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Scene08 高天原宇宙と俺のベッドルーム

第50話

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「この香水の香りはもしかしてあのネコ耳メイドじゃないの」

ウツは俺の胸に身を寄せてる。
革ジャンに頭を擦りつけるような動作。
小動物を思わせるポーズ。
あざとい。
あざといくらい可愛い仕草だ。
俺を睨みつける目つきまで可愛い。
少し頬を膨らませる真似までしてる。

勿論ワザとだ。
可愛く嫉妬して見せる演技。

「何だい、今日は僕の家に泊まってくれるんだ。久々に真悟くんと熱い夜を過ごせると期待していたのにな。ネコ耳メイドに持っていかれるとはね。
 はてさてどうしたものか。真悟くんがネコ耳メイドなんて萌の代表みたいなシロモノに興味を示してくれた事を喜ぶべきなのか。それとも年増女と比べても悲しきチリ紙にしか扱われないわが身を嘆くべきなのか」

こいつの韜晦に付き合ってはいられない。
こいつの内面はおそらく複雑怪奇なのだろう。
それを理解しようなんぞとしたら俺まで引きずり込まれる。

俺は立ち上がる。
ウツと距離を置くためじゃない。
そのままウツを抱き上げる。
肩と膝に手を差し入れ俺の胸に抱き上げる。
いわゆるお姫様抱っこだ。

「あれあれ、どうしたのかな。草薙先輩。凄いサービスじゃないか。たまには嫉妬するフリもしてみるもんだね。それとも犬の鳴きマネが良かったのかな」
「お前は軽いからな。
 ベッドルームくらいまでなら運んでやろう」

ウツの身体は本当に軽い。
女子高生の平均体重がどの位か俺は知らない。
だがそれより間違いなく軽いだろう。

両手を使ってちゃ扉を開けない。
ベッドルームの扉を開くのに俺はウツを降ろそうとする。 
 
「オープン・セサミ、なんちゃってね。一応音声入力も効くんだよ。
 普段あまり使わないけどね」

ベッドルームの扉は自動で開いた。
この部屋に俺はあまり入った事が無い。

「いやいや、幸せな体験だったよ。
普段は人をチリ紙扱いしておいて、たまーにだけお姫様扱いとはね。さすが女泣かせだね。僕は充分真悟くんに夢中なのにこれ以上更に惚れさせるつもりなのかい」
「ウツ、あまり喋るな」

俺はベッドの中央に彼女を放る。
少し乱暴な扱いだが、ベッドはスプリングの効いたモノ身体を痛める事は無い。
そのまま、俺は細い体に覆いかぶさる。
ウツが驚いた顔をするが、構わない。
俺は今狂暴な気分なのだ。

あの銀色スーツ。
円花は許さないと言っていた。
俺も同じだ。
数分前に俺が抱いた女を女だったモノに変えた男。
あの男は俺の敵だ。
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