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二章_本編
七話
しおりを挟む頭に手を伸ばしゆっくりと左右に動かす。
そんな俺の行動に困惑しながらも手に頭をつきだし、その顔はとても満足気な顔をしていた。
一通り俺の気が済んだ後、ヴィンセントと目を合わせ口を開いた。
その声は先程の高圧的な声とは違い、普段ヴィンセントに使う柔らかい声を意識しながら。
「ヴィン。それでも私に着いてきたいと言うのか? 」
その問いにヴィンセントは数秒間があったものの、先程俺に撫でられてだらけきっていた顔をきゅっとしめ、覚悟を決めた顔で俺を見る。
「はい、兄上。メアリーの為、そして兄上の力になる為私も一緒に連れて行ってくださいますか?」
その真剣なヴィンセントの顔を見て俺は表情を緩ませ、馬を連れてくるよう命令した。
笑顔で馬小屋まで走るヴィンセントの背中を見ながら思う。
(最近見ていた緩んだ顔も可愛くて良いが、この顔も悪くないな…。主人公って感じが凄くする。)
それに、ヴィンセントを小さい頃から見てきた俺からすれば何故か母親のような気分になっていた。
その成長に少し笑ってしまう。
それから俺はこの状況をニヤニヤと腹立つ顔をしながら見ていたアランを一発殴りつつ、馬を連れ帰ってきたヴィンセントと頭に大きなたんこぶを作るアランと共に王都へと向った。
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【余談】六話
悲しむヴィンセントを慰めるアランの会話。
「あ、あのー。すみません。あの距離感なのでてっきり付き合っておられるのかと…。」
そう言いながらヴィンセントの背中を摩るアラン。
そして、慰められている張本人、ヴィンセントは人差し指を地面にもじもじとし、若干涙を溜めながら呟く。
「べ、別に分かっていた事だ。兄上が俺の事、ただの弟としか見ていないことなどっ! しかし、俺はそれを知りつつ最近優しかったからもしかしてと期待してたのに…。」
その様子は普段、兄であるセドリアの他に見せているクールな感じではなく一言で言うと情けないといった雰囲気でアランもこの変化に驚きつつも溜息をつく。
(まさかあのヴィンセント様がセドリア様の事になるとここまでなるとは……。セドリア様、、本当に恐ろしい。)
それに優しいというのも私がセドリア様のヴィンセントの距離が近すぎると相談を受けた際、それがヴィンセント様なりの兄弟の親睦の深め方なのでは?、と適当な事を言ってしまったのが原因だろう…。
あの時、謎に納得されていたセドリア様を思い出し頭を抱える。
未だにめそめそと泣くヴィンセント様。
それを見て私はあの時のセドリア様への発言と今日の発言でとんでもない事をしてしまったのだと後悔したのだった。
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