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しおりを挟む他人事とはどういう意味で言ったのだろう。
救い出したい人は一致しているし。
兄弟の共通の悩みであるはずだ。
そういえば、先ほども「盤次郎の蔵破りをどうして知った?」とか。
そこも他人事のように聞こえなくもない。
めんどくさいから、もう洗いざらい聞いていく。
「コマさん、他人事とはどういう意味ですか? 俺が聞きたいことのすべてに答えてくれるとは思わないけど。手を組むのなら聞いて置かなきゃならないことがあるはずだよ。…語る気もないのに意味深なことは口にしないよね?」
駒次郎はコクリと肯いた。
どうやら俺の手伝いは欲しいようだ。
忍びかと凄んで聞かれたときはどこかに幽閉でもされるかと思ったが。
素直に答えたら、青くなった俺を心配して肩から手を降ろしてくれた。
危害を加えようというのではないようだ。
それが分かって安心して質問をぶつけられる。
「お里さんの詳細は聞かせてもらえるの?」
駒次郎は目を閉じるように首を横に振る。
どうやら出せる情報に限りがあるようだから、ひとつひとつ聞いていこう。
彼が首を縦に振るまで。
方針を尋ねたいと伝えた。
話せることをできる範囲で話してもらい、こちらの不安を和らげてくれるようにお願いした。
「そうか。それなら例の七十五両は、バンさんが宿の蔵を襲撃して確保するの?」
彼は静かに肯いた。
やるのは盤次郎だけで、駒次郎は手伝わないのかな。
「実行犯はバンさんなんだね。それで、コマさんは怪しまれないために日常の生活に戻って舞台に立っているってわけか」
蔵を破るのに見張りも付けずに、どういう作戦なのかを知りたい。
安全策でもあるのだろうか。
「見張りぐらい立てておいた方がいいのでは?」
すると駒次郎が口を開く。
「手伝いをする手筈にはなっていないよ。おれはグンに聞いたな? どうして盤次郎が蔵を破ることを知っているのかと…」
へ?
手伝う予定が元々ないと言っているのか。
それがなぜかを聞き返したいけど、彼の疑問符に先に答えておくか。
「う、うん。──忍びの聴力で遠くの声も聴きとれるんだ。バンさんがご主人に呼ばれて席を外した直後にバンさんの声で会話が聞こえたからだよ」
忍びだと明かした以上、隠す必要もないだろうと。
出会ってすぐに、本人しか知らない情報を耳にしていたことを明かした。
「ほほう、なるほど。それはどんな内容だったんだ? 会話というからには誰かと一緒だったのか?」
「え、コマさんは心当たりがないの?」
「だってあの時おれは、グンのそばに居たじゃないか」
まあ、そうだけど。
強盗の計画の話だぞ。察しがつかないのか。
「…そのときに「宿の蔵に忍び込めるか、調べてみる」と言っていたよ」
「うん? 相手は誰なんだ。おれでないことは明白だろ?」
そういやそうだな。
「あれ? でも話し相手はお里さんだったと思うんだけど」
「は? なに言ってんだよ、お里は遊郭に閉じ込められていて外出なんか許されてないから、あり得ないよそんなこと…」
あり得ないと言われても困るんだが。
「聞こえたのは、「もしもし、お里か? 周囲には気を付けろ。身請け金はかならず何とかする。いま宿の蔵に忍び込めないか調べているから」って感じだった」
「うーん。妙な会話だな。盤次郎はお里の容姿をよく知っているのに、若し、若し、と繰り返して尋ねているのが気にかかる。人違いなのではないか」
俺の話を駒次郎が疑うものだから、俺も反論する。
「でも確認したからこそ、身請け金のことも蔵破りのことも話しているんじゃないの? 人違いこそありえないでしょ」
「それじゃ、お里らしき女人の声はそこにあったのか?」
「いや、ないけど。俺だって不思議に思ったところだよ。遊郭から出て来れるなら、そのまま逃亡すればいいだけのことなのにって、ね」
もちろん、独り言の線も考えたし、この道中でお里に該当しそうな年頃の娘の影を気に掛けながら、往復したことも伝えた。
駒次郎はますます首をかしげた。
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