75 / 113
第二章
来週からは、気をつけます
しおりを挟む
(イザベルが天使でモテるのは、仕方ないけど……)
(……カナさん)
今回の彼らは、色々と酷かった。後半は言葉にしなかったが、前半の言葉に照れる現世の私に和む。そんな私の前で、不意にラウルさんが跪いた。
「聖女様……力になれず、申し訳ない」
「ラウルさん……いえ、私も未知の環境で隙があったのかもしれません。来週からは、気をつけます」
「来週も、来てくれるんですか!?」
私とラウルさんとのやり取りに、割り込んできたのはエマ達ではなくナタリーだった。驚いたが、確かに、人によっては今の非常識なやり取りで辞めてしまうかもしれない。けれど、私にそういうつもりはない。そもそもが王命だし、困ったがこうして無事だったのだから。
「確かに、驚きましたが……ナタリー先生も、ラウルさんも。そして、殿下達も私を守ろうとしてくれました。これくらいで、辞めませんよ」
「……良かったぁ~」
「ナタリー先生!?」
私の言葉に、安心したようにナタリーが声を上げ、涙目でその場にへたり込んだのに焦った。そんなナタリーに、ラウルさんが真剣な表情で言う。
「聖女様が望むなら、俺はただ守るのみ……だが、当初の保健室で生徒の話を聞くことは、見直してほしい」
「そうですね、解りました……制服の予備などを置いている、小部屋があります。まず寄り添い希望か冷やかしかを保健室で確認して、それから小部屋に通しましょう」
「頼む」
「こちらこそ、よろしくお願いします……あの、ただ毎回ではないにしろ、私もイザベル先生の寄り添いを拝見して良いでしょうか?」
「勿論だ。俺は小部屋の前に立っているから、急病人が来たら声をかけよう」
「ありがとうございます」
最初、どうなるかと思ったがラウルさんとナタリー先生は、私を守るという共通の目標が出来て纏まったようだ。安心したところで、私は助けてくれたエマ達にお礼を言った。
「ありがとうございます。本当に、助かりました」
「そんな! イ……お姉さまを助けるのは、当然のことですよっ」
「ああ、エマの言う通りだ」
「気にすんなよ、聖女!」
「同感です。初日からご迷惑をおかけしましたが、今後も可能な限りお守りします」
「ありがとうございます」
笑顔で頼もしいことを言ってくれる面々に、私も笑顔でお礼を言った。そして小部屋の整理をし、ラウルさんと修道院へと戻った。
ラウルや殿下達に叱られたので、次回は落ち着いてくれるかと思っていたら――一週間後、出勤した時に状況は一変していた。
(……カナさん)
今回の彼らは、色々と酷かった。後半は言葉にしなかったが、前半の言葉に照れる現世の私に和む。そんな私の前で、不意にラウルさんが跪いた。
「聖女様……力になれず、申し訳ない」
「ラウルさん……いえ、私も未知の環境で隙があったのかもしれません。来週からは、気をつけます」
「来週も、来てくれるんですか!?」
私とラウルさんとのやり取りに、割り込んできたのはエマ達ではなくナタリーだった。驚いたが、確かに、人によっては今の非常識なやり取りで辞めてしまうかもしれない。けれど、私にそういうつもりはない。そもそもが王命だし、困ったがこうして無事だったのだから。
「確かに、驚きましたが……ナタリー先生も、ラウルさんも。そして、殿下達も私を守ろうとしてくれました。これくらいで、辞めませんよ」
「……良かったぁ~」
「ナタリー先生!?」
私の言葉に、安心したようにナタリーが声を上げ、涙目でその場にへたり込んだのに焦った。そんなナタリーに、ラウルさんが真剣な表情で言う。
「聖女様が望むなら、俺はただ守るのみ……だが、当初の保健室で生徒の話を聞くことは、見直してほしい」
「そうですね、解りました……制服の予備などを置いている、小部屋があります。まず寄り添い希望か冷やかしかを保健室で確認して、それから小部屋に通しましょう」
「頼む」
「こちらこそ、よろしくお願いします……あの、ただ毎回ではないにしろ、私もイザベル先生の寄り添いを拝見して良いでしょうか?」
「勿論だ。俺は小部屋の前に立っているから、急病人が来たら声をかけよう」
「ありがとうございます」
最初、どうなるかと思ったがラウルさんとナタリー先生は、私を守るという共通の目標が出来て纏まったようだ。安心したところで、私は助けてくれたエマ達にお礼を言った。
「ありがとうございます。本当に、助かりました」
「そんな! イ……お姉さまを助けるのは、当然のことですよっ」
「ああ、エマの言う通りだ」
「気にすんなよ、聖女!」
「同感です。初日からご迷惑をおかけしましたが、今後も可能な限りお守りします」
「ありがとうございます」
笑顔で頼もしいことを言ってくれる面々に、私も笑顔でお礼を言った。そして小部屋の整理をし、ラウルさんと修道院へと戻った。
ラウルや殿下達に叱られたので、次回は落ち着いてくれるかと思っていたら――一週間後、出勤した時に状況は一変していた。
52
あなたにおすすめの小説
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
死に戻りの元王妃なので婚約破棄して穏やかな生活を――って、なぜか帝国の第二王子に求愛されています!?
神崎 ルナ
恋愛
アレクシアはこの一国の王妃である。だが伴侶であるはずの王には執務を全て押し付けられ、王妃としてのパーティ参加もほとんど側妃のオリビアに任されていた。
(私って一体何なの)
朝から食事を摂っていないアレクシアが厨房へ向かおうとした昼下がり、その日の内に起きた革命に巻き込まれ、『王政を傾けた怠け者の王妃』として処刑されてしまう。
そして――
「ここにいたのか」
目の前には記憶より若い伴侶の姿。
(……もしかして巻き戻った?)
今度こそ間違えません!! 私は王妃にはなりませんからっ!!
だが二度目の生では不可思議なことばかりが起きる。
学生時代に戻ったが、そこにはまだ会うはずのないオリビアが生徒として在籍していた。
そして居るはずのない人物がもう一人。
……帝国の第二王子殿下?
彼とは外交で数回顔を会わせたくらいなのになぜか親し気に話しかけて来る。
一体何が起こっているの!?
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。
星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。
引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。
見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。
つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。
ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。
しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。
その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…?
果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!?
※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
枯れ専モブ令嬢のはずが…どうしてこうなった!
宵森みなと
恋愛
気づけば異世界。しかもモブ美少女な伯爵令嬢に転生していたわたくし。
静かに余生——いえ、学園生活を送る予定でしたのに、魔法暴発事件で隠していた全属性持ちがバレてしまい、なぜか王子に目をつけられ、魔法師団から訓練指導、さらには騎士団長にも出会ってしまうという急展開。
……団長様方、どうしてそんなに推せるお顔をしていらっしゃるのですか?
枯れ専なわたくしの理性がもちません——と思いつつ、学園生活を謳歌しつつ魔法の訓練や騎士団での治療の手助けと
忙しい日々。残念ながらお子様には興味がありませんとヒロイン(自称)の取り巻きへの塩対応に、怒らせると意外に強烈パンチの言葉を話すモブ令嬢(自称)
これは、恋と使命のはざまで悩む“ちんまり美少女令嬢”が、騎士団と王都を巻き込みながら心を育てていく、
――枯れ専ヒロインのほんわか異世界成長ラブファンタジーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる