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二章_本編

五話

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「おや、セドリア様。心做しかげっそりしてません?」



含み笑いをしながら2頭の馬を連れ俺の元に歩いてくるアレン。




俺達はまだ辺りが真っ暗な時間に広場に集まっていた。



あと数十分もすれば日が出てくるだろうが、周りがくらいのもあり、とてつもなく眠い。



そんな事を考えながらも答えるのが面倒くさかったので無視するとそんな様子を見てまた、話しかけてくるアレン。




「セドリア様、昔から朝が弱かったですもんねぇ、ふふ、昔も今も可愛らしいですね。」




「……アラン。」



「なんです? もしかして、照れてます?」




口を手で覆いながらニヤニヤとこちらを見るアラン。



「お前から見て今の私はそう見えるか。」



「いえ、全く。」


悪びれもなくそう、言うアラン。



「……なら、私をあまり怒らせないでくれ。」



「……分かりましたよ、、少しくらいいいじゃないですか。」




ボソッと俺に聞こえないように言いながら地面にしゃがみ頬を膨らませると、何も持っていない手で地面をグリグリとするアラン。


俺はその姿を見て盛大に溜息をつき、手を額に当ていかにも呆れてます、といった動きをする。



(はぁ、これで今年38とか詐欺だろ…、、こんな情けない姿をしてもイケメンのままってのはなんか腹立つし…ッ!)



このいかにも出来る男って感じの姿であのキャラ…。ファンが増える理由も納得だな、、。


そんな事を考えながら重たい瞼を擦り、アランが持っている馬の一頭に跨る。


すると何故か無性に王子に腹が立った。



(なんか馬に乗ると始まった感があって腹が立つ…。この、掌で転がされる感……。)



「……。」




「セドリア様、だいぶお顔が…。腹が立つのも分かるんですけど、取り敢えず剣を抜こうとするのやめません?」



怒りの矛先がこちらに向きそうで怖いです、そうボソッと言うアラン。



俺はアレンを無視して、剣を直し、アランが連れている馬をゆっくりと動かすと、門へと向かう。




(あれ、そういえば俺達二人で行くんだろうか。)




周りを見渡すも誰もおらず、護衛をつけるのは当然と思っていたのだが……。




そんな様子に気づいたのか、アランはもう一頭の馬に跨り近くに寄ってくる。




「気になっていらっしゃるようですが、今回調査に行くのは私達二人だけですよ。なにせ、セドリア様のお父様であるスカル様が二人で行けと…。」




そう言いながら申し訳なさそうに目を伏せながら説明するアラン。




(父上の考えはこの歳になっても読めないな。それにこの調査は原作にもなかった展開だし…。)





慎重に動かないと、死ぬことはないにしろ何かと面倒だ……。




そう思いながら申し訳なさそうにしているアランから目をそらす。




「お前はまだ気にしていたのか、私と両親の仲を。」




「……申し訳ありません。私のようなものにはどうする事も出来なくて、、」





珍しく本気で申し訳なさそうにしているアランを久しぶりに見たな、と思いつつも門の近くに来た所でアレンの目を見て答える。




「お前が気にする事ではない。これは私の問題だ。」





「セドリア様…。」




「それに、お前にはいつも助かっている。お前が私の使用人にならなければ私は今も一人だっただろう。」




そう言いながら途中で恥ずかしくなりそっぽを向く。




(アランを慰める為だったと言え、少し恥ずかしい事言いすぎたか? でもこう言わないと根に持つだろうし…。)




内心、そんな事を考えながらも恥ずかしくてアランの顔を見る事も出来ず、暫く無言の時間が流れた。



するとアランが急に唸ったような声を出しながらも馬と一緒にこっちに突進してくる。




「…ッ!まて。アラ…ッ」



「セドリア様ァ…ッ!」



その勢いに俺とアランは馬から落ち押し倒される状態になる。

既視感あるなぁ、と遠い目をしながら上に乗ってるアレンを見つめる。



「はぁ……アラン。」



「セドリア様がそんな事を考えていただなんて…ッ! このアラン、もう死んでも悔いはないです、、! それに耳を真っ赤にして答える姿…なんと愛らしいのですかッ!」


そう言いながら抱きついてくるアラン。


いつものミステリアスキャラは何処へ行ったのやら…。


そんな事を思いながらも退かす気にもならず、両手を地面に広げ、空を見る。


(あぁ…、日が出てきたな。もうそんな時間か、。)



この状況をどうするかを考えていると自然と門へと視線がいく。  



そこで俺は目を見開く。



「……ヴィン?」



「えぇ、っと。兄上、この状況は一体…?」



そこには困惑した顔で佇む、ヴィンセントがいた。







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