来ませんでした。あ、アラン様が……アイザイア様のことを、羨ましい? それも……
(私に想ってもらえるからって、それじゃあ、まるで――)
――アラン様が、私のことを好きみたいじゃない。
そう、思った。
「……お願い、ですか?」
そんなことを考えていた私に告げられた、一つのお言葉。それは、聞いた当初は意味が分かりませんでした。だって、どうして今のお話の流れで「お願い」になるのでしょうか? そもそも、その「お願い」を私が叶えられるかどうかも、分かりませんし……。でも、聞くだけ聞いてみましょうか。私は、そう思いました。
「とりあえず、聞くだけならば……」
私はそう言って、アラン様のお言葉の続きを待ちました。すると、アラン様は私から露骨に視線を逸らされて、頬を軽く染めていらっしゃいました。……その様子は、まるで恋する乙女のよう。……私も、アイザイア様の前ではこんな表情をしていたのかな、なんて思ってしまいます。
「……少しだけ、一緒にお話をしてほしいんです。あ、もちろん無理に、とは言いません。ほんの少しだけで、いいんです。……少しばかり、モニカ様とお話がしたくて……」
アラン様は、そんなことをおっしゃって次に私の瞳をまっすぐに見つめていらっしゃいました。……私と、お話? そんなことが「お願い」の内容なのですか? そう思った私の頭の中には、何故かアイザイア様が浮かんでおりました。
アラン様とお話をしていたことをアイザイア様が知れば、きっとお怒りになるでしょう。……ううん、私はお怒りになってほしいんだ。無関心だけは、止めてほしい。だって、無関心が一番辛いんだもの。それに、私ばっかりが嫉妬するなんて不公平でしょう? そう思った私は、アラン様の「お願い」を聞くことにしました。
「はい、それぐらいならば、いいですよ」
そう言った私でしたが、後ろに控えていたヴィニーが「モニカ様……」と呟いたのが、聞こえてきてしまいました。後ろを振り向けば、そこには渋い顔をしたヴィニーが。もしかして、私の気持ちが伝わっていないのかしら? 私の、アイザイア様に嫉妬してもらいたいという気持ちが。私ばっかりが、嫉妬して。それがとても嫌なんですもの。
そんなことを考えていた私の頭の中には、この間のビエナート侯爵家での夜会のことがすっかり抜け落ちていました。あの時、多分アイザイア様は嫉妬してくださっていたというのに。
「大丈夫よ、ヴィニー。少しばかりお話をするだけだから」
なのに、私はそのことを思い出すことが出来なかった。だから、ヴィニーにそう言って笑いかけていました。少しだけ、ほんの少しお話をするだけ。たまには、いいじゃない。王宮の人以外の異性と会話をするのも、ちょっとは刺激になるじゃない。そんな、好奇心からの行動でした。好奇心は人を殺してしまうかもしれないのに。そんな言葉を、思い出すこともなかった。
それから、私とアラン様はほんのしばしお話をすることになりました。立ち話なんて……とも思いましたが、ほんの少しだけという条件が付いていたので、私はその場で立ち話をすることを選びました。ただ、アラン様のお話に相槌を打ち、時折私の意見も言う。お話の内容は多岐にわたりましたが、メインは最近読んだ本のことでした。アイザイア様とは出来ない会話の数々。……それでも。
(……アイザイア様、だったらなぁ……)
そう、思ってしまう私もいました。もしも、目の前の男性がアラン様ではなくて、アイザイア様だったら。そう思って、しまうのです。心の中にいらっしゃる男性は、いつだってアイザイア様。それ以外のお方なんて、想像もできない。今、アラン様と一緒に居るというのに。アラン様のことを、考えるべきなのに。
「……モニカ様?」
そんな私のことを怪訝に思われたのか、アラン様がそんなお言葉を投げかけていらっしゃいました。だから、私は苦笑を浮かべることしか出来ませんでした。それを見られたアラン様は、何故かくすっと声を上げられて笑われます。……いったい、何がおかしいとおっしゃるのでしょうか?
「……いえ、アイザイア様のことを、考えていらっしゃいましたよね?」
「……えぇ、まぁ」
アラン様のお言葉は、真実で。なんでバレてしまったのかは分からないものの、それでもそのお言葉を否定する気にはなれませんでした。だから、私は素直に認めたのです。アイザイア様のことを、考えていたということを。
すると、アラン様は何処か少しばかり寂しそうな表情になってしまわれる。……いったい、どうなさったと言うのだろうか? どうやら、私は人の感情にかなり鈍いらしいです。だからこそ……アイザイア様を、怒らせてしまう。だからこそ、こうやって人を困らせてしまうのかもしれない。
「羨ましいんです」
ポツリ、とアラン様からこぼれたお言葉は、そんなお言葉でした。羨ましい? いったい、何が? そう思ってしまいました。だって、アラン様だって恵まれたお生まれで、恵まれた育ちじゃない。確かに、お家のことはあるとは思うけれど……それでも、羨ましがることなんて私が知る限りでは、ないはずだ。
「……貴女に、そんなにも想っていただけるアイザイア様が、とても羨ましい。僕も……貴女に、そんな風に想ってほしいと思うのに」
だから、私はアラン様のそのお言葉の意味を、すぐに理解することが出来ませんでした。あ、アラン様が……アイザイア様のことを、羨ましい? それも……
(私に想ってもらえるからって、それじゃあ、まるで――)
――アラン様が、私のことを好きみたいじゃない。
そう、思った。
11
あなたにおすすめの小説
愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
わんこ系婚約者の大誤算
甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。
そんなある日…
「婚約破棄して他の男と婚約!?」
そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。
その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。
小型犬から猛犬へ矯正完了!?
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました
雨宮羽那
恋愛
結婚して5年。リディアは悩んでいた。
夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。
ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。
どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。
そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。
すると、あら不思議。
いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。
「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」
(誰ですかあなた)
◇◇◇◇
※全3話。
※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜
男嫌いな王女と、帰ってきた筆頭魔術師様の『執着的指導』 ~魔道具は大人の玩具じゃありません~
花虎
恋愛
魔術大国カリューノスの現国王の末っ子である第一王女エレノアは、その見た目から妖精姫と呼ばれ、可愛がられていた。
だが、10歳の頃男の家庭教師に誘拐されかけたことをきっかけに大人の男嫌いとなってしまう。そんなエレノアの遊び相手として送り込まれた美少女がいた。……けれどその正体は、兄王子の親友だった。
エレノアは彼を気に入り、嫌がるのもかまわずいたずらまがいにちょっかいをかけていた。けれど、いつの間にか彼はエレノアの前から去り、エレノアも誘拐の恐ろしい記憶を封印すると共に少年を忘れていく。
そんなエレノアの前に、可愛がっていた男の子が八年越しに大人になって再び現れた。
「やっと、あなたに復讐できる」
歪んだ復讐心と執着で魔道具を使ってエレノアに快楽責めを仕掛けてくる美形の宮廷魔術師リアン。
彼の真意は一体どこにあるのか……わからないままエレノアは彼に惹かれていく。
過去の出来事で男嫌いとなり引きこもりになってしまった王女(18)×王女に執着するヤンデレ天才宮廷魔術師(21)のラブコメです。
※ムーンライトノベルにも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる