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しおりを挟む俺と駒次郎は芝居小屋の楽屋で再会した。
駒次郎は俺のなにかを疑いながら、俺に接触している。
俺の方もそれは気になっていた。
兄の盤次郎のひとりごとがきっかけで、一気に険悪な印象を彼らに抱いてしまった。
俺だって好きで盗み聞きをした訳じゃない。
自動的に聞こえてしまうんだから仕方ないだろ。
盤次郎が本当に蔵破りをするのか、それとも別の意味でなのか。
分からなさ過ぎて、つい駒次郎にぶつけてしまった。
駒次郎は態度を急変させた。
意味深に低い声をだしたり、背後から強い力で掴んできたりした。
もう本当のところを聞くしかないと思った。
彼らが何を成そうとしていても、手伝わなければポイントは得られないのだから。
逃げようか、遠ざかろうかとも思ったけど、それは出来ないようだ。
今回は、忍者だからな。
正義感なんかにこだわっている場合ではないのかもしれない。
このゲームは勇気が肝心だ。
様子見とか、事情を探るばかりじゃ日が暮れてしまう。
ぶつかって行くほかはないだろうな。
そんなわけで単刀直入になってしまった。
蔵を破ることを認めたので、俺が駒次郎の問いに答えなければならないようだ。
「コマさん、俺が忍びかどうかってそんなに重要なことですか?」
「……答えたくないというわけか」
俺は彼の目を見つめながら、首を横に振った。
「ひとつ確実に言えることは隠密ではないということだよ」
「ほう。隠密ではないけど、忍びだということは否定しないんだな」
なぜ、そんなに忍びにこだわるんだ。
だけど……
「べつに否定はしないよ。さあ俺も答えたよ。蔵破りで得た金で娘さんを助け出したあとは、夜逃げでもするのかな?」
「否定しないか。こちらからもう一つ聞きたい。グンは誰の差し金でおれたちを探っているんだ?」
「な、なに……!?」
質問に質問で切り返すのはどうかと思ったが。
駒次郎の質問でハッとさせられた。
いや待て。
そうか──そうだよな。
彼が疑っている理由があるとすれば、捜査の手という意味である。
いわば彼らは大きな借財の返済のため、強盗をするのだから。
二人だけの秘密の計画を第三者が知るとすれば、隠密行動によるものとなる。
そう考えることまで、読んでいなかった。
だが忍びの里からの派兵を心配するあたりが不思議だ。
ここらの里は例のゴロツキか、それとも公儀のお抱えなのだろうか。
「だってそうだろよ、子供の一人旅なのに。いくら人助けをしたいからといっても、蔵を破ると知って誰にも告げず、一人で探るとか、手伝うとか。なにを調べてどこへ持って行くんだ?」
駒次郎も、すでにとぼけなくなっている。
聞きたいことは分かるよ。
だけど俺は誰かの差し金で動いてなんかいないんです。
俺が彼らのお手伝いをする理由が欲しいようだが。
単なるお節介では納得してくれないか。
すべてを説明できない。
できるはずもない。
どうする俺?
隠密とまで言われてよ。
「コマさんが疑いたくなる気持ちは分からないでもないよ。でも、俺には主なんていないから。こればかりは信じてもらうしかないよ。俺は旅の忍びだ。気に入らないなら旅立たせてもらうだけだ。俺は忍術も持っているから、ちからずくは怪我の元だよ!」
強気でいった。
こちらも必死にならなきゃダメだ。
ハッタリではあるが。
「おいおい、早まっちゃいけないよ。だけどな、泥棒の手伝いなんかしてバレちまったら、後ろに手が回るんだぜ? 知りながら協力しても何の得がおめえさんにあるんだい?」
聞きたいのは本当にそれなのか。
リスクをかえりみず手伝う理由はスキルのポイント稼ぎだ。
だが断じて伏せなければならない項目であるし。
それに関する記憶があるだけに、顔に出ないか心配ではあるが。
え、いま何と言った。
「泥棒の手伝いなんかって、まるで他人事みたいに。だいたい、盗みを働いた金で救われたって、お里さんが悲しむだけじゃないの──」
「うん、まあ他人事なんだけどね…」
「え…」
えええっ!
どういうことですか。
俺は一瞬、あっけに取られた。
だが、すぐさま駒次郎に食い入った。
他人事の説明プリ────ッズ!!!
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