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二章_本編
六話
しおりを挟む「えぇ、っと。兄上、この状況は一体…?」
そう言いながら佇むヴィンセント。
それから俺とヴィンセント、アランは数秒見つめ合い勢いよく立ち上がるアランを横目に、俺は特に焦ることなく立ち上がり服に着いた砂を落とした。
そして何も気にしていない俺を見たアランは困惑したような顔でヴィンセントと俺を交互に見、頬をかきながら口を開く。
何故か目は泳いでいたが、、。
「え、や。セドリア様…? こう、焦るとかないんですか、? 好きなんですよね?」
俺はその質問に対して頭を傾げる。
その言い方だとまるでヴィンセントが俺の事を恋愛的な意味として好きだと言っているようなものでは無いかと。
あくまで七年、原作と違う行動をし親交を深めていたとしてもヒロインから愛される主人公。ヴィンセントから悪役である俺が愛されるわけない。
だから俺はアランの質問したに対し当然のように答える。
「…ヴィンの事は弟として好きだが恋人では無いのだから焦る必要などないだろう。 それはヴィンも同じはずだ。」
そうアランに言った俺の目は呆れた目をしていた気がする。
仮にもヴィンセントには婚約者がいるのだからそんな事言っては迷惑だろう。
それに男の俺と女性を比べるのがおかしいのだ。男同士の結婚は認められているもののまだまだ男女よりは数が少ない。
差別こそないがヴィンセントも男の俺より可愛い女性の方がいいだろう。
そう思いながらヴィンセントを見ると何故か目に涙をため必死にアランに謝られ、慰められていた。
その様子に頭に?を浮かべながらも先程アランによって落とされた馬の上に跨る。
すると後ろから慰められていたヴィンセントが俺に走って近寄ってきた。
「兄上! 事情は知っております。 私も兄上達に着いていってもよろしいでしょうか、?」
そんな事を言いながら俺の手にヴィンセントの手を重ね、上目遣いでこちらを見る。
その様子に一瞬了承しかけた口を塞ぎ、数秒沈黙の時間が流れる。
何年経っても俺はこの目に弱い。
普段ならキッパリと断れるはずがこの目をされると濁すように答えてしまう。
俺は返す言葉が思い浮かばずヴィンセントの顔を見る。
そして、それを心配そうにこちらを見つめるアラン。
(これは…何分経っても埒が明かないようだな…。)
そんな様子に俺は溜息をつき、沈黙の間に考えた台詞を告げる。
その声は本当にヴィンセントに俺と一緒に来る覚悟があるか知るため、普段とは違った声だった。
「事情を知った上で本当に着いてくると言うのだな。」
「はい、兄上。」
当然だとでも言うようにそう答えるヴィンセントに俺は驚きつつも、呆れを通り越して何回もでたため息を吐く前に飲み込んだ。
しかしまだ質問は終わらない。
「…この調査は君の婚約者の父の為のもの。辛い思いをするかもしれないのにどうして着いてくる。」
「……、」
「…好きでは無いにしろ君と仲の良いご令嬢と会えなくなる可能性だってある。 私は君にそんな思いして欲しくないのだ。」
「それは…。」
言葉を濁しながら答えるヴィンセント。
何故そんなに私について来たいのか理由は分からない。
けれどその瞳はどこか悲しそうな目をしていて気づけば俺はヴィンセントの頭に手を伸ばしていた。
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